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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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日本最強部隊、ご到着

総統の言う通り、竜朗達は夕食の前に到着した。


「爺ちゃん!」


竜朗に足まで絡めて抱きつく。

170センチ近い龍介に飛びつかれても、微動だにせず、しっかり抱き締めて笑う竜朗。

梅村達の前で、喜びを表現したかったのもあるが、この後、引き離されたら厄介なので、竜朗の耳元に伝えたい事を言うのが目的だ。


「準備完了。

6時45分に地下1階の部屋のドア、全部爆発する。

混乱に乗じて、俺は全員をここから出す。」


「了解。援護する。」


龍介は暫くそのまま竜朗に抱きついていてみた。

そのまま一緒に居させてくれるのではないかと考えたからだ。

梅村達は極端に龍介に甘い。


予想通り、梅村は龍介に言った。


「大好きなお爺さんなんだね。このまま夕食まで一緒に居て、皆さんで食堂に降りていらっしゃい。」


してやったり。


「有難うございます!」


梅村には子供らしい可愛い笑顔に見えているが、竜朗達には、悪企みの笑顔にしか見えない。

流石しずかの息子。

蜜柑の兄。


龍介達は部屋に入ると、監視カメラの無いのを全員で数秒もかからず確認するなり、一斉に持ってきた大量の荷物を開けた。

中には防弾ベストの他、USPという、龍介が一番使い慣れた銃から始まり、手榴弾、自動小銃から謎めいたランチャー状の物まであった。

そして寅彦の愛機、ダイナプロも。


「寅に渡して来る。」


「そうしてやって。寅の武器だからな。」


京極がそう言うと、龍介は持っている情報を早口で、防弾ベストを着つつ、準備に入っている全員に伝えた。


「地下2階と4階は武器庫です。

射撃練習場は、地下2階半分を使った面積なので、メインは地下4階の方だと思います。

地下5階は、さっき梅村に、射撃練習場に連れて行かれた時に見せて貰いましたが、戦車などの大型武器が入っている様です。

自衛隊配備の重層装甲機動車10台。

96式装輪装甲車ー改が30台。

まだ増やすと言っていました。

残念ながら、4階の武器庫はチラッとしか見られませんでしたが、ランチャーが500はあった様に見えます。

他、自動小銃は1000以上。

その他、マシンガンなども同様に。

地下2階には、USPなどの小型拳銃が多数。

マシンガンも500は置いてあり、弾薬は全て地下2階にあります。」


「凄え、凄え。よく見てきた。」


龍彦が嬉しそうに頭を撫でる。

竜朗も誇らしげだ。


「そんじゃ、作戦開始時刻は6時45分。で?なんで6時45分なんだい、龍。」


「各部屋の見張りの指導員の奴らは、6時40分に、食事を持って来る為に部屋から出て、6時55分に食事持って、帰って来るんだ。

出て行ったと同時に、全員に渡してあるきいっちゃんが作ったミニ爆弾を設置。

離れた所で待機し、きいっちゃんが起爆させんのが6時45分。」


「なーるほど。」


「寅は食事は食堂になったし、監視も緩くなったから、6時半には自由時間になるからコレ届けて、きいっちゃんの部屋に居るね。」


「ではこれを。」


佳吾が無線を3組渡した。


「有難うございます。」


竜朗がニヤリと笑って、龍介の肩に手を掛けた。


「じゃ、俺たちの作戦内容を話しとく。」


「はい。」


龍介は龍彦が自慢に思う余り、踏ん反り返り過ぎてひっくり返りそうになる程、1度聞いただけで、正確に作戦内容を把握し、紙袋にダイナプロと2人分の防弾ベストとUSP、弾薬を入れ、しずかが持って来てくれたカモフラージュの為のお菓子類で隠し、寅彦の部屋に行った。


「ほんと凄えな、あの子は。今のままで立派なエージェントだ。」


京極がお世辞でなく、心からそう言って感心していると、銃の確認をしながら龍彦は笑った。


「京極家の血も入ってるしな。俺より凄えよ。」


すると、佳吾と竜朗が、同様に銃の確認をしながら苦笑して首を捻った。


「いや、俺はあの一件は忘れられねえぜ?たっちゃん誘拐事件。」


「ええ?また古い話出しますね、お義父さん。」


真行寺も苦笑しているが、しずかと京極はキョトンとしている。


「何それ。俺知らねえ。教えてよ、顧問。」


真行寺に言うと、真行寺は困った顔で笑いながら短く答えた。


「コレ終わったらな。龍介も佳吾にサラリと聞いて、聞きたがっていたから。」




龍介は寅彦の部屋の前で、寅彦担当の大塚とすれ違った。

大塚が大きな紙袋に足を止める。


「何それ。」


龍介は紙袋を広げ、中身を見せながら子供っぽく言った。


「お菓子です。母が寅やきいっちゃんにって持って来てくれたので、届けにきました。」


「そうだよな。正直食事だけじゃ足りねえもんな、俺たち。」


「そうなんですよ。母も食べ盛りだからって気になってたみたいで。」


「いいお母さんだな。可愛いし、羨ましいよ。」


確かに大塚の母は、超おばちゃんな人だった。


適当に挨拶し、寅彦の部屋に入る。


「寅、届いたぜ。寅の武器。」


そう言って、お菓子類を乱雑に取り出し、ダイナプロを出すと、寅彦は目を輝かせてダイナプロを抱き締めた。


「嬉しい事言ってくれるぜ。俺の武器だなんて。」


「京極組長がそう言ったんだ。確かにそうだなと思って。」


「んふー。流石俺の組長。」


嬉しそうに言いながら、早速ダイナプロを起動させる。


龍介は寅彦に無線を装着させ、防弾ベストを着させている。


ネットを繋ぐと、直ぐに加奈の通信が入った。


「お、加奈ちゃん、外からサポートに入ってくれてる。へいへい。武器庫のロックね。分かってますよ。龍、もうやっていいのか、コレ。」


「いいぜ。お願い。じゃ、俺、きいっちゃんの所行って来る。」


「ーあ。」


また亀一の分の防弾ベスト類をお菓子で隠して出ようとすると、寅彦が龍介を見た。


「ん?」


「柊木、どうすんの?」


龍介の顔が蒼ざめた。


「龍…。もしかして忘れてたのか?」


「いかん…。作戦立てるのに夢中になってて、うっかりしてしまった…。

爆弾仕掛ける手配までは、覚えてたんだけどな…。」


「あいつも爆弾仕掛けるのか?」


「まさか。あいつの事だ。

『6時40分にあの人が出たら、これをドアの所に置いて、離れて~。』

とか、ずっと言ってたらシャレになんねえだろ?

だからそん時に除外しちまって、それっきり考えて無かったな。

仕方ない。

きいっちゃんに付いてようかと思ったが、柊木に付いてねえとパニック起こされても面倒だ。

作戦開始時は柊木の所に居る。」


「了解。」


龍介は亀一の部屋に入り、伊藤少尉に用件を伝え、追い出すと、ニヤリと笑った。


もうそれだけで亀一には分かった。


「ご到着か?日本最強部隊は。」


「おう。きいっちゃんもコレ着て、USPも持っといて。無線もね。」


「サンキュ。」


嬉しそうな亀一の顔色を見る。

もう大丈夫そうだ。


「きいっちゃん、もう直ぐ終わるからな。」


「ああ…。龍、ほんと有難う。お前のお陰で正気でいられた。」


「またそういうらしくねえ事言う。あ、そうだ。俺、柊木忘れててさあ。」


亀一の片眉が上がった。


「それ、マズイだろ…。あいつ1人で作戦ぶち壊せるぜ…。」


「うん。

だから、作戦開始まできいっちゃんと居ようと思ったけど、柊木の所に居る。

ごめんな、1人で大丈夫か?」


亀一は笑った。

無理していない笑顔だった。


「大丈夫だよ。龍、言ったじゃねえか。1人じゃねえって。

それでここまでやって来れたんだ。

俺はもう大丈夫。柊木押さえとけ。」


「ありがと。じゃあ、柊木の所に行ってます。」




龍介は女の子が好きそうなビスケットやチョコレートを手に、今度はまりもの部屋へ行った。

やはり龍介が来ると、何の疑問も持たずに、指導員は感じ良く出て行く。


ーこいつら、ほっといたって、クーデターなんか起こせねえな。

この甘さだもん。

俺ならもっと完璧にやるし、こんな拉致して教育なんかする手間は省くぜ。

割に合わねえじゃん。

こんな非効率な事やる事自体がもう駄目だな。


「ああ!加納君!毎日来てくれるって言ったのに、昨日は全然来てくれなかったじゃないのー!抱っこして!お詫びに抱っこして!」


ーああ、もう…。


龍介はまたも苦悶の表情で両手を広げた。


「来い。」


「えっ!?いいの!?どうして!?」


「どうしてもへったくれもねえだろ。お詫びに抱っこしろって言ったじゃねえかよ。」


「あ、また聞こえっちゃったの!?まあいいや!」


そして龍介に抱きつき、胸に顔を埋め、ニタニタ…。


「もういいかー。」


「ええ?もう終わりなのお?」


「お前なあ…。」


「あ、はい…。」


まりもを椅子に座らせ、チョコレートやビスケットを渡し、取り敢えず食べさせて落ち着かせてから話す事にする。


「これどうしたの?外国製だわ。美味しい。」


「実はうちの爺ちゃん達を呼び寄せられた。」


「ええ?!そんな事できるの!?

あ、それにその制服、あいつらと同じ…。

あれ?加納君、太った?」


「細かい説明は省くけど、ここを出る為に、爺ちゃん達を招き入れる目的で、奴らに気に入られる様に、洗脳されたフリをしてた。

その爺ちゃん達が、さっき到着したんで、遂に作戦決行だ。

ちょっとした爆発が起きるが、害は無えから、安心して俺から離れるな。

そして何が起きても騒ぐな。

因みに太ったのでは無く、防弾ベストを着ている。

以上。分かったか。」


まりもは流石に頭はいいので、理解できた様だ。


「そうなんだあ。有難う、加納君。流石だなあ。そんな作戦全然知らなかった。」


「お前に言うと、心の声でバレバレだろ。」


「それはそうね。ごめんなさい、役に立たなくて。」


申し訳なさそうに項垂(うなだれるまりもを見つめると、優しく微笑んで頭を撫でた。


「いいんだよ、お前はお前で。その正直で素直な所がお前の長所なんだから。」


途端に晴れやかににやけるまりもの顔。


「優しいー!素敵ー!どうしてこんなに優しくて、紳士で、格好いいのおー!?

もう唐沢さんが居ようが、私、諦めない!

加納君が好きいいい~!!!」


龍介の顔は、笑顔のまま引きつって固まった。


ーこいつは…。女じゃなかったら、落としてえな…。マジで…。







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