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「ちっ!」
王様は自分の部屋で舌打ちをしていました。
原因は分かっています。でもそれを対処する術がないのです。
あの男があのわらをつむいで言ったのは王様が一番よく分かっていました。当たり前です。王様はあの男を誘い出すために、国中にわらを金糸に紡げる人間を捜しているというおふれを出したのですから。
それにあの欲の深い商人が引っかかり、王様は偶然にも『白の娘』を人質に取る事が出来ました。
それを餌にあの男を釣り、一生王様のために働かせようと企んでいたのです。
なのにあの男はそんな彼をあざ笑っていったのです。使用人を眠らせ、その隙にビアンカを助ける。この城でよくそんな事が出来るな、と感心してしまいます。でも逆にあの男ならそれがやすやすと出来てしまうのだろう、という事も分かるのです。王様にはそれが悔しくてなりせん。
三週間前に届いた手紙を読み返します。
「次に『白の娘』を苦しめる事があれば、お前は金の延べ棒になるだろう」
間違いなくこれは脅迫です。これが届いたから王様はビアンカに無茶ぶりをするのをやめるしかなかったのです。
これが届かなければ、あんなとるに足らない娘などさっさと消してやるのに。何度そう思ったか知れません。
でも思っているだけでは何も出来ません。出来るのは彼女を下働きとしてこき使う事だけです。
もしかしたらただの脅しかもしれない、とも思いましたが、彼は自分を犠牲にしてでも実行してしまうかもしれません。そうしたら王様は金の延べ棒になってしまいます。
こうやって、これからもただただつまらない日々が待っているのでしょう。
「あの男は今はただの毛むくじゃらのチビだ。俺様が恐れる相手ではない」
自分に言い聞かせるようにそう言い聞かせます。でも王様にはいまだに自分があの男の手の中にいる、と思わざるを得ないのです。
どこかであの男はまだ自分をあざ笑っているのだろうか。そう思うと心が落ち着きません。
王様はただただ苦しむ事しか出来ませんでした。