この人誰?
急過ぎて、頭がついていかなかったがよく見るとフードを深めに被っているその人は、この町に来たときに助言をくれた人と似ている。1度も顔を見ていないので、ハッキリとは言えないが声にも聞き覚えがあった。
「前にお会いしたことありますか?」
「さあ、人違いだろ」
「どうしてパーティを募集したんですか?あまり人と関わりたくなさそうに見えますが。」
「効率よく手に入れるためだ。無駄話をしている暇があるのなら、その魔物のように警戒を怠るな。」
この方とは、お話にならないので何を聞いても無駄になる。ムッとしながらも、学べることを見つけようとしっかり後をついて歩き、こっそり剣をホゴロラからもらい構えて歩く。
魔物が前から現れたときは、フードの人が瞬殺するが、横や後ろから来た時はラキと私が戦う。フードの人は何もせず黙って見ていた。
置いて行かれなかっただけマシだと思うしかない。後を歩いていると、急にフードの人は立ち止まり振り向き聞いてくる。
「どこから剣を出した?」
「スキルです。」
「今から向かう洞窟では、コウモリの群れやオークなどがいる。そのスキルで複数の敵も相手にできるか?」
「わかりませんが、ラキがいるので」
「そんな子犬のような魔物に頼りっきりとは、情けない。」
(くっそー、言い返せない)
ギュッと剣を握る手に力が入る。悔しいが相手の言うことは事実、私は剣を振り回すしかできない。
「ラキが倒すから、ラキが強ければ問題ないだろ。」
ラキが加勢してくるが、私以外の人と話すラキを初めて見た。というか通じるのか?
「お前、話せるのか。なるほど。
スキルを手にしているということは、相応の困難もあったのだろうがそれに頼りきりでは、いざという時にすぐに死ぬ。ここはそういう場所だ。」
フードの人が急に話し出した。何が言いたいのかサッパリ分からないが、要は私が弱いと言いたいのだろう。
(これから急成長するんだよっ)
心の中で反抗して、相手を見るとフードの中から口元が少し笑みを浮かべているように見えた。
言いたい放題言われっぱなしのため、口調が雑になる。
「話せると何かあるのか?」
「話せる魔物はいる。だが、ほとんどの魔物は話すことなどない。元々人よりも強い肉体を持っているため、知恵をつけた魔物は恐ろしく強い。そこにいる魔物が、なぜ話すのか知らないがとても珍しい。」
「へー、だからなんだ?」
「こいつの力が強くなり、お前に制御できなくなる恐れがある。そーなれば、何人もの人が死ぬ。そーなる前に始末しといたほうが良さそうだ。」
「なっ、そんなどうなるかもわからない先の話で、始末されるなんて許さない。ラキは絶対に暴走なんてしないけど、私が強くなれば問題ないんだろ。」
「ササ、帰ろう。こいつと行く必要ないだろ?」
「ふん、お前が強くなれば問題ないのは確かだ。このクエストが終わるまでに、その力証明されれば今回は見逃すことにしよう。」
まるで、話が終わったかのように再び歩き出すフードの人。その手を後ろから追いかけて掴もうとするが、手を伸ばした瞬間姿が見えなくなる。
(え!?)
「ササ、上!」
ラキの言葉もむなしく、背中に上からの強い衝撃が加わり地面に両手を着く。本当なら、そのまま背中の上に立たれていたはずだが、ラキが突っ込んだため踏まれずに済んだ。
「魔物使いは、最弱の職業だ。どんな奴でもなれるのがその証拠で、魔物がいなければ何もできないくせに、魔物だけを鍛え自分は安全な場所で見ているだけだからな。強い奴は自分を鍛え、魔物に力を借りようなんて思わない。」
「じゃあ、自分を鍛え上げて一緒に強くなった魔物と一緒なら最強だよ。」
「予想以上に無知なのか、それともただ頭が悪いだけか。魔法を制限されるリスクを犯してまで、魔物を呼び出す意味がなくなる。自分が強ければ、別にいなくていい存在だ。」
(魔法…)
上から攻撃が来た時は殺られると思ったが、どうやら今は争いたいわけではなさそうだ。強くなるかどうかの判断をするため、観察されているように思う。さっきから、妙に丁寧に説明してくれているのもそのためだろう。
しかし、その中に聞き捨てならない言葉があり、無知だの頭が悪いだのはどうでもいい。ラキに魔法について聞いてみる。
「魔力はあるらしいが、私も魔法が使えるの?
使い方わかる?」
「こうしたいと思えばできるよ。」
コソコソと話し込んでしまった私たちに、ため息を吐きながら近づいてくる。
「まさか、魔法も知らなかったとは。どこから来た?」
「んー、別の世界から」
「異世界転移、成功例があるのか。まあ今はいい、私はイーユという。魔法とこの世界のことを少し教えてやるから、文句を言わずに返事をしろ。」
またまた、急すぎて頭が追いつかない。だが、こちらの状況を理解した上で色々教えてくれるというのだ。何か裏があるかもしれないし、後でお金を請求されたりするかもしれないが、今までのイーユを見ていてもそんな人ではなさそうだ。
さっき会ったばかりだけどね。まずは、こちらのことから、知ってもらうことにしようと今までのことを大まかに話す。
「ササって呼んで、よろしく。
4日前にここへ来て、ラキと一緒に生きていくことに決めた。スキルは、魔物が住める場所と倉庫のような空間を持っている。他に知りたいことある?」
「ササは男なのか、女なのか。変わっている」
「あ、あー男だ。」
この世界ですでに2回も同じことを言われた。もう、心から男になってやる。と決心して、イーユに確認する。
「どうして魔物を呼ぶと魔法に制限がかかるんだ?」
「魔法は、体内の魔力を用いてエネルギーにして放出するため、強い魔法なら大きな魔力が必要になる。強い魔物を呼ぶなら魔力を大きく消費してしまうので、戦う前から魔力が削られてしまうなら自力で倒すほうが安全だ。違う場合もあるが、そうなってしまうので大半の冒険者は魔法に頼るようになる。」
「僕はスキルで召喚しているので、魔力は消費しないらしいです。」
突然固まるイーユ。そして何やら考え事をし出し、洞窟へ行くまでの間に魔法の基礎を教わることになった。
「お前はこの5つの呪文を唱えるだけでいい。それが少しでも発動したら素質あり、1つもしなければ素質なし。だがこの5つには属性があり、得て不得手が出てくると思うが、まあやってみろ。」
そう言われ呪文を唱えてみる
「ファイヤーボール」
目の前に火の玉が出現し木に飛んで行き消え去った。
(ぁぁぅうやッターーーーー)
ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ。魔法が使える
てことは、空も飛べるかもしれない。
1人興奮している姿に、冷めた目でため息をつきながら淡々と告げられる。
「才能がないわけじゃないみたいだな、さっさと次やるぞ。」
「よかったね」
ラキと喜びに浸っていたが、そうもいかないみたいなので言われた通り次々試していき、魔法の訓練が本格的に始まった。




