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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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会長確保…だが…

作戦開始時刻、龍彦達と別れ、竜朗としずかは、最上階の会長の部屋へ向かった。


「ここは立ち入り禁止ですよ!?」


と言って来る兵士達を問答無用で銃で眠らせ、階段を駆け上がると、バンバン撃ちながら、弾倉を変えつつ走るという神業で、会長の部屋に辿り着いた。


会長は、梅村と他の士官にしている男達と食事をしようとしている所だったが、外の騒ぎと、竜朗達がいきなり乱暴に入ってきた事で、立ちあがっていた。

竜朗としずかは、他の士官達が胸に手を入れ、銃を取り出す前に撃ち始めたが、梅村ともう一人の士官は、他の士官を盾にして、会長を守りながら奥の部屋に入ってしまった。


奥の部屋の扉は、防弾の二重扉だった。

流石に佳吾が使ったランチャー型のBD58971-D51-改では、奥の部屋から向こうが全部吹っ飛び、当然、会長は生きて確保は出来ない。


戦後の日本初とも言える、この国家内乱罪の罪人は生きて確保しなければならなかった。


それは、洗いざらい調べなくてはならないのが1つ。

彼は単なる一般庶民ではない。

日本を代表する総合企業の長である。

自衛隊の兵器その他を私的流用という罪の他、白日の下に曝さねばならない罪科が山積みだった。


そしてもう一つは、ここで彼が死んでしまっては、殉教者になってしまうという恐れがあるからだった。


後々、こういった思想を元に、過激な集団はまた出てくるかもしれない。

その時、突入した警察関係者の手で死んだら、彼は殉教者として崇め祀られてしまう。


それは絶対に避けなければならない。

彼は英雄では無く、犯罪者なのだから。

歴とした犯罪者だと世に知らしめなくてはならないのだ。

学生運動の暴徒鎮圧と同じセオリーである。


IH砲で焼く事も考えたが、ランチャーと同じ事になってしまうので、竜朗達は、龍太郎が今回の為に作った、小型IH銃で扉を焼きにかかっていた。


その時に、東国原から無線が入ったのだった。


その時、寅彦が言った。


「その奥の部屋、コンピューター制御室かもしれません。

他には一切コンピューターの信号は出てねえし、その部屋からは何も出てない。寧ろ怪しくないですか。」


竜朗が無線で答える。


「だと思うぜ。

あいつらがここ入ってからだもん。ここの防弾壁が立ちあがったの。

寅、加奈ちゃんが今、こっち向かって来てくれてるが、奴ら、ミサイル持ってんだ。

加奈ちゃんの話だと、すぐ近くからじゃねえと、ハッキング出来ねえっつーんだ。

やってみてくれるか。

まあ手動でやられたら関係無えかもしれねえけどな。」


「はい、やってみます。」


龍介達はそのまま、竜朗達が居る、最上階に向かい、自衛隊と公安警察が乗り込んで来て、大日本帝国軍人間を確保し、武器庫などを次々に制圧し始めた。


龍介達が最上階に到着した時、漸く防弾ドアを焼ききった所だったが…。


「かああー!むかつく!」


汗だくになって竜朗と一緒にドアを焼ききっていたしずかが、憎々しげに言ったのも無理は無い。

その部屋は会長の寝室で、更にまた奥の部屋に同じドアがあったのだった。


「でも、今度は間違いなく制御室です。ハッキング出来ました。」


寅彦の言葉に後押しされ、竜朗としずかに代わり、龍彦と京極、佳吾の3人で焼き始める。


竜朗は龍介に言った。


「顧問が1人でミサイル探し回ってくれてる。一緒に探してくれ。」


「了解。」


龍介が真行寺と無線で連絡を取りながら出ようとした時、亀一が来た。


「きいっちゃん、なんで?」


「出る時は一緒だ。」


ニヤリと笑っていつも通りにそう言う亀一を見て、龍介は嬉しそうに笑うと、亀一と共に真行寺と合流した。

真行寺は屋上で探知機の様な物を手に探していた。


「グランパ、物は短距離弾道ミサイル?」


龍介が聞くと頷いた。


「恐らくな。奴らの工場から持ち運ばれたのはそれだし、それしか作らせていない。

しかし、相当なデカさの筈だ。

直ぐ見つかりそうなもんなんだがな…。

この辺りにでかい空間があるのは分かってるんだが…。」


「そうだよね…。」


3人で探し始め、真行寺が止まった。


「仮に手動でやるとして、あそこに立て籠もったまま出来るとしたら…!」


龍介亀一もハッと気が付き、同時に言った。


「テラスだ!」


会長の部屋の前のテラスはやたらめったら大きい。

ミサイルと発射装置が兼ね備えられているとしたら、頷ける。


3人は屋上から会長の部屋の前のテラスを覗き込んだ。

不自然な大きな鉄板が蓋の様な形である。

亀一がそっと防弾でも透過して見られる探知機を降ろし、探知機がテラスに差し掛かった途端、探知機が一瞬にして撃たれた。


「当たりの様だな。ここだけ防弾壁を立ててない所を見ても、いざという時、テラスに出て、手動でレバーを引く気なんだろう。」


真行寺はそう言った後、竜朗に報告した。


「竜朗、見つけたが、センサーを切らなければ、侵入出来ん。寅か加奈ちゃんを寄越してくれ。」


「すいません。今、2人でミサイルのコンピューター制御のハッキングしてくれてますんで、手が離せねえ状態です。

あと、1分で和臣と加来が到着しますんで、しばしお待ちを。」


「わかった。ありがとう。」


ところが、知らせを受けたのか、猛スピードで飛んで来る何かが、既に上空に現れていた。


「なんだありゃ…。」


亀一と龍介は呟き、ポカンと空を見上げた。

そこには、空の色全てを映し出し、例のUFOの様な外観のステルス型の様に見える戦闘機があった。

この暗がりでは、殆ど見えないと言っていい。

その戦闘機の無線が聞こえだし、龍介と亀一は更にポカンとする事になった。


「ええい!皆殺しだあああ!」


「長岡さん!落ち着いてって!それダメって話聞いたでしょ!?」


「だって、加来さん!俺達の息子の拉致なんて許して堪るかよ!

このまんま、このバルコニーからコレブチ込めば、みんな死んでミサイルの心配も無いんだってえ!」


「いや、だから、それが許されるなら、とうに龍介君にメロメロの顧問がやってますって!

うっ、おええええー!」


「加、加来さん!?今吐いたら、あんたゲロまみれになるよ!?マスクしてんだから!」


「おえええー!だってあんな操縦すんだもん!」


「外すな!マスクをおおお!計器にかかったら、一発でダメなっちまうでしょう!?」


「飲み込めって言うの!?出来るかあ!」


「じゃあ、マスクに吐きなさい!」


しばし沈黙後、屋上にステルス戦闘機が降り立った。

これは日本には無い事になっているし、多分、アメリカにあったとしても、存在を知られていないものだ。


たっぷりゲロの入ったマスクを捧げ持ち、加来が降り、和臣も降りて来た。


和臣は何も言わず、亀一を泣きそうな顔で見た後、龍介をやはり心配そうな泣きそうな顔で見つめると、2人の頭をゴシゴシと撫で、両手で2人をいっぺんに抱きしめた。


今の所、忙しくて誰も表に出さなかったが、日頃穏やかで、怒る事の無い和臣ですら、皆殺しにしたい程の怒りと心配は、みんなが持っているものだろう。

それを言葉でなく、ただ態度で滲み出して来る和臣の優しさは、龍介でもじんとした。

そんな3人を微笑みながら見つつ、真行寺と加来は仕事に入る。


「センサーも…はい。切りました。ミサイルの方ももう少しの様ですね。」


「よし。じゃあ、ミサイルを直接無効化しよう。」


「はい。」


和臣はまたゴシゴシと2人の頭を撫で、4人はテラスに降り立った。




ミサイル誘導システムの方は、寅彦が制御室で行われている操作を邪魔し、加奈が完全に壊すという作業をしていた。


「出来ました!完全にハッキング完了です。」


「よし!でかした!2人共!」


それと同時に、防弾扉も開き、竜朗達が一斉に突入。

会長達は制圧出来たと思った時だった。


龍介達は丁度テラスに降り立ち、駆け出そうとした時だった。

梅村が眠る前の最後の力で、テラスの方に倒れた。

その瞬間、テラスの鉄板が開きだし、弾道ミサイルが顔を覗かせ始めた。

小さいながらも、これだけのミサイルなら、東京都心部は壊滅する。


和臣がミサイルに直接触って、切ろうとしたが、もう火が点いている。


龍介が梅村を転がして梅村の下を見ると、そこには手動のスイッチがあった。


「加納、これで…。」


ランチャー構える佳吾見て、目を剥く竜朗。


「火力アップしちまってどうすんの!吉行!ここで爆発させちまったら、みんな死ぬどころじゃねえだろお!?」


「どこ行くんだ、このミサイルは…。」


龍彦が呟いた。


「ミサイル本体にもプログラミングされてるはずだ!あのミサイルはそれが出来る!」


和臣が言うと、加来達情報官組3人が一斉に取り掛かった。


そして3人同時に割り出して言った。


「国会議事堂…。」


龍介達が和臣に言われ、室内に避難した時、ミサイルが発射された。


「だろうな。仕方ねえ、とうとう奥の手だ。」


そう言って、竜朗は東国原准将に無線を入れた。













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