神になったラキ
遅くなりました。申し訳ございません
「……」
「…どうした?」
「何もない日々って幸せだけど退屈だ。この森に来てから魔物1匹現れない。」
「タノシク シテアゲルヨ」
「遠慮しておく」
メイグロックを出て西へ進む、前回途中で逃げ帰った森へ来て3日経つ。
霧が濃くまっすぐ進めているかもわからない、不気味な森の中魔物との戦闘になることを覚悟していた。2年鍛え上げ武器も新しく増えたことで、自分の力を試してみたくて仕方なかった。
剣が二本になり、上手く扱えるか不安で試してみた。
驚くほどすんなりとその上、手に馴染む感覚に恐怖すらも感じたが、全てはイーユの計算のうちだった。訓練中、左手を使った内容が多かったのはこのためだったのだと今になって気づいた。
「俺の強さに逃げていくのだろう。一度隠れてやってもいいが、さすがにこの霧の中1人では危険だ」
「大きさにビビってるんだろ、けど魔物の巣窟と言われていたこの森で1匹も見ないのは異常だ。原因はラキだけじゃないのかもな。」
木の上にハンモックを作り天気の悪い日はテントを屋根代わりに使い寝ていた。今日もハンモックの上で、不満をぶつけていた。
木のない場所では、寝袋を使いラキの隣で暖かく眠るが、雨の日はラキの体が大き過ぎるためテントに入れずラキは濡れてしまう。一度、小さくする魔法で子犬の頃のサイズにしてみたが怒られてしまったので、それ以降魔法は使ってない。
「いつもこの時間は動かないから、今なら何かわかるかも知れない、少し様子を見てくる。」
「慎重にな、声が聞こえたらすぐに喚び戻せるようにしておく。」
今のラキが遠吠えをすれば、メイグロックにいる人たちにも聞こえるくらい響く。
ラキが離れる代わりに、ピュトンを呼び周囲の警戒を頼む。
「【魔物園】はどう?快適かな。」
「問題ない」
ピュトンはクールで無口なロジ丸の相方。
あれから魔物の言葉も学んだが、まだ簡単な言葉でしか会話できない。
魔物との会話は、ペンコがいるせいで混乱するときもあるが慣れてきたところだった。
ササから離れ森の中を走り回る、魔物の匂いを嗅ぎつけ近づく。だが、近づいた途端に離れていく魔物を追いかけ1匹の魔物に追いついた。
見たことのないちんちくりんな獣だが、頭はいいらしい。群れから離れ危険があれば伝え逃す役目を担っていたこの1匹は、騒がずにこちらの様子を見ている。怯えて声が出ないだけかも知れないが、目にはまだ意思があった。
「なぜ逃げる。喰ったりしない、魔物の姿がないのはなぜか教えろ。」
「キキッ」
甲高い声でついて来いと向かう先は、魔物の匂いがする方ではない。騙そうとしている感じはないのでついて行くが、ちょこまかと踏まないように気をつけるのが面倒になり頭の上に移動させ案内させる。
ついた先には人間の男が4人いて、何かを探している様子だった。魔物がいないからだろうと思っていたが、男たちの探す姿には異常な殺気を感じるほどだった。
次の瞬間、男たちはオーガの群れに襲われた。一瞬のうちに状況が変化し、もうダメだと見守っていたが予想以上に男たちは戦い慣れしていて、あっという間に逆転し1人のオーガを捕らえ連れて行った。オーガから襲いかかったのだから、男たちからすれば不可抗力ともいえる。だが、それが目的だったとでも言うような動きに疑問を感じた。生かしたまま人質にするならまだしも、どこへ連れて行くのか気になり追いかける。
ラキの声が聞こえないことから、魔物は見つからずにそのうち帰ってくると安心して寝ることにした。決して寝落ちしていたわけではない。
ハンモックを揺すられ、危うく落ちるところだった。目の前に現れた大きな白い物体に納得し、体制を起こす。
「おはよ。」
「なぜ魔物がいないかハッキリした。話を聞いてきたが、南にある人の住む場所が原因だ。」
寝起きにはキツイ大きな魔物の声に、眉間にシワができたが頭をなんとか働かせ行動に移る。
「ペンコ、ピュトンありがとう。急いで移動しよう」
素早く移動するためラキに乗せてもらい驚く。
猿に似た尻尾が2本生えた魔物が1匹ラキの頭の方に乗っていた。オラウータンよりの顔だが、マンドリルの派手な色も併せ持つ魔物だった。
そして後方に角の生えた鬼が1人、オーガというらしく目つきが恐ろしい。角以外は人間とそれほど変わらないが細マッチョだった。
自分の筋肉とどちらが上か見定めていたが、睨まれたのですぐに愛想笑いで誤魔化す。
「この2人は?」
「猿が案内してくれる。ここで起きていることに詳しく、仲間も失っているそうだ。オーガは、被害にあっていた所を見つけそいつ1人で何かしようとしていたから止めて連れてきた。」
「よろしく」
とりあえず挨拶をしてみたが、見事にスルーされた。被害にあった所だと言うんだから仕方ない。
「そのオーガが攫われたのは恋人らしい。男たちはあの森へ何度も来ているらしく、そこの小さい猿は群れで逃げ回っていた。森で強い部類の種族のオーガが勝てない相手に他は逃げるしかないんだと。」
「どうしてついてきちゃったんだ?隠れていた方がよかったんじゃ」
「俺を神かなんかだと思っている」
得意げに言うラキに呆れつつも、猿の瞳は輝いていた。ラキが神なら僕はなんなんだ。
オーガの群れは今、森を出る出ないで分裂しつつあるらしい。なんとかしてやりたいが、相手が人間ではめんどくさいことになりそうな予感がした。
「捕まれ!」
ラキの声で必死にしがみつく。大きく横に動いたため、危うく振り落とされるところだった。お猿さんを抱えしがみつき、動きが止まるのを待つ。身を屈めたラキが静かに話す。
「俺の姿は見えていないはずだが、木の動きだけで矢を放ってきたようだ。もう近い、慎重に行く」
「近づく者は殺すのか、閉鎖的なのか?」
この時、ギルドランクが上がってことで問題の人たちと話し合いでなんとかなると思い、お気楽な調子で進み続けた。
途中魔物よけの罠や、攻撃が何回かあったが人の住む場所が見えるところまでは、簡単にこれてしまった。
「ここからは、隠れられないから【魔物園】にいてもらうかここで待機。」
「ここにいるのがバレればササも危ない。【魔物園】へ行くが、何かあったらすぐに呼べ。」
「わかってるよ、君たちもラキと一緒に隠れてて」
【魔物園】へと移した後、木の壁に囲まれた町の入り口へと進んでいく。
壁に無数の飾りがかけられているのが見えた。
メイグロック国 城にて
イーユが任務から帰還し、セルゲン王に報告をしていた。
「ササが西へ向かったということは、あの森に挑戦しに行ったんでしょうが、時期が悪かったですね。」
「教えてやるべきだったと言いたいのか。しかし、彼もまた自分の目で見て判断できると信じている。
いつからお前は過保護になったんだ?」
「そんなことは…どう動くのか気になっただけです」
報告に来たイーユが、普段ならありえない顔で不安を表に出していたため、少しからかってしまった。顎髭を触りながらクククと笑い、余裕のある態度を示す。
それに気づいたのか冷静に振る舞い、部屋を後にする。
「今までが穏和な生活だったために、少し過酷な現場になるかも知れない。負けないでくれササ君」
「アノコ ダイジョウブナノ? ナニカアッタラ ユルサナイワ」
「おやおや君まで、妬けるね」




