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異世界ワープ~剣と魔法と魂の世界~  作者: キノコの山脈
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プロローグ

 俺は死んでしまったらしい。死因は覚えている。VRMMORPGでガチャ爆死した俺は腹いせにスライムをオーバーキルしまくっていた。そう、時間も忘れてひたすらオーバーキルをしていた。それに怒った母親が、VRゲーム機器であるヘルメットを無理やり頭から引き剥がした。その時のショックで肉体と魂が別れて死んだ。

 なぜそんなことが分かるかって? 魂だけの存在になり、天に登っている時に自分の肉体と母親が見えたからだ。


*****


「ようこそ死後の世界へ。あなたは不幸にも今日、半分だけお亡くなりになりました」


 目が覚めると、真っ白な空間に俺はいた。あるのは王様が使っていそうな派手な椅子だけで殺風景な部屋だ。その椅子にちょこんと女性が座っていた。宝石のように綺麗に輝く白髪ロング。純白の肌と漆黒の瞳。青のグラデーションの羽衣はとても綺麗で、落ち着いた雰囲気を漂わせている。椅子に座っている姿はまるで一枚の絵画のようだ。


 バクっ……バクっ

 波打つ心臓の音が聞こえてくる。どうやらドキドキしているらしい。無理もない。こんな美少女、テレビですら見たことがないのだ。美女に免疫が少ない俺には美女と二人っきりという状況は少し気まずい。


「お気持ちは分かります。いきなり死んだなんて言われたらショックで何も言えなくなってしまいますよね」


 そんな理由で黙っているわけではないのだが……。


「いやまあだ、ひいじょう」

 噛んでしまった。


「まだ? そういえば自己紹介がまだでしたね。私は地球課日本担当の転使(てんし)、アズエルです」


 いや、大丈夫ですと言うつもりだったんだが……まあいいか。


 俺は目を閉じて心の中で『無心』と唱えながら大きく深呼吸をして、心を落ちつかせる。これは美女と喋っている時や、近くにきた時に鼻息が荒くなるのを克服するために身につけたスキルだ。


 ……自分で言うのもなんだが、悲しすぎるスキルだな、おい!


「あのう、半分だけ死んだというのはどういうことですか?」


「やっぱり気になりますか。実はあなたは死にましたが、あなたの身体はまだ生きているのです」



「いや、さっぱり分からないです」


「簡単に言うと魂の半分だけが天に登り、残り半分が身体に残っているのです。こんな死に方した人初めて見ましたよ」

 何それ怖っ! つまり、世界に俺が二人いるってことか? いや、片方の俺は死んでるから、やっぱり一人か?


「それって大丈夫なんですか?」


「二人がもし出会ったら、お互いゲシュタルト崩壊しますが大丈夫です」


「いや、それ全然大丈夫じゃないでしょ!」


「会うことなんてないと思うので問題ありません」

 

「そこは思うじゃなくて、断定してくださいよ……」


「さて、どうでもいい話はここら辺にして本題に入りましょうか」

 しかもどうでもいいってなんだよ。この天使適当すぎるだろ……。


「あなたには転生してもらいます。それでですね」


「マジで! 俺、転生出来ちゃうのか!?」

 つい興奮して大きな声を出してしまった。無理もない、オタクの行きたいところランキング一位連続受賞の異世界に転生できるのだ! この喜びはさっきまでの(うつ)気分を吹っ飛ばす程のものだ。もしかして大丈夫というのは、異世界に転生するから二度と会うことはないという意味だったのだろうか?


「たつき君」

 アズエルは凄くいい笑顔で俺を見つめてきた。美女に笑顔で見られるとドキドキするな。いかん、無心スキルが解けてしまいそうだ。


「人が喋ってる時に喋らないって学校で習わなかったかな? 途中で遮られるとイラっと来るからやめてね」


 どうやったら笑顔でこんな怖い声だせるんだろ。凄く怖い!


「すいませんでした!」

 天使なのに人なんですか? と、ツッコミたい気持ちをグッと押さえて謝る。お父さんが言っていた。笑顔で怒る女性ほど怖いものはないと。


「それでですね、転生先をくじ引きしてもらいます」


 そう言うとアズエルの手元に小さな箱が現れた。上の方には穴が開いる。つまりこれがくじ箱でここから引けってことか。何ていうか……凄くアナログだな!


「では、どうぞ引いてください」


「わ、わかりました」

 ドキドキ、わくわく


 これで俺の異世界生活が決まると考えると緊張するなぁー。

 俺は全神経を右手に集中させる。運命は自分の手で切り開く!


「は! ……イクシオン?」


「惑星イクシオンですか、いい引きですね」


「すいません。さっぱり分からないので教えてください」


「説明めんど……しない方が楽しめると思いますよ」


 今めんどくさいって言おうとした? ま、まあいいか。そんなことよりも……


「チート能力とか貰えないんですか?」


 やはり、異世界転生と言えばチート能力! チートがない異世界転生なんてご飯がない牛丼と同じ。牛だけでも美味しいけど、ご飯は欲しいところ。


「ちっ……どいつもこいつもチート、チート、チートってうるさいんだよ」


「……え?」


 突然低い声が聞こえてきた。最初は別の天使が現れたのかと思って、周りをキョロキョロ見たが、目の前の天使以外誰もいなかった。

 ……どうやら、地雷を踏んでしまったらしい。


「そんなものあげられる訳がないだろう。普通に考えてな、おい。チート能力なんて与えた日には即クビになるんだよ。無職になるんだよ。それなのにどいつもこいつも口を揃えて同じことを言いやがる。少しぐらいは察しろよ。空気読めよ。何回も言われるとこっちはストレスが貯まるんだよ。そのせいでお酒飲み過ぎて給料は飛ぶし、二日酔いはつらいし。だいたいチート能力貰ってどうするんだ? 魔王にでもなるのか? はっ、ぐだらね。だから…………エトセトラ」


 見事に天使様の性格……というよりキャラが変わっていた。比喩ではなく本当に見た目が変わらず、中身だけが別人になったみたいだ。天使というよりOLだな。



 ──五十分後

 俺は五十分ひたすら今夜飲まない仕事の愚痴を聞かされていた。俺は黙って聞いていた。黙って聞くしかなかった。だって今のアズエル凄く怖いんだもん!


「それでなあの(クソジジイ)、毎回無茶な注文してくるんだよ。あれもう完全にパワハラだよな。あーもう、転使なんてやってられないよ!」


「ならいっその事サポタージュすればいいんじゃないんですかね……」


「それが出来ないから困ってるんだろ? 話聞いてたのか? 無職になったらどう生活していけばいいんだよ」


「異世界に転生してしまえばいいんじゃないですかね?」


 天使自信が転生できるかは知らないけど……


「……グットアイディア! その手があったか!」


「本当にそれでいいのか天使様……」


 アズエルは深呼吸をする。すると


「それではそろそろ転生を始めますね」


「あ、最初の天使に戻った」

 声や雰囲気が地雷を踏む前のアズエルに戻った。凄い変わりようだ。


「私、二重人格なんです。毎日やけ酒してたらこうなっちゃいました」


 アズエルはニコニコしながら言った。酒怖いな、おい!


「それでは惑星イクシオンにワープオン!」

 俺とアズエルの周りを光が包む。最初は弱かった光はだんだんと強なっていき、最終的には目も開けられないぐらいの強さになった。街の中だったら間違いなく光害で訴えられるだろう。


「あれ? 転生じゃなくてワープ!?」


ブクマ、感想、評価お願いします(〃・д・) -д-))ペコリン

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