Episode1 生存者
昨夜での出来事を忘れたかのように晴れわたった真昼間、リドナーの家からテレビの音が聞こえてくる。
僕の好きなバラエティー番組を見ていると、いきなり見覚えのある男性アナウンサーがテレビに映る。臨時ニュースか?そしてその男性は喋りだす(ちなみにニュースは島の放送局から放送されている)。
「皆さんこんにちは。ただいま臨時ニュースが入ってまいりました。今朝、島で唯一の学校『アルカディア学園』で...」
僕は瞬きをする間もなくテレビの電源を消した。ぷつっと切れたテレビは昨夜見てしまった影のように黒く染まっている。もしも、そのニュースを見続けろと命令されてもやる気が出ないだろう。というより、そんな命令ならためらいもなしに逆らうだろう。そのニュースには『アルカディア学園で大量殺人か』の文字。そして、校庭に並んだ全身血だらけの死体の数々。そんな写真が添えられていた。もう耐えられない。残酷なのが苦手というのもあるが、やぱっりその犯人を懲らしめてやりたいという気持ちが一番だった。というわけで僕は事件があったというアルカディア学園に行くことにした。
さて、何で行こうと迷っているとちょうどタクシーが走ってくるのが見えた(タクシーと言っても車ではなく『TAXI』という表札が貼られた馬車である)。ポケットにはありったけの銅貨が入っている。よし、タクシーで行こう。「止まって」と言い僕はタクシーを止める。そして乗る。「アルカディア学園に行きたい」と告げる。手綱をもった運転手が「了解」と言うとタクシーは走り出した。
* * * * *
一方、アルカディア学園では...。
生存者が一人だけ存在した。テーラである。全身血だらけでありながらも一命をとりとめたのである。
...。
......?
.........!
私...生きてる!?意識を失ったとき、私はもう終わりだと思った。いや、もしかしたらって望みをかける自分もいた気がする。私は今まで以上に神様に感謝をしたくなる。同時に神様の力ってすごいわねと思う。こんな、血だらけになった私を生かすことができるなんて...。と、思ったのもつかのまオーロラが近づいてきた。生きているのがバレればまた暴力をふるわれるだろう。そしたら今度こそ終わりだ。私は狸寝入りのように目をつぶる。息はできるだけ止める。オーロラが通り過ぎる。その後姿を見ると、腰にはナイフを入れるためのベルト。そしてそのベルトの袋に入れられた4本のナイフ。もし、死んでいるフリをしていなければどうなっただろう?あのナイフでグサッと刺されたのだろうか?それともめった刺しにされたのだろうか?考えただけで恐ろしかった。
それから、10分ほどすると校門前の馬車が到着したのが見えた。そしてそこから剣士らしき男が降りてきた。かと思うとこちらに向かってくる。な...なに!?あの人も私を殺す気なの!?と思いながらも、お願いよ!私の救世主であってという自分もいた。その男はやはり剣士であった。そして、その男剣士は私の救世主であった。彼は目の前まで来た。私は彼に
「あ...あの!」
と言う。すると、
「君!大丈夫か?君!」
と返してくれる。
「えっ...あっ...ハイ。生きてはいます。」
優しい人だな、悪くない顔だなと思いながら返事をする。
「そうじゃなくてそのケガ大丈夫か!?」
と彼が聞く
「あ、ケガに関しては...助けてほしいです。」
次は、歳は私と同じぐらいだなと思いながら返事をする。
「名前は?」
いや、普通名前を聞くときは自分が先に名乗るものでしょ!?まぁ、どうでもいいんだけど(私は、助けてくれただけで嬉しかった)。
「私はテーラ。あなたは?」
「僕はリドナーだ。ちなみに19だ。君は?」
えっ!?私?てか、初対面の女の子に歳を聞くなんて失礼すぎでしょ!?この男。でも答えるしかない。
「えっと...私は18です。」
「そうか、僕の1歳年下か。」
「あ、ハイ」
「君をこんな目にあわせたのは誰だ?」
はぁ?なんでそんなことあなたに...。いや、言った方が楽かもしれない。
「私の友達の...オーロラです。」
「なるほど、今どこにいるんだ?」
「あのっ...!ちょっと待ってください!オーロラは...悪くないんです!普段はそんなことをしないんです!だ、だから...!」
「なぜだ?その子は君をこんな目にあわしたんだよ?生きててよかったけれども。」
「きっと、何かに操られているんです。だから、お願いします!殺すのだけはやめて!」
私は少々焦りながらもリドナーさんに必死で訴える。すると彼は
「わかったよ。殺すのだけはやめよう。だが、野放しにすることはできない。それがわからないほど君はバカではないだろう?」
なによ!この人。初対面の人をバカにするなんて。まぁ、無理はないかも。それに、一つだけオーロラを殺さずに暴走を止める方法を今思いついた。自分たちで助けることを放棄し、オーロラの彼氏であるジャック君に何とかしてもらおうと。
「リドナーさん、タクシーを手配してください。オーロラには彼氏がいるんです。その人に何とかしてもらいましょう。」
それを聞いた僕は君は愛の力に賭ける気か?でも、今はそれに賭けるしかないかもしれない。僕は
「わかった。タクシーを手配しよう。」
そう言ってテーラさんに校舎内のどこに公衆電話が置かれているかを聞き、そこへ向かった。そして、知り合いのタクシー運転手にアルカディア学園に来るように伝えた。そして校舎から出ると、テーラさんの近くにもう1人女の子が座っている。その手にはナイフ。僕はその子が彼女を殺す気なのだろうと思い、そこに向かって走り出す。近くに行くとその子の胸にはオーロラと書かれた名札。なっ...!彼女はオーロラだ。傷つけることなどできない。でも今さら勢いを止めることなでできない。ならば...!僕はいままで磨いてきた剣術で彼女を傷つけることなく、手に持っていたナイフを弾き飛ばそうと試みる。そしてそれは成功した。
「あんた、何者なの!?私はテーラを殺すの!」
「そうはさせない。唯一の生存者だからな!」
「唯一の生存者だからこそ殺したいの!わかるでしょ?」
「いや、残念ながらわからないな。」
僕はそう言って彼女を傷つけることなく腰に巻いたベルトを切り落とす。すると...
「ふーん...。そっちがその気なら手加減は無しよ!」
「あぁ、望むところだ!」
「ぶっ殺したげる!」
彼女はそう言った。と、思った次の瞬間には、僕は彼女に首を絞められている。 逃げたい。でも体が動かない。もがくことすらできない。くっ...!ここで死んでしまうのか?
私は苦しむリドナーを見て耐えることができなかった。震えながらも切り落とされたベルトからナイフを抜き取り、オーロラの足を刺す。すると、彼女はあまりの痛さのあまり、リドナーを解放した。すると彼女は、
「やったわね!」
と言い、2本のナイフを持って襲いかかってくる。私はその2本のナイフを、自分の持っていた1本のナイフで弾き飛ばす。
「くっ...!」
「小さい頃からナイフの練習をしてきた私に勝てるとでも?」
と言うと彼女は首を絞めようとしてくる。しかし...。
リドナーがその手をつかみロープで縛る。すると、オーロラの目が赤くなる(と言っても充血したいるわけではなく、彼を操ろうとしているようだった)。
「あなた、強いわね。私に従ってもらおうかしら?」
私はその男を赤い目で見つめ、従わせようとした。しかし、彼の目は赤くならない。おかしい。赤くなるはずなのに...。まさか、コイツそんなに強い意志を持っているの!?
「タクシーが来た。早く行け!」
と彼は言っている。
「うん!」
テーラが返事する。そしてテーラは校門に向かって走り出した。痛みに耐えながらも。そして校門の外には馬車。あの子あれで逃げる気ね!
「待ちなさいっ...!」
私は魔法を使ってロープを断ち切る。そして、空気から剣を作り出し、目の前の男を切ろうとする。が、剣は弾き飛ばされたうえに地面に叩きつけらられる。私は受け身の体制を取ろうとする。しかし、できない。なら頭だけでも。私は頭を浮かせる。首元に剣先が向けられる。そして、彼は言う。
「1つだけ情けで教えてやろう。テーラさんは君の彼氏の...」
全て聞き終わる前に私は彼を払いのける。そのときにはもう馬車の姿はなかった。
「テーラ、絶対殺したげる!」
私はそう言い、ジャックの家に向かって走り出す。
長文ですみません(。-人-。)
これからも長文であることが多いと思いますのでご了承のほどよろしくお願いいたします( `・∀・´)ノ