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 次の日、王様は簡単なほうびの言葉とともに、今度は昨日の二倍の量のわらを用意しました。


 これでビアンカには、どうして小人が『また明日』と言ったのかは分かりました。


 本来なら安心する所ですが、ビアンカはまたも困り果ててしまいました。


 対価として払えるものがないのです。彼女の持っていた高価なものは、ブレスレットとネックレスだけです。


 今度こそ処刑を甘んじて受けよう。ビアンカはそっと覚悟を決めました。


 その夜、また見張りが寝静まった時に、小人がするりと窓から入ってきました。


 ですが、真剣な顔をしているビアンカを見て何が起こったのかと首をかしげます。


「小人さん、今までありがとうございました」

「どうしたんだい?」

「もうお礼としてあげるものがないのです。私は処刑を受けます。せっかくよくして下さったのにごめんなさい」

「対価などいらないと言っても、そなたは受け入れぬのだろうな」


 小人の周りの空気が変わったのがビアンカには分かりました。でもそれは一瞬の事。すぐに小人は今までの優しい笑みを浮かべました。でもその目にいたずらっぽい光が宿っていることにはビアンカは気づきません。


「ビアンカさん、あなたさえよければ私とゲームをしましょう」


 何の話でしょう。ビアンカは首をかしげました。


「一ヶ月後にまた私はこの城に来ます。その時にあなたが私の名前を当てられたら現状維持。対価は払わなくてもいい。ただし、当てられなかった場合、あなたは私の妻になるのです」


 一瞬、ビアンカの心の中で何かむずかゆい思いがわきました。何故か当てられなければいいと思ってしまうのです。それでも彼の名を知りたい。そう思ってしまうのは何故なのでしょう。


 それでも彼女には分かっていました。この約束をするのは王様への裏切りです。ビアンカは王様のお妃様になるのですから。


 小人にそう言うと、彼はため息をつきました。


「何も問題はないと思いますよ」

「だってそれは浮気じゃ……」

「だってあの王は『仕えさせる』と言ったのでしょう。それは『妃にする』という意味ではないと思いますよ」


 思いもかけない言葉にビアンカは目をまんまるくします。


「つまり私は彼の召使いになるという事ですか?」

「多分。そうでなかったら、また『お礼』の内容を考えましょう」


 それなら問題はないでしょう。ビアンカは安心しました。


「わかりました。それでお礼になるのなら」

「では交渉成立ですね」


 そう言って小人は糸車を四回転し、いつものように金糸を積み上げました。


「ではビアンカ。また一ヶ月後を楽しみにしていますよ。あの王はもう二度とあなたに無理難題を出せませんからね」

「え?」


 どういう事? と聞く前に小人の姿はもう見えなくなっていました。


 ビアンカはただただ呆然とすることしか出来ませんでした。

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