どん底から20年目
西暦2035年 山田耕一、45歳
「あ~、この年になって、僕にこんな幸せな日々がくるなんて!」
45歳にして、ぼくは遅ればせながら、結婚した。
本当に幸せだ。妻は大学院で発電の研究をしている、才女だ。
僕の小説は軌道に乗り、世界でベストセラーとなり、その印税などで新しい発電システムの開発に取り組んでいた。
そのときに僕は彼女と知り合った。彼女を意識しだしたのは、僕の小説のファンであることを、僕がその作者本人であることを知らずに何かの話の流れで彼女が熱く語ってくれたことがきっかけだ。
それからは年甲斐も無く、奥手の僕が出来る精一杯で彼女にアプローチし続けた。
彼女が僕のプロポーズを受け入れてくれたときの感動は今も鮮明に覚えている。愛する人がいる。そして、その人も自分を愛してくれている。この単純な事が人間に引き起こす幸せ感とはこんなに素晴らしいものなのかと、ひしひしと実感している。
もう無理だと、あきらめかけていた結婚。しかし、神は僕を見捨ててはおられなかった。遅すぎたのでは無い。むしろ、一番いい時期に、一番素晴らしい人を僕に準備してくださっていて、与えてくださった。
僕の将来のビジョンを理解してくれて、そして、助けてくれる。
そして、今、彼女のおなかの中には、僕たち二人の子供がいる。人生が薔薇色とはまさに今の僕だ。