魔物対決?
朝から海辺近くに人だかりができていた。
この地域の人だけでなく、遠方からも多くの人が大会を見に来ていたらしくすごい数の龍車や魔車が混雑していた。
休戦中の今、少しでも楽しく過ごしたいと思うのも当然、面白いものがやっていると噂が広まり、参加者も外から来るようになった。
小さな大会だったので毎回20人ほどの参加者で行っていたらしいが、聞いた話では外からの参加者が4人通ってしまい優勝賞品を外の者に持っていかれる可能性が増えるため、参加者を一定の強さの魔物に絞りこの土地の強さを外に宣伝しようとしているらしい。
「思っていたよりも規模が大きいけど?」
「こんなに多くの人間を見たのは初めてです」
ラベフルに確認したところ、隣でさらに驚いて立ち止まっていた。
不自然な点がいくつかあった。土地の強さを宣伝するのに人数を減らす必要はないという点、減らした理由にもなっている外からの参加者が急に増えた点、それに加え目の前に広がる人だかりは明らかに公に宣伝している。今まではあまり情報を漏らさないようにしていたように思えたが今回はわざと人を集めているように思えた。
「何かあるな。【魔物園】にいつでも動けるように準備だけ頼んどいてくれ、ペンコありがとう」
そう指示するなり挑戦者の集合を知らせる大きな声が聞こえた。身長が高いことですんなりと目的地にたどり着くことができ優越感に浸ろうとしたが、そこにいたのは更に大きくガタイのいい男たち、その中には当然あの父親もいた。
集められた人数は8人、思っていたよりもあまりにも少ない。前回までの参加者はどこへ行ったのか?
「参加者はこれだけですか?」
「あぁ、外からの参加者も試験的に招き挑戦料を儲けようとしているらしい。今回はテストということで挑戦料はいらないらしいが、前回のベスト4までの3人が揃っている。3位だったやつがいない代わりに初めて見るやつが混じってるがな。もちろん俺が優勝者だ。」
「つまり、今回はお試しだという設定ではあるが外の者に勝たせる気はさらさらないって感じですね。どうしてこんなに少ないんですか?」
「さぁな?他に仕事があるとかで少し前に呼び出しはあったみたいだが」
「ありがとうございます」
他の参加者の様子を観察していたが、地元の3人は今年こそはと意気込んでいるガタイの大きな男が2人、顔も背格好もほぼ同じこの2人は兄弟のようだ。それと初参戦だという男が1人、細身で神経質どちらかというと頭脳派タイプに見える。
外からの参加者は男が2人と女が1人、男は背の低い太ったビーバー顏の男と細く標準的な身長と体重にきつね顔の男、この大会が始まって以来の女性の参加者だという金髪を1つにまとめた同年代くらいの女性、召集された時どこか見覚えのある感覚に戸惑ったが会ったことはない、そう言い切れるほど美しい女性だった。
大会の説明を受け、10分後1試合目が行われるということでトイレ休憩的なものがあり助かった。その場を離れ猪と子猿魔を呼び出し、猪にローブをかぶせ顔に深くマフラーを巻き子猿魔2匹と共に頼みごとをする。
トーナメント式で抽選により対戦相手を決めるということで、名前の書かれた紙を箱の中から選ばれた2名が戦うということになる。
1試合目、金髪少女vs兄弟の弟
2試合目、ビーバーvsキツネ
3試合目、父親vs兄弟の兄
4試合目、インテリvsササ
勝った方の紙が残されその後の試合を決めるというもので、状況によってその後の対戦を考えるというなんとも雑なスケジュールだった。
とにかく、1試合目はあの女の子の試合と公表され盛り上がりは最高潮だ。相手は地元で強いとされている兄弟の弟、本人同士で戦うわけではないにしても心配に思ってしまう。元女だからなのか、ただ単に可愛いからなのか。
1試合目の2人が、会場真ん中でお辞儀をし両者反対側へと歩いて行き階段を登る。そこから魔物に指示を出し相手の魔物を倒した方の勝利、あるいは降参させることになる。
ここで異変に気付き会場が騒ぎ出した。弟の方は筋肉質な大男の魔物が会場中央まで向かっているのに対し、少女の方に魔物の姿が見えなかったのだ。
「準備を速やかにして下さい。間も無く開始です。」
「準備はできています。いつでもどうぞ」
司会進行を務める人が少女にむかい注意するも、返ってきた言葉に会場中が驚きを隠せないでいた。
彼女は魔物同士の戦いに自身のみで勝ちにきていた。普通に考えればこの世界では魔物を倒して生活しているのだからなんの問題もないはずなのだが、ここにいる魔物たちはこの大会のために訓練され知識を植え付けられている。野生で生活している魔物よりは、間違いなく強いはずなのだ。
会場は静寂に包まれ、隣の人の唾を飲む音が聞こえる。少女は剣を片手に構え、試合開始の合図を待っていた。




