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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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アレとは…そして…

「アレって何よ、龍…。」


悟の腕に抱きついたまま怯えて聞く朱雀や、さっき質問してきたジョーンズに、龍介が漸く説明し始めた。


「パラレルワールド装置が作動する時の音なんだよ。

しかし、ここ全てがパラレルワールドになる訳じゃねえ。

実際後を尾けてった俺は、同じルートを辿ってたっていうのに、パラレルワールドに行ってる訳じゃない。

そして、肝心の装置も無い。きいっちゃん、という訳で、何が起きてると思う?」


「ーそうだな…。

装置に関しては、サーモグラフィーで計測してみよう。

アレもタイムマシン程じゃねえが、熱は発してた。

で、問題はなんであんな中途半端な現れ方で、尚且つ、こっちには無関係かって事だ。」


「うん。」


「まあ、一応、サーモやってみよう。持って来てあるから。」


こうして話して、亀一が拓也に手伝わせながら調べている間にも、謎の異世界の住人はヒタヒタと歩いている。


亀一がサーモグラフィーの説明を始めた。


「やっぱりだな。

ほら、このブンてあの音がした所、温度が全然違う。

パラレルワールドに、この200メートルの範囲だけ繋がってるって事だろう。」


亀一の説明を聞いていた悟が何かに気付き、悲鳴を上げた。


「どうし…。」


聞いた龍介も途中で固まった。

薄ぼんやりとだが、あの謎の生物が人間だか何かを襲っている様子で、人間の悲鳴が聞こえ、ガリガリと齧る様な、不気味な音がし始めていた。

亀一は栞の耳を塞ぎ、抱き締めて見せない様にし、龍介は無駄と分かっていつつも、パタパタ竹刀で殴りかかった。

しかし、手応えは全く無いまま、謎の生物は人間を食べ終えたのか、またヒタヒタと足音を立てて歩き始め、そして、消えた。


龍介はこめかみに青筋を立てたお怒り顔で、真剣な目をして亀一に言った。


「きいっちゃん…。このパラレルワールドに行こう。」


「龍?」


「だって、いつこっちに実体が現れるか分かんねえじゃん。退治すんだよ!」


「何言ってんだ、てめえは!

パラレルワールドの掟を忘れたのか!

この間のアレックスさん達の所行ったみてえな場合じゃなきゃ、危険なんだよ!」


「だけど、今、目の前で人が食われてたかもしれねえのに!」


「お前のそういう、正義感が強すぎる所は好きだが、今回ばっかはやめとけ!

危険過ぎる!

お前が食われたらどうするつもりだ!」


揉めている2人に、栞と拓也が叫んだ。


「龍さん離れて!龍さんの足元が真っ赤になってる!熱源だ!」


「龍ちゃん!退いて!危ないわ!」


しかし、龍介は退かなかった。


「龍!」


亀一が腕を掴んで引き寄せようとしたが、突き飛ばし、亀一を敢えて遠くにやった。


「アレックスさん達の所行った時と同じだ。

望まれてる。

俺は行く。」


「龍!」


亀一が戻る間もなく、そして止めようとした拓也や悟達も間に合わなかった。


しかし、龍介が消えかかった時、ピョンとジャンプして、スポックが手を振りながら、その地点に飛び込んでしまった。


「スポックさん!?」


呆然と真っ青になる亀一に、ジョーンズが言った。


「スポックが付いていれば大丈夫。」


「ジョーンズさん…。龍達どうなっちゃうの…?大丈夫なの…?」


半泣きで聞く朱雀の頭を撫で、ジョーンズは長いアニメの様な話を始めた。


「実は我々の星でも似たような事があってね…。随分昔の話で、私達は未だ子供だったんだけど…。」




龍介が着いた所は、真夜中の様に真っ暗闇だった。

外灯も点いていない。

確かに川沿いの道ではあるが、龍介達の世界とは風景が全く違っていた。


「スポックさん、どうして…?」


「ちょっと思い当たる事があってさ。龍、隠れよう。」


スポックと一緒に、側にあった家の庭にある物置に隠れた。

その物置は大きな物で、窓があるので、外の様子が見える。

外には変な生物が何体も、行ったり来たりしていた。

その生物は半魚人の様だった。

身体中に鱗があり、顔も魚なのに、腕や足が生え、二本足で歩いている。


そしてヒタヒタいう足音の謎も分かった。


全身ずぶ濡れ状態の上、手足には水掻きが付いているからだ。


さっき襲われていたのは、やはり人間だった様だ。


血まみれの男物と思われる着衣が落ちている。


そして会社員らしき男性が怯えた様に向こう側から歩いて来るのを見つけると、一斉に襲いかかった。


龍介は、パタパタ竹刀を片手に持ち、片手に龍太郎の新作のパタパタレーザーソード持って、スポックが止める間もなく飛び出して行ってしまった。

そして間髪置かず、半魚人をレーザーソードで斬りつけた。

半魚人は緑色の悪臭を放つ体液を出しながら、泡を吹いて倒れた。


ーなんだ、この臭い…。工業廃棄物みてえな臭いじゃねかよ…。


龍介は思わず鼻を覆った。

だが、直ぐに他の半魚人が襲いかかって来る。

左手でパタパタ竹刀で頭蓋骨を思い切り打砕き、片手のレーザーソードで叩き斬るという荒技をやっていたが遂にピンチが訪れた。


レーザーソードが半魚人の身体に食い込み、抜けなくなってしまったのだ。


その機に乗じて、別の半魚人が龍介目掛けて襲いかかって来たが、サイレンサー付きの銃声と共に倒れた。


振り返ると、スポックが銃を撃って、守ってくれていた。


「スポックさん…。」


「ああー、びっくり。撃てるもんだね、練習しとくと。

パパさんに言われた通り、射撃練習しといて良かったよ。」


パパさんとは和臣の事である。


助けてもらった形になった男性が言った。


「本当にありがとうございます…。直ぐにここを立ち去った方がいいです。取り敢えず私の家に…。」




男性の家は、先ほど物置を借りた家だった。


「ただいまー。」


男性が入ると、妻らしき人がバタバタと走って来た。


「あなた!?日が暮れた時間に帰ってきたら危ないじゃない!大丈夫だったの!?」


「ああ、この方達が助けて下さったんだ。」


「まあ…。」


男性の妻は龍介達に、これ以上は無いという程頭を下げて礼を言い、リビングに通してくれた。

男性の妻がキッチンに引っ込むと、男性が改めて話し始めた。


「あなた方はこの辺りの人じゃないですね…。

あいつらに立ち向かって行くなんて…。

本当に素晴らしい勇気だ…。」


龍介は身を乗り出して聞いた。


「教えて下さい。一体どうなっているんですか。あんな怪物がのさばっているなんて…。」


「もう10年になります…。

そこの川が悪臭を放ち出して、急に消えたと思ったら、あいつらが出だしたんです…。

日が暮れ始めると出てくるので、外出禁止令が出ていますし、みんな日が暮れる前に家に入ります。

幸い家の中には何故か入って来ないので…。」


「退治とか、引っ越すとは…。」


「退治は自衛隊や警察が何度も試みました。

でも、その時は消えても、次の日にはまた出てきて、人を食うんです…。

根城にしているのが川や海なので、川に毒を撒いた事もありましたが、無駄でした。

それに、日本に引っ越す場所なんかありません…。

でも、最近は海外でも出だしたそうですよね…。

どこの国からいらしたんですか?

まだあいつらが居ない国ってどこだっけ…。」


龍介はスポックと顔を見合わせた。


この人に言ってもいいかどうか迷ったからだ。


男性の妻は、大きなお腹をしていた。

恐らく臨月だろう。

だからこの男性は心配で、危険を侵して帰ってきたのかもしれない。

男性の妻は、男性と龍介やスポックの分まで夕食を出してくれ、龍介の顔をじっと見つめた。


「何か…。」


「私、あなたの事、夢に見た気がして…。

あいつらをやっつけて、私達を助けに来てくれるの。

異世界から…。」


男性は笑った。


「またそんな子供みたいな事言って。もうお母さんになるんだよ?異世界なんてある訳ないだろ?」


奥さんは信じてくれそうだが、男性の方は信じてくれそうにない。

仕方がないので、今の所は適当な事を言って誤魔化しておく事にした。


夫婦が是非にというので泊めてもらう事になり、お風呂までご厄介になると、客間に敷かれた布団に入った。


「スポックさん、心当たりってなんですか?」


「うん…。昔、僕らがまだ子供だった時、ここと同じ事が起きたんだ…。」


「ー人食い半魚人が出た…?」


「形は半魚人ではなかった。大きな猿。だから僕らは、猿の惑星という映画が恐ろしくて観られない。」


「大きな猿が…、人を食ってたんですか…?」


「そう。原因は全て人間にあった…。」


それからスポックの長くて恐ろしい話が始まった。










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