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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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龍介、家族の過去を聞く

京極が鸞からのメールを読んで笑っている。

あれから1週間後には気管支炎は完治し、フランスに戻り、加奈と新婚さんの様な生活を送っていた。


「どうしたの?鸞ちゃん?」


「そう。カキ氷って初めて見たんだよな、あいつ。」


1番初めは『大きいよね!謎の抹茶宇治金時です!』と書いてあったので、京極が、『それはちょっと日本語が間違っていて、抹茶の事を宇治とも言うから、そのメニューは重複してる。金時は餡子の事だ。』と教えると、納得した風で、少し食べては美味しいとか、暑さも忘れてきたとかいい事が書かれてあったが、半分になってきた頃の写真になると、寅彦に買って貰ったウサギのぬいぐるみが、鸞の代わりに寒そうにタオルを被っていたりしているのと一緒に写され、飽きてきたかも、寒くなってきたわなどと綴られている。


「可愛い。でも、どうしてそんなマメに喫茶店風の所からメールしてくるの?」


「寅と瑠璃ちゃんに付き合って、アキバに行ったらしいんだが、いかんせん退屈になっちまったらしく、退屈してないよと強調してから、入ったんだと。」


「んまあ~、寅ちゃんたら。デートにアキバは無いでしょ!」


「いいんじゃねえの?毎日会ってるみてえだぜ?付き合わせでもしなきゃ、行きたい所も行けねえじゃん。」


「そうでもそんな。あんな所、用の無い人は面白くもなんとも無いわ。」


とか話しながら仕事をしている加奈に、龍介達は病気で会う事はなかったアキバという仇名の情報官が、悲しそうに言った。


「あのう…。僕何してればいいんですか…。」


アラン達が吹き出す。


「アキバ、お前帰った方がいいよ。加奈ちゃん居たら、情報官はもう要らねえよ。冬休みんなったら、寅も来るって言ってたし、お前の出る幕は無えな。」


御手洗に言われて、真っ青になって、京極に縋り付く。


「組長!そんなの嫌です!僕、やっと憧れの京極組に入れたのにいい~!」


京極はアキバをいつもの魅惑的な目で見つめて、微笑んだ。


「ーお前、まだ若いしさ。他んとこ行った方がいいんじゃねえか?」


「確かに僕は、加奈さん見てても、あの寅彦君という中学生の男の子の仕事ぶりを聞いても、組長の欲しい所がまだ分かってませんが、努力しますからあ~。」


「お前はさ、他の所行きゃあ、優秀な奴って言われるレベルなんだよ。だから、他行った方が幸せだって。」


「そんなの嫌ですう~!僕は京極組に入りたくて、図書館から情報局に入り直したんですからあ~!」


京極は笑いながら立ち上がると、アキバの肩をポンと叩いた。


「ま、荷物まとめとけ。イギリスに空きがあるらしいぜ。もしかしたら、真行寺組復活かもしれねえ。」


「え…。真行寺組?本部長、復帰されるんですか?」


「噂だけどな。イギリスのチーム、なんかあったらしくて、壊滅状態。だからって、直ぐに代わりが送り込める所でも無い。あそこはMI6とか、5とかとパイプが無えとちと辛い。というわけで、パイプ持ってて、咄嗟に行けるってえと、局長か本部長の真行寺だけ。局長が兼任する訳には行かねえから、真行寺じゃねえのかなって話。」


それを聞くと、アランが唸った。


「ーでもそりゃかわいそうだな。折角Jrやしずかと暮らせる様になったのに。」


「連れてきゃいいんだよ。んな義理なんか…。」


と言いながら、京極は黙ってしまった。


加奈が心配そうに見つめる。


「ー真行寺さん、やっぱり加納さんに義理立てしてるのね…?」


「はっきりとは言わねえけどな。ほっといたら、結局割り食っちまいそうだ…。」




龍介は夏休みの終わり頃、亀一ではなく、優子に話があると言って、遊びに来た。


「何かしらん?」


期待に満ち溢れて聞く優子を亀一が笑う。


「お袋、多分期待通りじゃないと思うぜ?」


「分かってるわよっ。で?なあに?龍くん。」


「あのさ…。母さん達の周りの人って、かなりの数死んでるじゃん?

みんな事故って話だけど、調べてみたら、母さんの両親。

京極さんのお袋さんと妹さん、おじいさん。

父さんのお袋さん、つまりうちの婆ちゃんとひいお祖父さんて、全員同じ年月日に亡くなってたんだ。

それから暫く開いて、夏目さんのお袋さんと妹さん、美雨ちゃんの両親、加来さんのご両親が亡くなってる。

母さんに聞こうかとも思ったけど、なんか聞き辛くて…。」


「そうね。それは聞き辛いよね。」


「うん。後さ…。

お父さん、イギリスに赴任しなきゃならなくなったみたいなんだ。

だから、離婚させて、俺と母さん連れて行けって爺ちゃんが言ったんだけど、いいって言ってるらしいんだ…。

今までだって、こんな変な生活してたし、それもなんでなんだろうと思って…。」


「龍くんはどうしたいの?」


「俺は…。正直分からない。爺ちゃんと離れるのは嫌だし、苺達も残していくのは心配。かと言って、お父さんとまた別々に暮らすっていうのも、俺としても、もう嫌だし、それじゃお父さんがあんまりにも可哀想で…。」


「そうね…。じゃあ、長くなるけど、全部説明するわ。」


興味津々で一緒に聞いていた亀一が首を傾げた。


「なんで長くなんの?」


「龍太郎君としずかちゃんていうのも、また深い繋がりがあるのよ。だから話は相当遡らないと、よく分からないと思うから…。」


「そうなんだ。じゃ、俺もじっくり腰据えて聞こう。」


そこから優子の話が始まった。

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