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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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キノコの目的…

ところが…だった。

龍介の元にも続々とメールだのラインだのが入って来ていたが、竜朗も電話で大忙しになった。


「爺ちゃん、東京の柊木んちも、横浜の大葉んちも周辺全部きのこだって。

グランパの家の周りも来る途中もだって。」


「こっちも情報入って来てる。

どうも全国的なもんらしい。

なんかの陰謀かなんて話も出て来たから、行かなきゃなんなくなった。

ごめんな。」


「いや、いいよ。行ってらっしゃい。」


「でも、その分、こっちでも調べる事んなったから、情報は共有出来る。」


「はい。」


「じゃ、顧問に宜しくな。」


竜朗が龍介の頭を撫でて行ってしまった直後、真行寺と亀一が来た。


蜜柑は外に出て、きのこ触りたくてウズウズしているが、ポチが玄関で見張っており、出ようとするだけで、吠えて龍介に知らせるから出られず、外を気にしつつ、リビングで苺と遊んでいる。


ネットでずっと調べていた寅彦が、パソコン画面を見せながら言った。


「日本全国だけじゃないぜ。世界中。しかもキノコなんか生える筈のねえ砂漠にまで生えてる。」


真行寺がテレビを横目で見ながら言った。


「ラジオやテレビで盛んにキノコに触るな、食べるなと言って、警察、自衛隊、自治体がキノコ狩りに出ている様だが、これだけ広範囲になると、食ってしまう人間も出てきそうだな…。

きいっちゃん、このキノコどう思う?」


「砂漠でもでしょう?もう、オオシロカラカサタケじゃないでしょうね…。

そっくりではあるけど…。」


「まあ、寅次郎君辺りが分析を始めているとは思うが…。

下手すると、胞子もヤバイかもしれないからな。」


テレビでニュースキャスターが叫んだ。


「この毒キノコの胞子に寄る死者が出ました。

庭のキノコを取ろうとした71歳の男性が、キノコを食べても居ないのに、その場で即死したそうです。

キノコの胞子を吸った事に寄るものと思われます。

皆さん、くれぐれもキノコには触れないでください。

処理をする人間が行くまで、そのままにし、近付かないでください。

繰り返します。キノコには近付かないで下さい。」


しかし、続々と死者は出始めた。

テレビやラジオの情報を得ず、これを食べようとしたり、刈り取ろうとした者が続出したからだ。

日本は未だ少なかったが、発展途上国などでは劇的な数に上るだろう。


「コレ、昨日瑠璃んちにあったキノコじゃねえな…。」


龍介が言うと、亀一が答えた。


「だと思う、実は昨日、栞と朱雀と佐々木からも問い合わせがあったんだが、あいつらんちの周りにも生えてたらしい。

龍が刈り取ったもんと同じだった様だ。

あいつらは、龍程用心しないで、ただ単に婆ちゃんやら、お袋さんやらが引っこ抜いちまった様だが、何も起きていない。」


「昨日から方々に生えてたのか…。グランパの家はどう?」


「昨日は無かったな。

でも、お隣のお宅には生えていて、奥さんが悲鳴を上げていたので、抜いて上げた。

昨日生えて、抜かれたから、一晩で耐性が出来て、強い品種になったって事なんだろうか…。」


「そんな気はしますね…。あり得ねえスピードだけど…。」


寅彦が顔を上げた。


「親父から新しい情報が入った。

寅次郎叔父さんの分析結果に寄ると、キノコはオオシロカラカサタケの新種だそうだ。

オオシロカラカサタケの方は、毒キノコではあるが、きいっちゃんも言ってた通り、毒性としては、即死する様な類いじゃない。

だが、この新種は一本で成人100人分の致死量があり、食ったら即死するし、さっきニュースでも言ってた様に、採られる時に胞子を出し、その胞子も同様の毒を持つ。」


真行寺が唸った後聞いた。


「対策は?」


「取り敢えず、戒厳令みたいなものを敷き、刈り取りの最中は外に出ないように発令し、自衛隊、警察、自治体が総動員で刈り取る事になったらしいです。

その際、胞子が出ないようにする物質を噴霧してからって事になったようですね。

コーティング剤みたいなもんで、龍太郎さんが速攻で作ったみたいです。」


「一々頭に来る男だが、いざという時には役に立つな。陰謀説は?」


「流石に世界中、北極、南極以外全ての国に出ているので、それは無いのではないかという話になった様です。

昨日のネットの状況を調べてみると、普通のオオシロカラカサタケの目撃情報は世界各国にあるようですし。」


亀一が何か思いついた様だ。


「北極や南極には無い?砂漠にも生えたもんが、氷には生えねえのか…。

つまり寒さには弱いって事だな?」


「確かに今、冬の地域はかなり少ねえな。」


「ーああでもダメか。

今真夏でこの暑さだもんな。

窒素かなんかで瞬間的に凍らせて、取り敢えず死滅させた所で、また復活しちまう。」


「ーと、龍太郎さんと長岡のおじさんも考えたみたいで、一応刈り取りには液体窒素も使うけど、また生えて来ないとは限らないので、他の対策をうちの叔父さんと模索中…だそうです。」


亀一は優子に、もう外に出ないほうがいいと言われ、そのまま真行寺と一緒に加納家に泊まった。


翌日、その翌日と、キノコは刈り取っても刈り取っても生えて来て、注意喚起にも関わらず、なす術ないまま世界中の死者はドンドン増えて行った。


龍太郎達が漸く、キノコにだけ効いて、他の動植物には効かない薬を開発したという情報が入って来た時だった。


「あ、綺麗でち…。」


蜜柑がそう言って、窓の外を指差したので、全員で窓の外を見ると、確かに美しいとも言える様な光景が広がっていた。


そこら中に生えていた無数のキノコが、地面から自然に抜け、フワーっと空へ昇って行っていたのだった。


他の場所のキノコも、みんなそうやって昇って行っている様で、テレビでも、日本中、世界中の映像が流れ始めた。


「まるで役目を終えた様な感じだな…。」


真行寺の呟きに龍介が静かな声で答えた。


「自然淘汰…。」


亀一が頷いた。


「地球が中からも熱くなって来てんだもんな…。人間が重すぎる…そういう事かもしれねえな…。」


その数日後のニュースで、世界中の死者の総数が発表されていたが、自然淘汰と言える程の数に昇っていた。

その数、約6億人。

特に、人口が多いとされる国や貧しい国に、その死者は偏っていた。










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