第18話 アーゼスト国宮殿
ここは、アーゼスト国で宮殿内の客室の一室。
そこに太郎がいる。
太郎はクラスメイト達との夕食の怪しいメイドさんに案内された後、この部屋にいる。
今、1人窓の外を眺めていた。
おもむろに窓を開けようとするが、カギがかかっている訳でもないのに、押せど引けど、いくら力を入れても窓が開かない。
(なんだこれ?結界かなにかあるのか)
生徒達は宮殿内の移動は自由。でも、外には出られない、軟禁状態だ。
(ッチ、もう今日は最悪だ。)
いつもと違う太郎がそこにいた。
太郎は香織の事で頭が一杯で、イライラが収まらない。
ベッドに体を頬り投げるように横たわり、これからどうするか?どうすべきか?考えれば考える程焦りとイライラが邪魔をして、冷静な判断ができなくなっている。
(…………そう言えば先生が何か言ってた気がする。)
太郎は香織が勇者や英雄に誘拐された事に対して、怒りと焦りから頭に血がのぼり、周りの事や先生のその後の話を、あまり覚えてはいなかった。
普段の太郎からは考えられない事だ。
(なんか、勇者なら大丈夫みたいな事だったかな?)
今から先生に話を聞けないかを思案中に、ドアから「トントン」とノックがする。
太郎は誰だろう?と思いながらも、ダルい体を起こし、少し面倒そうに。
「誰ですか?」
「夜、遅くにごめんなさい。杉本です。」
太郎は慌て、ドアに駆け寄りカギを開け扉を開けた。そこには杉本先生が立っていた。先生は直ぐに部屋に入り込みカギをかけ太郎に小さい声で話しかける。
「少しお話があります。ただ、あまり時間が無いのと、他の人にこの話が漏れるのは不味いので、静に聞いて下さい。それから今日は話をするだけで、質問は一切受け付けません。了解してもらえますか?」
太郎は聞きたいことが沢山あるが、今は話を聞くだけ聞く事にした。なにより、杉本先生から話がある。と来た事で、さっきまでのイライラが吹き飛んだからだ。
太郎は、首を縦に2回頷く。
「では、今日の事を簡単にまとめて話をします。」
太郎と杉本先生はドアを閉めた後、そのまま立ち話を始めた。少し緊張しながら杉本先生の顔を見つめる。
「椿君、今日は三ヶ日さんの事で聞きたいことがあったようなので、その事を簡単に説明します。」
太郎は、どんな話が出てくるのか少し不安になっていた。
「椿君、今日勇者や英雄が三ヶ日さんを誘拐したことについて話をします。まず、三ヶ日さんはおそらく無事なので安心して下さい。」
太郎は思わず「なっ」直ぐに先生に手で口を押さえられてしまう。そして直ぐに「質問は無しです。」
太郎は少し考えながら、また頭を2回頷いた。口から手が離れ、話が続く。
「三ヶ日さんが無事だと確証があります。」
太郎は黙ったまま話に耳を傾ける。
「実は、三ヶ日さんはこの世界の…………なのです。」
太郎は信じられない話を聞く事になってしまった。




