旅の続きへ
次の日準備を整え、いよいよ出発
忘れてはいけない人のところへ挨拶に来ていた。膝をつきその人物が現れるのを待つ
「待たせたね。噂が先に届いたがその件だったかな?」
「陛下、報告が遅くなり申し訳ございません。覚悟を決めました。」
「そうか、出発するんだね。ササ君以外下がって良い」
周りに待機していた従者達が、一斉に姿を消し2人きりになる。
「これでいいかな?早速だが、1人で行くのかい?」
「すいません、助かります。ラキたちがいるので、とりあえず1人で行けるところまで行ってみたい思っています。陛下への報告に魔物のフィルドペンコをと思っておりますが、まだ訓練中なので少し不安があります」
「魔法では妨害を受けることもあるので、試してみる価値はある。が、いつの間にそんな珍しい魔物を?
それも2羽いないとこの件は成立しないが、いるのだろう?」
驚くセルゲンに本当のことを言うか迷ったが、正直に報告しておく。フィルドペンコという鳥の魔物、ペンギンのような見た目で手乗りインコのサイズ、周囲の言葉を覚え短時間で話すことができる、特殊な音声で遠く離れた場所までも伝達できる。普段は単独で勝手気ままに暮らしているらしく、気分屋でわがままな性格が多いため少し信用に欠けるが、この魔物は滅多に見られない珍しい種類なので、盗聴などされる心配もなく遠方への報告には最適だ。
「いいえ、5羽ついてきちゃいました。こちらにパンコ、ピンコ、プンコ、ペンコ、ポンコ」
「なんと5羽も。この際ネーミングセンスは置いておこう。して、この城に残ってくれるはどの子か?」
「この豪華な城で、渋い叔父様と暮らせる幸せ者は誰だ?イタズラ好きのペンコは僕と来てもらう」
ペンコは不満げな顔をしたが、抗議してこない様子を見るとまんざら残りたいわけでもなさそうだ。初めて出会ったのはペンコ、メイグロックを南に進んだ少し肌寒い川の近くで魔物に追われていた。たまたま、クエストの標的だったためその魔物を倒した時にラキとの会話を聞いて覚えた言葉で話してきた。初めは意味のわからない言葉を繰り返すだけだったが、あっという間に意味のある会話へと変わっていった。ペンコに騙され何度も危ない場所へ、頼まれた珍しい物を取りに行かされた。だが、何度も取って来たことで信用してくれたのか懐かれたのか、ついてきたので受け入れた。最初は可愛いのが増えた程度の認識だったが、ペンコが仲間を呼び寄せていた時は驚いた。そして、今回の役割に気づいたのだ。名前が適当すぎる気もしたが、5羽で助かった。
「アタイガ、ノコッテアゲテモイイワ」
「ワタシハ、ドチラデモ」
「……」
「zZZ」
「順番にパンコ、ピンコ、プンコ、ポンコです。セルゲンさん、どの子にされますか?」
「んむ、個性があり面白いものだ。黙ったままのこの子も見所があるが、強気なこの子も捨てがたい。この子は環境に影響されずおとなしそうだが…決めた。この子にするよ」
セルゲンは手のひらを上に向け、1羽の前に差し出す。そこへ、パンコが飛び乗った。
「ミルメガアルジャナイ、キニイッタワ」
「本当にいいんですか?」
王様に対し上から目線なパンコに呆れつつ、他のフィルドペンコを戻しセルゲンに確認する。
「あぁ、強気なところが妻に似ていてな、きっと気も合うことだろう。よろしく頼む」
「パンコ、セルゲンさんの言うことを聞くこと。こちらからの連絡も必ず伝えて欲しい。一番しっかりしている君を選んだのはわかっているだろう?」
「マカセナサイ。アタイハ ジョオウニ ナッタノヨ」
頭を抱えたくなったが、後ろで吹き出すセルゲンに救われた。
パンコには、なんと一部屋を手乗りサイズのパンコ専用の部屋にと用意され大喜びの様子、しばらくは上機嫌間違いないが、あの性格に拍車をかけることになると悟った。
「ありがとうございました。僕に何かあった時は、パンコにわかると思います。それでは、行きます」
「待ちなさい。イーユには会っていかないのか?」
「彼女も忙しいようなので、置手紙を用意しました。世話になりっぱなしなので、これ以上迷惑はかけれません」
「…と言っているが、どうする?」
セルゲンの言葉に視線を追う、振り返るとイーユが立っていた。髪を後ろでまとめ、参謀の制服なのだろう白い正装を纏う姿は何度も見たことはあったが、その度に見惚れてしまっていた。
「挨拶もなしとはな。呼んでいただき感謝します陛下。」
「最近会う時間もなかったから、忙しいんだと思って気を遣ったつもりだったんだ。悪かったよ、会えてよかった」
「私もお前と会えて良かった。この世界でまだまだ頑張れそうだ。この国を出る前に西区にある武器屋へ寄っていけ、祝いの品を用意しておいた。それと、無事に戻れ」
「ありがとう」
この時、パンコが【魔物園】へ戻ってしまったので設定を修正し、パンコとは別れる形をとった。城の外まで、ラキやロジ丸との別れの挨拶のために出てきてくれた。
イーユに言われ、西区の武器屋へ寄った。
そこには、懐かしい大臣のガイルスが立っていた。両手で大事そうに持っている剣を差し出してきた。
自分の使っている剣より少し長めで黒みを帯びていた。片手剣にしては少し短めだと思っていたが、双剣だったのかと驚いた。イーユはそれに気づき探してくれていたらしい。師匠には頭が上がらない。
同時に鞘も手に入れた。これはガイルスからと言われ少し驚いたが、この国は巨大な魔物が守っていると広まり他国や魔物から襲われなくなった。そのことで僕自身何かした訳ではないが、英雄扱いを受けてしまい、ガイルスもその頃から態度が変わったのだ。
今、西門からメイグロックを出た。
長かったこの国を見納め、新たな魔物との出会いに期待して出発する。




