ボーイスカウト気分
「遅くなって、ごめん、用意できたよ。」
ギルドに着くなり、呼吸を整えながらジークに声をかける。準備が終わり暇を持て余していたジークは、ギルドの隅にある机に突っ伏していた。
「ずいぶん長かったね…って出て行く前と変わらないけど荷物はどうしたの?」
「ちゃんと用意してきたよ、スキルなんだけど必要なものはこれに入ってるからね。」
「なんだそれ⁉︎そんな便利な物が⁉︎旅商人になることをお勧めするよ。」
目でズルいと訴えられたが、笑ってスルーしておく。受付のお姉さんにお別れを告げギルドを後にした。
町に入る時は厳しいが、出て行く時は自由みたいだ。
今から向かうメイグロックという国は、ダムリルから南にまっすぐの場所にあり、この大陸のど真ん中に位置している。ジークが持っていた地図を見せてくれたが、すごく大きい国だとわかった。
メイグロックで暮らすのは人間だけではなく魔人や妖精など、戦争時はどちらにも属さないという条件でメイグロックに住むことを許可されている。このことから、かなりの武力と財力をもっていることがわかる。
昼過ぎに出発し見晴らしのいい道をずっと歩いてきた。魔物が現れることもあったが、ラキがあっさりやっつけられるレベルの魔物くらいで問題なく進んでいた。周りに少し木が増えてきた頃、日が沈み暗くなりつつあったので早めに野営する準備をすることになった。
旅立ち初心者の自分がいたため、準備にどれほどかかるのか知っておく必要があったのだろう。気を使わせて申し訳なく思っていたが、別の理由があったようだ。
「イーユの件そろそろ話してくれてもいいんじゃないか?食べながらゆっくり聞かせてもらうぞ。」
「あぁ、ならついでに頼むことにしよう。」
ジークは缶詰を2つと寝袋にする布を出し終え、寝る準備はできたとばかりに座ってこちらを不思議そうに見つめていた。
テントなんて快適なものはなく、地面の上で布に丸まって寝るのが主流のようだ。足の速い竜や魔物が引いて走る車があるらしく、金持ちは基本竜車で旅をするらしい。
どちらにしても誰か1人が見張りとして起きている必要がある。
「鍋とカップ、板と布団に水と缶詰を持ってきてくれ、ゴブリンたちを呼ぶから頼んだよラキ。ありがとう」
【魔物園】へ消えたラキを見て、ジークは今から何が起こるのか興味津々の様子。
「ゴンとブン、ラキ」
戦うわけでもないのに3匹の魔物を召喚したことに驚いていたが、その魔物がいろいろな道具を持っていたことに開いた口がふさがらないジーク。持ってきてもらったものを準備し、缶詰を鍋に入れ魔法で作った焚き火の上で温める。空いた缶詰に少しの水とちぎった干し肉を入れ、温めている鍋にそれも追加してラキと半分ずついただく。
「イーユのことだけど、洞窟のドラゴンを僕が連れてきちゃったんだ。だからイーユは何もしてなくて、メイグロックの人にそのドラゴンを見せれば証明できるだろ?」
「ドラゴンを連れてきた。グランドドラゴンを連れてきた?」
ジークは言ったことが理解できないようで、無表情で言ったことを繰り返す。肉入りスープを飲みながら、ゆっくりと説明する。
「ロジ丸。って名前をつけたんだけど、洞窟で産まれた時に出会って懐いてくれたんだ。一緒に旅するって決めたんだけど、町の人に見つかっちゃって。」
言いながらロジ丸を呼ぶが、出てきてすぐ板と布の間に入ってしまった。隣で目を輝かせていたジークは、固まったままだった。
「えっ?えっ?今のが、グランドドラゴン?…ちょっと感動を返して欲しいような。あと、ササのそれ反則じゃないか?」
「フフッまだ子供だから、スキルを有効に使ってるだけだよ。ラキ、ゴンとブンに、夜の見張りを頼めないかな?魔物が出たら教えて欲しいんだけど、交代でラキも入れて5人でやればより長く眠れるから。」
惚けた顔のジークを放って、ラキに通訳を頼むとすぐ確認して返事をくれる。
ラキは別として魔物と話ができたらと何度思ったことか。
魔物同士は通じているということは、共通語でもあるのかもしれないが、見た感じ言葉ではなく思念的な何かで通じているようだ。
「ゴンとブンが交代で夜見張りをするから寝てていいらしいよ。すぐラキに声かけるように言ったから大丈夫だと思うけど?」
「2人だと半分しか眠れないよ?辛いんじゃないかな?」
「今までも見張り役として住処を守っていたし、昼間【魔物園】で寝かせてくれれば問題ないって。どうする?」
「とりあえず、今日は頼んでみようかな?明日は猪鹿蝶にお願いするかもって伝言も頼むよ。それと、ロジ丸今日は外で寝るから危ないかもしれないよ?中で寝なくていい?」
布団をめくりロジ丸に聞いてみるが、もう中で丸まっていたので横長の板に横向きにお腹だけふとんで覆う形になり眠りにつく。
ジークは終始羨ましげに見ていたが、ラキとロジ丸の寝顔に癒され爆発することなく眠ってくれたようだ。




