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聖騎士を目指して  作者: ぶたぶた
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プロローグ



あのことは忘れない。

10年も前の出来事なのだから当たり前だが、当時の記憶はもう殆どない。

どうして俺が、村から出て森の中に居たのかも、なんでそんな場所に聖騎士がいたのかもわからない。


ただ、彼のことは忘れない。

100匹を超える無数のゴブリンの群れとただ1人で戦っている無骨な男。聖騎士の証である白銀の鎧を身に纏い、隊長格の印である青龍の紋章が刺繍された赤地のマントを靡かせる。

返り血1つ浴びず、囲まれているというのに腰が抜けて立ち上がることも出来ない俺に危険が及ぶ間合いに1匹も近づけずにゴブリンを屠る。


その姿はまさに無双。


そして、全てのゴブリン倒した後、彼は振り向きざまに言った。


「無事だな」


さも当然のように腰の抜けた俺に言い放つ姿だけだ。





「はぁ、はぁ、はぁ」


俺の背よりも高い草木を掻き分けて、道無き道を進む。いや、道なのか? 獣道ですらない気がするのだが………

まぁ、いい。方角的には合っているし、遠くから人の気配がするのだから、そのうち着くだろう。


しかし、何が「ゾウエン山を越えれば近いよ」だ。トリアめ、適当なことを言いやがって。

たしかに、故郷のヤマミ村と、今向かっている商業都市トンシはゾウエン山を挟んで隣同士だ。というか、ゾウエン山は地図上ではトンシ内に存在しているため普通に隣同士である。

そのため、ゾウエン山を真っ直ぐに突っ切れば、最短距離でトンシ(ちゃんと街になってる場所)にたどり着ける。

たしかに、ゾウエン山は観光登山に向いてるらしく、カップルや家族連れが多く訪れるくらい、登山道周辺はきちんと整備されているし、ウルフやビックビー、トイレント、ブラックベアー、大群のゴブリンと言った有名どころな猛獣はいない。

が、レギュラーボアや毒虫、猿、少数のゴブリンなどは整備された登山道から外れれば普通にいるし、登山道から外れれば整備されていないどころか道ですらないため、下手したら遭難する。

とまぁ、冷静に考えれば分かりそうなことだったのだが、当初の俺は深く考えずに突入してしまった。


ぶっちゃけ、俺も16歳、女からモテたいしカッコつけたい。脳筋鍛治馬鹿女だが、トリアも女だ。幼馴染のためか向こうは俺のことを異性としてみていないだろうが、それでも、幼馴染から


『多少、危ないかもしれないが、お前なら行ける! 最短距離で駆け抜けろ!』


なんて言われたら、駆け抜けるしかないだろう?

まぁ、済んでしまったことだ。悔やんでも仕方がない。これからは山は出来るだけ迂回するようにしよう。


と、人の声が大きくなって来た!

もう少しだ! もう少し。


草木を掻き分けて走る。

そして、唐突に草木は無くなり、辺りは開けた。


「っぁぶな!」


そこは崖だった。あと少しでも気がつくのが遅ければ落ちていた。目測になるが、下まで大体15mメルトほどだ。間違いなく死ぬ、、多分。


しかし、崖の下には煉瓦造りの街が広がり、広い街道には沢山の人が行き来している。おそらく、町の中央であろう場所には大きな教会がある。俺の記憶が正しければ、トンシの観光名所であるユグア大聖堂だ。

ついに山を越えて隣の街にたどり着いた。





その後、俺は崖づたいに進み、山から降りて街に入った。

俺のいたヤマミ村とは違い、地面は全て白い正方形の石で舗装され、歩きやすくなっている。

人の数も多く、どこを向いても人がいる。上から見たとおり、この街の建物の殆どが煉瓦造りだ。その、統一感はかなりの威圧感があり、感嘆、の、一言だ。

国内外から観光客が来るのも頷ける。


しかし、俺はここに観光に来た訳ではなく冒険者になりに来たのだ。


正確には聖騎士団に入るために冒険者になりに来たのだ。聖騎士とは、この国の最高戦力だ。騎士の中の騎士、元老院直属の国民を守るための者たちだ。


聖騎士になる為にはそれなりの実績が必要である。その実績を積むのに最もポピュラーな方法が冒険者になることである。

冒険者は国内だけでも無数にあるギルドと言われる組合に所属し、ギルドへ来た依頼をこなす者たちである。

その性質上、大きなギルドに所属すれば、幅広い職種の仕事を経験でき、難しい依頼も受けることもできる。が、小さなギルドだとろくな依頼が来ないのだ。


で、この街にはエタフ王国の誇る三大ギルドの1つである『無限の獣との旅』、通称『無限獣』の本部がある。

ギルドの入り方はよく分からないが、本部に行って受付に聞けば教えてくれるだろう、という考えからこの街に来た。隣町だし。


という訳で、2メートルを超える鉄の扉の前に来ている。扉の上には、『無限の獣との旅』と書かれた看板がかかっている。


扉の取っ手を掴む。


聖騎士、かつて俺を助けてくれた存在だ。


俺はそれを目指し、努力して来た。


そして、これが、俺の夢を叶える第一歩。


「よし」


ゆっくりと扉を押す。

扉は思ったよりも軽く簡単に開いた。


さぁ、これからがはじまりだ。





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