井の中の蛙
次の日、気になっていた大会について教えてくれそうな場所、ギルドへと来ていた。
各地域によって外装はもちろん内装も違っているが、システムは統一されここに来る人たちの雰囲気もどことなく同じような人が多い。
メイグロックでは腕に自信のある人たちから、明らかに初心者だという人までが集まっていたが、ここでは自信があるというよりも確信に満ちた変な空気が流れていた。
クエスト情報、依頼を見るだけで最近の動きや魔物の情報が手に入る。だが、大会について誰も話していないところを見ると時期が今では無いのかもしれないと出て行こうとした時、ある話が聞こえてきた。
「息子の魔物を消されちまったんだ!黙ってくれてやれってゆーのか?」
「お前の息子のって例のあの魔物だろ?子猿魔を消しちまうやつなんて、よそもんか頭がおかしいやつしかいねぇ。どちらにしても諦めた方がいいだろぅよ」
明らかに自分のことを言われていると気付き、話を聞くことにした。
「最近では子猿魔の姿を見かけるやつは少ない。なんせ奴らは賢いからな、隠れて仲間を助ける機会をうかがっているってきいたぜ。そんな魔物に関わらない方が身のためだ、ラッキーだったと思うんだな」
「俺にはクロがいる。いざとなれば猿魔にさえ負けねぇ、だが珍しい魔物を簡単に手に入れるためあんな小さい息子に手を出したことは許せねぇ」
「フンっ、なら次の大会に出場してることを祈るんだな。」
頭に血が上っている親父に、周りの男たちがなにを言っても無駄だと呆れて離れていった。親父が不貞腐れ出て行ったのを確認し、チャンスだと思いその男たちに近づく。
「これ、僕からの差し入れです。」
「なんだ少年、ここのギルドはランクが高いからまだ早いんじゃ無いかぁ、ん?」
両手に持っていたお酒を男たちに差し出し、それに気づいた男たちの態度が一変する。
「ここは少年のようないい男が来るところじゃないよ。酒場に雇われちまうぞ、グヮッハッハッハ」
「それもいいかも知れませんね。ところで、大会がいつあるのか知ってますか?」
「聞かれちゃってたか、ここの土地にある公にしてない大会だから部外者が参加することはほとんどないんだがなぁ、別に教えちゃいけねぇわけじゃねえからなぁ、特別に教えるが今月末だよ。もうすぐ寒くなるからな」
「参加するにはどうすれば?」
「おいおい、正気か?酔っ払ってるのか?
奴隷の魔物同士の戦いだが、隙をついて人間を襲ってくる魔物もいるんだ。人間を憎んでない魔物なんていないだろうからな、命の保証はされてねぇって話だ。」
「それでも参加したい場合は?」
本気じゃないと思われていたのか笑って流していた男たちだが、いつまでも真剣な姿勢をを崩さないこちらを見て2人は目を合わせ戸惑っていた。
「大会は…前日に参加者を希望するものを集め、定員に達すれば翌日試合だ。優勝した者には毎年有名な魔物が贈られ、Lももらえる。試合に参加することができるのは、1人につき1匹の魔物だ。」
「ルールは?会場はどこになりますか?」
「本当に参加するんだな、いつも海の近くでやってるよ。ルールは相手が負けを認めたら勝ちだが、認めなければどちらかが死ぬまで戦う。雇い主である人間が先に死んでも、その戦いは止まらねぇ、魔物が負けを認めるか死んだ場合のみ終わる。」
「?主人がいなくなった魔物が勝った場合はどうなるんです?負けたら?」
この場合人間を殺す目的の大会になってしまうんじゃないかと、疑問に思ったがこの大会は規模が小さくほとんどが知り合い同士。
よそ者は殺される場合もあるかも知れないが、身内を殺されることは少なく、殺されないように魔物を鍛えているのだろう。いつの時代にもある娯楽の一つだと考えられる
「主人の死んだ魔物が勝った試合は、その魔物に解放の褒美が待ってる。だが、主人を殺してる間に自分が殺されちゃあ意味がないから、真っ先に主人を殺す魔物はいねぇんだ。逆に主人が死んじまった魔物が負けを認めた場合、買った人の奴隷に加わる。」
「つまり、ギリギリまで負けを認めたくねぇから必死になる、逆に強敵になっちまうってわけだ」
「魔物が負けを認めるには、決められた位置に立つことだが、主人のいる魔物にはそれが許されねえから面白いんだ。」
「今年の大会はいつもより余所もんが多い、お前さんを含め4人ほど参加するって噂を聞いた。理由はなんだ?金か魔物か、筆頭と話すためか。」
「筆頭に会えるんですか⁉︎…僕は金と魔物と筆頭と話したいからって感じですね」
「今知ったやつが、よくもまぁ簡単に命をかけて闘うよ。最近の若者は命が惜しくないらしい。」
つい飛びついてしまったが、よそ者が多いと言う話に少し疑問に思いつつも笑顔で逃げる。
「いろいろありがとうございました。優勝したらまたお酒おごりますね。」
「「期待して待ってるぜ」」
田舎の大会で、賞品も少ない。魔物同士の戦いという娯楽でしかないものに、遠方から集まることはまずない。あるとすれば、筆頭との時間がもらえるということだった。もっと情報を集め、慎重にことを進めなければならないと気持ちを引き締める。




