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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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日本の最終兵器?

「東国原、アレ出せ。」


「了解。加納、出番だ。」


「了解。」


無線越しに聞こえた龍太郎の返事に、龍介が青くなる。


「じ、爺ちゃん、父さんて…。」


「こっち来させねえようにしただけマシと思ってくれ、龍。

和臣なんて、まだ宣言すっからマシな方だ。

あいつなら、有無を言わさず、ミサイルぶち込んじまう…。」


「う…。」


「龍可愛さで、1番頭おかしくなってんの、あいつだからな…。」


嬉しいような悲しいような…。

それ以前に、専守防衛の自衛官がそれでいいのかという不安があるが。


加奈が龍太郎の乗る戦闘機の搭載カメラの映像を、制御室の大きなモニターに出した。

龍太郎は近場の空で待機させられていたらしく、直ぐ目前に迫るミサイルを捉えると言った。


「GKT発射!」


GKTとはなんだと誰もが思ったが、見た瞬間に分かった。

なんだかゴツゴツとした妙な形の銀色の大きな弾が発射され、ミサイルにボコンと当たった。


「ゲンコツかあ…。」


龍介が呟くと、龍彦が悲しそうな顔で言った。


「龍介、言わないでくれ…。」


「ご、ごめんね、お父さん…。」

龍彦も分かってしまい、それが悲しかった様だ。


殴られた事で、ミサイルは上を向いた。

そのまま上昇するミサイルを、逆噴射で追う龍太郎。

これだけでも凄いが、龍太郎はミサイルが軌道修正をしてしまう前に上昇しながら言った。


「3316-T-M発射。」


すると、戦闘機からミッキーマウスの手の様な物が飛び出し、両手でミサイルをむんずと掴んだ。


「3316-T-M…?ああ!ミサイル捕まえて無効!?」


龍介が分かった喜びで言うと、龍太郎は作戦中にも関わらず、嬉しそうに言った。


「流石龍!その通りだよ!」


確かにミサイルは大人しく捕まったまま、もう炎は上げていない。


「そんで親父、これどうすんの?双葉の本社にでも、ぶち込んでやろうか!?」


「ぶち込んでどうすんだ、ばかたれがっ。大事な証拠品だ。壊さず持って帰れ。」


「はーい。じゃ、龍、後でね。今日は早く帰るからね。」


「うん。」


龍太郎の戦闘機は、ミサイルを手に持つというシュールな絵面のまま飛び去った。



「よし、終わった!お疲れ!」


竜朗がそう言った途端、一斉に、大人達が奪い合う様に龍介達を抱きしめたり、頭を撫でて揉みくちゃにし始めた。


一際凄まじいヘッドロックをかける竜朗の目の端には涙が浮かんでいる。


「本当、頑張ったな…。爺ちゃん、龍の爺ちゃんで幸せだぜ。」


真行寺の目にも涙。


「本当だ…。龍介のお陰だ。よくやった…。」


そして龍彦を見ると、号泣して、寅彦を揉みくちゃにしていた京極にゲラゲラと笑われていた。


「お、お父さん…。ごめんね、心配かけて…。」


「もう死ぬかと思った!心臓止まるかと思った!凄え怖かった!無事で良かった!よく頑張った!」


ビービー泣きながらそう言って、龍介を抱きしめると、佳吾が笑いながら言った。


「1番平気な顔して、しずかちゃんや私、義兄さんを慰めていたくせにね。相変わらず面白い子だ。」


「佳吾、40過ぎてんだから、子は無いだろう。」


「そうは言っても義兄さん、私の中では、龍彦は子供の時と、良きにつけ悪しきにつけ変わっていませんよ。」


「そうかもなあ…。1番大変なティーンエイジャー時代を、お前に育てて貰っているからなあ…。」


そこへ、遅れて優子が来た。


「亀一、本当に良かったわ…。お疲れ様…。」


亀一を労いつつ、ほっとした様子で抱きしめる優子の背後には拓也も居て、一緒に亀一に抱きついている。

それにしても、優子は疲れ切った顔をしていた。


「優子ちゃん、大丈夫?顔色が悪いわ。」


しずかに続いて、和臣も心配そうに見つめる。


「そうだな…。久しぶりで疲れたか?」


「いいえ。戦闘での疲れじゃないの。あんな素人相手、大した事無いわ。それよりね…。」


優子が言葉に詰まったので、拓也が代わった。


「あの、柊木さんて人、凄くてさあ。

保護された後も、きゃーきゃーピーピー。

合間で龍さんの名前叫んだりして、もう、うるさいのなんの。

お母さんが必死に(なだ)めるけど、全然聞かないし。

頭来たから僕、あの注射打っといた。」


「ーえ…?」


和臣と亀一の顔が、そこまでという程、真っ青に蒼ざめた。


「おま、お前、あの薬…。お前試しに打ったら、3日も起きなかったじゃねえかよ!」


亀一が問いただすと、ニヤリと笑った。


「それぐらいが丁度いいんじゃないの?

あんな煩い人。

永遠に眠って貰ってもいいよ。

僕、お兄ちゃん達みたいなフェミニストじゃないもん。」


今度は和臣が叫ぶ。


「お前、フェミニストとかそういう問題じゃないだろお!?

あの薬、お前にとっては、かなり素晴らしい発明品だとは思うが、何を測定しても、どうやっても、死んでる人間にしか見えねえってやつじゃないかよ!

一種の仮死状態作るヤツだろう!?

そんなもん打っちまって、死体と勘違いされて、処理されちまったらどうすんだあ!」


知らぬ間に、拓也は物凄い発明品を作っていたらしい。

呆然と見守る竜朗達の前で、家族の言い合いは続く。


「いいんじゃないの?その方が世の為、人の為、龍さんの為だよ。あんなの。」


「ーだから私、まりもちゃんが、死体として処理されないように根回ししたり、保管場所考えて、東国原准将に説明したりでもう…。」


「で、どうすんだ、優子…。」


「取り敢えず、柊木診療所の方に運んで貰う様にしました。

ご両親には柊木先生から説明して下さる事に…。」


「拓也ー!」


珍しく和臣が怒り出す前に、拓也はどさくさに紛れて、龍介に抱きつきに行ってしまった。




龍彦と京極夫婦は、その日の夜には、仕事が残っているからと帰ってしまった。

今度は戦闘機でなく、普通の飛行機で。


「組長って、戦闘機も操縦できんだ。凄えな。」


見送りに行った龍介が言うと、竜朗が笑った。


「たっちゃんも出来んのよ?イギリスとフランスから飛ばして来たんだよ。」


「へええ。そうなの?」


今度は佳吾が答える。


「エージェントでも、希望者は自衛隊で戦闘機に乗る訓練が受けられてね。京極君と龍彦はそれを受けたし、仏軍にも英軍にもコネがあって借りられたからね。」


「借りてここまで来られるんですか。」


「うん。そこら辺は長岡君と龍太郎君が便宜を図ってくれたんだ。

こっそり良いもの付けて返すからって事で。」


「なるほど…。あ、ところで、お父さんの誘拐事件てなんですか。」


龍介が聞くと、さっきまで龍彦と涙の別れをしていたしずかが、涙を拭きながら言った。


「私もお聞きしたいですわ。」


事件関係者と見られる、竜朗、佳吾、真行寺の3人が苦笑し、竜朗が言った。


「そんじゃ、飯食いながら話しましょうか。顧問。」


「そうだな。」






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