第138話 悪魔の左手
「あれ?俺も寝ちゃったのか?」
重い瞼を少しあげて、外がすっかりと暗くなっているのを確認をする。
「昼寝どころか、本気寝か。うん?左手の手がなにか変?あれ、なんか軟らかくてちょっと気持ちいいかも。」
手が何かを掴んでいるみたい。
「まぁ、いいか。軟らかくて気持ちいいから。」
少しの間の微睡みの中で左手をニギニギしていた。
「あっ、なんかまた眠くなってきた。」すると
「アンッ。」うん?
「なにか変な声がした。魔物か?」
「ンッ、いや。」 へっ?
「いや?」
「椿……くん、そこが…」
恐る恐る左側を見ると、俺の左手が、
「うわっーー!俺の左手がっー!」
この台詞は言いたくなかった。
「くっ!俺の左手が言うことを聞かない!」
この台詞も。
必死になって戦う!しかし、俺の左手が動かない。
「そんなバカな!ありえない!がはっ!左手が俺の意思に逆らっている!」
このままでは、精神にも影響が出てくるだろう。
「このままだと俺の左手はダメになる!なんとかしないと。」
ハッキリ言ってピンチだ。
「左手が俺の意思に反して、ニギニギと段々と早く動き出した。これは一体?」
「そこ、だめ。」
「ぶっふ!」
とうとうきた。精神的にかなりヤバイ!
「な、なんとかしなくちゃ!」
左手がさっきとはまた違う動きをしだした。
「こ、これは?」
「そこ、そんなに強くしたら……」
「がっはっ!ダメだ。さっきから血が止まらない。どうする?」
今度は指が色々な動きをしだした。
「もう、ダメ。お願い……」
「ぶっほぉっ!もう頭がおかしくなりそうだ。俺はこのまま、ヤられてしまうのか。」
俺の左手がこれでもかと、不規則に動き出す。
「そう、そこ。早く、お願い……」
俺はその悪魔の囁きにより、あと少しで左手から侵食した見知らぬ力に負けてしまう。
「香織、ごめんっ!」俺がそう言った後、突然。
「スパーーーーッン!」と言う音と共に、俺は空を飛んでいた!
「あ~、これが俺の最後か。最後に一度、香織に会いたかった。」
夜空に高く舞い上がっていく。
そう、舞い上がっていく!まだ、上がっていく!
「そうか、俺はこのまま宇宙にでも行くのか?空からなら、香織を見つけやすいかも。」
なんか、そんなバカな考えをしていたら、今度は上から「スパーーーーッン!」
あれ?今度は地上に落ちていく。
「今度こそ助からない。何れぐらいの高さから落とされているかわからないが、こんな長時間空にいる事事態おかしい。相当高い場所から落とされているな。」
太郎は顔中血だらけになり、左手が解放されていたことに気がついた。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。
今回は短めです。
一応チェックはしました。が、誤字脱字など、あった場合はスルーしてお読み下さい。




