ギルド内
さて、ギルドの中に入ると、そこは閑散とした場所だった。広いホールのような場所の奥に受付が並んでおりどこも数人が並んでいるだけだ。
「何か、御用でしょうか?」
声がした方を見てみると、腰まで長い白髪の女性が立っていた。
服装は胸元が開いた紫色のワンピースで、スタイルがいいためかなり色っぽい。身長は170くらいだろうか?
しかし、水色の瞳は大きく可愛らしく童顔だ。
高身長に、出るところは出た抜群のスタイルなのに顔は子どもっぽい、というアンバランスな女性だ。
「私は当ギルドで案内係をしている ミユ、と、申します。」
そう言いながら、女性は首にかけた名札を見せた。
そこには『安心案内係 ミユ』と、書かれていた。
どうやら、そういう仕事のようだ。
「あの、このギルドに入会? したいのですが、どうすれば良いのでしょうか?」
「ああ、所属希望者ですね、そうですね、当ギルドの場合はギルドマスターから試験管の資格を与えられた者の試験に受かればギルドに加入できます。
試験の概要は試験管により違います。 では、受付はこちらになります。」
そう言うと、女性は受付に向けて歩きはじめた。
しかし、試験か、当然といえば当然だが何をやるのだろうか?
ペーパー試験とかなら、無理だ。
「そういえば、かなり人が少ないですね。ギルドって言ったら、もっと、騒がしいイメージがありました。」
そう言うと、女性はクスクスと笑いながら応えた。
「ええ、ギルドの特色はそれぞれですから。騒がしいところもあれば、静かなところもあるのです。
それに、最近では大きな企業や国は仕事の依頼は通信結晶を使う事が一般的になって来ていて、冒険者の方も通信結晶の使用も増えて来ているので人も少ないんですよ。
しかし、無限獣の場合は、支部によっても雰囲気が大きく変わるので有名ですから、もし、支部に行く機会があったら注意してください。
では、ここで受付をしてもらってください。」
そんな会話をしていたら受付に着いたようだ。
5番と書かれた受付台の向こうには、紫色の髪の毛をした女性がいた。切れ目で蛇のような目つきをしている。
「ギルド加入試験に受けたいそうです。」
ミユは受付の女性にそう言うと、一礼して立ち去った。
すると、蛇のような女性、、、胸元にアク、と書かれた名札をつけている。アクさんはこちらを一瞬見た後に紙を一枚出した。
「この用紙に必要事項を記入してください。」
淡々とした口調だ。
まぁ、向こうも仕事だし、仕方がないことだ。
えっと、名前、年齢、連絡先、緊急連絡先、所属理由に、希望職種、魔法覚醒の有無。
名前は『タナタ』、16歳、、、。連絡先は長期契約をしておいた旅館で良いか。緊急連絡先は実家。
所属理由、、む、聖騎士になりたいから、なんて書けるはずもない。
とりあえず経験を積みたいから。
希望職種は何でも、全てってしておくか。そして魔法覚醒の有無。
魔法、それは魂の解放だ。
1人につき1つ。その人の持つ在り方や感情が形になった異能。誰しも必ず何かしらの魔法を持っている。
しかし、中には使えない人もいる。その人たちはまだ、覚醒していないだけだ。
魔法というのは魂、在り方だ。その在り方が固まっていなければ覚醒しないし、固まっていても、解き放たなければ使えない。この、在り方を解き放つ、というものがミソだ。
魔法の使えない人はその感覚が分からない。使える人も、口では説明できない感覚だという。いわば、使ってみないと使い方が分からない、というものらしい。
そのため、5歳にも満たない少年が魔法を使えたり、使えないまま生涯を終える者もいる。
かくいう俺は魔法を使えない。在り方を解き放つなんて感覚が分からないのだ。
だから、魔法の有無に関して使えない、と、書いておく。
その書類を受付嬢に見せると、彼女は軽く目を通した後、少しため息をついた。
なんだ、そのため息は?
「では、試験日の希望はありますか?」
試験日か………
特にないな、この街に来たのもギルドに入るためで、それ以外の予定はない。しかし、金にも限りがあるから早くしてほしいが。
「いえ、特には」
「分かりました。決まり次第、連絡先に知らせます。」
そして、この日は帰された。