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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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自然からのクリスマスプレゼント

龍彦と一緒に長岡家に行くと、長岡家の窓ガラスに、矢張り、この4体と同様に変顔になって、べったり顔を押し付けて中を見ていた大人の狸モドキが居た。


「おい。こいつら探してんじゃねえのか。」


龍彦が声をかけると、大人狸モドキは振り返り、喜んでいる様な感じで、両手を挙げて駆け寄る仕草をし、4体を抱きしめた。

4体も嬉しそうに、この大人狸モドキに抱き付いている。


「親子なんだろ、多分。」


龍彦が言うと、大人狸モドキは頷き、龍彦と龍介にぺこりと頭を下げた。


「やっぱりな。家族構成っぽいなって思ったんだ。」


「そうだったのか…。流石お父さん。」


「でもねえよ。こいつらの正体は分からない。さて、次行くぞ~。」


龍彦は、呆気に取られている亀一達に手を振り、全員引き連れて、今度は悟の家に行った。


大きさから行くと、悟の家に居たのは、母親の様だ。

矢っ張り、窓ガラスにへばりついて、変顔で中を覗いており、悟と悟の父以外の家族が、部屋の隅で震えて固まっている。


龍彦が声をかけると、同じ反応で再会を喜び合い、龍彦にぺこりと頭を下げた。


「という事は、朱雀と瑠璃の所にいるのは、1番下の子かあ。」


「そうだろうな。しかし、なんだってみんなして変顔で窓ガラスにへばり付くんだかなあ…。人間の家に入っちまって、はぐれた事でもあんのかな。」


すると、父親らしき狸モドキが頷いた。


「そっかあ。子供はあと2人で合ってる?」


頷く母と父。


同様に引き合わせると、狸モドキ達は、龍彦と龍介に礼を言っている様に頭を下げると手招きした。


ついていってみると、加納家の前の林に入って行き、壊れたソリの様な物を指差し、龍彦を拝んだ。


「ーこれを俺に直せと?」


頷く狸モドキ達。

ソリの様な物は、座席が4つある箱型の物が2つ転がっており、どうも繋がっていた様だ。


「これが壊れて、家族全員吹っ飛ばされて、バラバラなっちまったのかな。」


龍介が呟くと、また狸モドキ達は頷いた。


「前にも壊れてこういう事になった時、人んちに入っちまったりしたのか?

それで窓にへばり付いて中見てたのか?」


龍彦が聞くと、父親狸モドキが頷きながら、ちっちゃい狸モドキを抱きかかえて、連れ去る様な身振りをした。


「攫われちまったのか、この子を。」


激しく頷く狸モドキ達。


「そりゃ心配だな…。じゃあ、ちゃんと壊れない様にしないと…。」


龍介は既に動きながら言った。


「じゃあ、俺、工具持って来るよ。」


「うん。」




戻って来た龍介は、苺と蜜柑を連れて来ていた。


蜜柑と苺はどれどれとソリを覗いて、バッと龍彦を見た。


「おっきいにいに…。」


「ん?どし…。」


修理をしようと、よくよく見た龍彦も固まった。


ソリはほんの数センチだが、確実に浮かんでいる。


「なんだろ、コレ。なんで浮かんでるんだろ。」


蜜柑がそう言いながら、ソリをひっくり返し、方々見たが、ソリは木製の単なる箱で、動力になる様な物は何もついていない。


「うーん…。」


4人で唸ってしまいながら、取り敢えず修理に入った。

二度と後部のソリとの繋がりが切れて、落ちる事の無い様に、しっかり直す。

完全に直って、ソリが繋がると、ソリは地上から40センチ位のところまで浮かんだ。


何がなんだかサッパリ分からないが、狸モドキ達はまた丁寧に4人に頭を下げると、龍彦に小さな巾着袋を渡した。


「お、お礼はいいよ…。なんか嫌な予感するから…。」


しかし、グイグイと龍彦に押し付け、再び頭を下げると、前の部分に両親とチビ達が乗り、後ろのソリに、加納家に来た四体の子供狸モドキが乗った。

そして、父親の狸が巾着袋からキラキラした粉の様な物を掛けると、ソリは一気に上空へ上がり、キラキラを撒き散らしながら飛んで行った。

思わずボケーっと眺めてしまう4人。


「何だったんだろう…。あの狸さん…。」


苺が言うと、龍介と龍彦も唸ってしまったが、蜜柑は自信満々で言った。


「妖精!」


龍彦が首を捻りながら変な顔で笑った。


「よ、妖精?妖怪じゃなくて?」


確かに、妖精というには見た目も悪いし、しずかのスカートの中に入ったり、鼻をほじったりと、マナーも悪い。

妖精は綺麗で小さいというイメージしかないと、ちょっと結びつかない。


「俺も妖怪だと思ったけど?」


龍介まで言うと、苺が反論した。


「にいに達は、みんなによく知られてるティンカーベルみたいな可愛い妖精を想像してるんでしょ?

そういうのだけじゃなくて、妖精にはゴブリンとか、見た目も悪どそうで、意地悪とか、悪い事ばっかりする妖精とかも居るし、妖精は大体がいたずら好きって言われてるの。」


「へえ…。確かにいたずら好きだったね…。」


龍彦が納得してくれ、龍介もそっかと言うと、双子は満足そうに頷いた。


帰りながら龍介が呟く。


「妖精かもってのは納得行ったけど、でも、みんなに見えるなんて、不思議だな。しかも吐いてたし。」


「蜜柑、分かんない。」


「苺も~。」


そして蜜柑は龍彦の手の中にある、巾着袋を目をらんらんと輝かせて見つめた。


「おっきいにいに、それ、飛べるんじゃないかな…?」


龍彦は慌てて、ジーンズのポケットの中に巾着袋を押し込んだ。


「いや、違うよ!きっと狸になっちまうんだ!

大体、昔話の世界でも、狸は人を化かすっていうし、ロクな事しねえから!

これは使っちゃダメだよ!?

いいね!?蜜柑ちゃん!」




「蜜柑ちゃんや苺ちゃんが使ったら危ないし、また何かやらかすと、お義父さんが泣いちゃうから、これは念入りに隠そうと思う。」


就寝前にそう言う龍彦から、全ての話を聞いたしずかは、相槌を打ちながら、龍彦が隠す様子をじっと見ていた…。




翌朝、龍彦がまだ寝ている時間、蜜柑が入って来た。

足音を忍ばせ、物音を消しながら、一生懸命巾着を探している。

龍彦はその様子があまりに可愛く思えて、とうとう笑い出した。


「う…。おっきいにいに…。」


「蜜柑ちゃん。諦めなさい。俺の隠した物、見つけられた人は居ないんだから。飛んじゃったら、危ないでしょ?」


「あい…。」


しかし、龍彦はその直後飛び起きる羽目なった。


「おわあああ!しずかちゃん!?」


「母さん!?何やってんの!?」


「わーい!ちょっと優子ちゃんとこ行って来るー!」


竜朗と龍介の叫び声で庭に出ると、しずかが上空を飛んでいた。

意味があるのか無いのか不明だが、両手を羽の様にバタバタさせている。


「しずかあ!?降りて来なさい!危ないでしょう!」


龍彦が言うと、バツが悪そうに目を逸らした。


「大丈夫、大丈夫!」


そして飛び去って行ってしまった。


しずかの飛び立った付近には、空になった巾着袋が落ちていた。

龍介はそれを拾い上げ、諦め顔で言った。


「全部使い切ってるぜ…。粉の効力がどれ位なんだか知らねえけど、少なくても、今日一日は帰って来ねえよ…。」


龍彦は真っ青な顔で車に乗って、追い掛けて行ってしまった。


竜朗と真行寺は縁側に座って、煙草を吸いながら笑っている。


「しずかちゃんは、元祖いたずらっ子だもん。血が騒いじまったんだろ。」


竜朗が言うと、真行寺も頷いた。

龍介は2人の間に座って、苦笑した。


「子供っぽいんだよなあ、母さんて。昔から。」


苺と蜜柑が空を見上げながら、いいなぁ!と叫んでいる。


「でも、なんだったんだろう、あの狸モドキ…。」


龍介が言うと、真行寺が答えた。


「Xファイルをやる様になって、つちのことか、ケサランパサランとか、そういう不思議な物は確かに存在するんだなとは感じてる。

そういうのが存在出来るっていうのは、自然の力に余裕があるって事なんじゃないかと思うんだ。

だから、地球にも、まだそういう不思議な存在が居るっていうのは、地球もまだ無事で居られるのかなと、少しホッとするね。」


「そっか…。そうだね。クリスマスプレゼントだったのかな。」


「かもしれんな。」




その後、しずかは2階のテラスで洗濯物を干している優子を驚かせ、浮かんだままお茶を飲み、5階の瑠璃のマンションへ行って、瑠璃と瑠璃の母に、飲んでいた紅茶を吹かせ、10階の朱雀のマンションへ行き、朱雀の母に泡を吹かせ、寅之に目撃されて、捕獲されそうになりながら逃げ、龍太郎を呼び出して、華麗?な飛行を見せ、カラスと戦い、スズメを追い掛け、相当満喫した様子だったと、龍彦を始めとする目撃者から聞いた。

夜になって、やっと龍彦に連れられて帰って来た時には、よほど疲れたのか、子供の様に熟睡していた。




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