かいこ
「女の子らしくしなさい」
うん、わかってるよ。おかあさんの好きなものが私の好きなもの。
「男の子みたいなことしないの!」
ごめんなさい。鬼ごっこくらいいいかなって勝手に思ってしまって。
「あなたは女の子なのよ」
しってるよ、ごめんね。
「いつまでこんなこと続ければいいのかな」
太陽が滲んで、茜色の光が目を焼く。私は誰もいない公園でブランコに揺られていた。
「もう、高校生なんだけど」
昔から女の子であることに以上に執着し、ことあるごとに「女の子らしく」と言われ続けてきた。
いわゆる時代にそぐわない考えを持った、大好きなお母さん。
日本の女の子はこうでなければと押し付けてくる、大好きなおばあちゃん。
見たこともなければ会いたいとも思わない、他人のお父さん。
知らなければ、とても幸せで満ち足りていたはずの生活を崩したのはほかでもない私。
家ではお母さんの理想の女の子を、学校では周りの話についていける優等生を、演じ続けた。
限界が近いのなんてわかってた。
「工業高校なんて、選んだから」
こっそり、どうせばれてしまうし落ちるでしょ、なんて思って。
中学の時に書類を提出寸前に書き換えた。デザインの学科から情報工学系の学科に。
合格発表は一人で行った。入学式にはどうせみんな来ないから大丈夫だった。
彼女は理想の女の子から外れているときの私に興味を持たないし、仕事のほうが大切。
高校なんていかなくていい家事の手伝いをして見合い結婚、なんて言う彼女もこちらにこない。
でも、隠し続けることなんてできなくて。盛大に喧嘩した。
初めて、彼女たちに反抗した。気に入らなかったんだろう、きっと。
朝起きて誰もいなくて、机の上のメモを見たとき本気で捨てられたと思った。
もう帰ってこないのかもしれない。私が逆らったから、嫌われたんだ。
「いらない子、なのかもしれないなぁ」