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龍介くんの日常  作者: 桐生初
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三角との関連性

宿泊施設に戻りなさいと先生の指示が出ると、栞と兄がそっと寄って来た。


「大変だったね~。」


栞は白いレースのサマードレスに、似た様な白いレースの日傘を差して、どこぞのお嬢様の様な出で立ちで、心配そうに龍介達を労った。


鸞は半泣きなのか、半狂乱なのかという寅彦を慰めるのに飽きたのか、栞の方を完全に向いてしまった。


「あら、栞さん素敵。」


「本当。可愛くて、上品でよくお似合いです。私も着たいなあ。」


瑠璃も言うと微笑んだ。


「ありがとう。瑠璃ちゃんも似合うよ、きっと。」


栞は、幼い感じと頼りなさとは裏腹に、すっかりみんなのお姉さんになってくれている。


そして、何を思ったのか、にやけまくってハートを飛び散らせていた亀一は、兄との挨拶もそこそこに、やおら栞を抱きしめた。


これは結構龍介達の前でもやるし、兄も苦笑して見ているだけにしてくれているが、龍介達は気が気では無い。

だって、同級生はまだしも、先生が居るし。


「きいっちゃん、大丈夫?先生まだいらっしゃるみたいだけど。」


「いいの、いいの。」


そして、いきなり、ちゅー!


笑い出す兄に、真っ青になる龍介達。


「きいっちゃん!そりゃまずいだろ、いくらなんでも!うちのお父さんじゃあるまいし!」


言ってる側から、先生が亀一の背後に立ち、震える声で言った。


「長岡…。そういうのは、先生達の世代だと、不純異性交遊と言う…。頼むから、こんな所でやるんじゃない…。」


先生は頼んでるんだか、命令してるんだか、叱っているんだか、自分でも訳が分からなくなっているのだろう。

それはそうである。

いくら英は校則が緩いとはいえ、まだ中学生の教え子が、誰だか知らない女の子に人目も憚らずちゅーちゅーやり始めたのだから、動揺するのが当たり前だ。

亀一は渋々離れ、栞達と別れた。


「どうするんですか?中止ですか。」


宿泊施設に戻る道すがら龍介が聞くと、先生は唸りながら言った。


「そうだなぁ、危ねえもんなぁ。大事はなくて良かったが。」


瑠璃が物言いたげに龍介を見ている。


「どした?」


「いえ、あの、変な事思い出して。」


「なんだ、唐沢。」


「あの、どうして先生方は三角を作ってらしたんですか?」


「ああ、それは今まで四角みたいな感じでやってたんだが、それじゃ泳ぐ方も退屈かなって事でさ。今年から三角にしたんだ。」


「瑠璃、三角がなんかあんのか?」


「ううん、そんな大した事じゃないし、関係無いかもしれないから。」


先生の前では言いづらいのかと思い、部屋に戻って、シャワーや着替えが済んで集まってから改めて聞くと、瑠璃は遠慮がちに説明し始めた。


「うちの母が、部屋に家具を配置する時は、絶対三角を作っちゃ駄目って言ってたの、ちょっと思い出したの。」


「三角って?」


「ああ、そうね…。

お部屋の角を家具の側面で塞ぐ様に配置すると、壁と家具の間に三角が出来ちゃうでしょ?

よく、リビングの角にテレビを置く為に、テレビ台をそんな風に置いたりするでしょう?アレ。」


「ああ、なるほど。で、なんで駄目なんだ。」


「お部屋に三角を作ると、変な世界と繋がってしまうんですって。実際、母のお知り合いが、そういう配置で、テレビ台を置いてしまって、夜中テレビを見てたら、テレビの裏側から、うわあ~って凄い勢いで手が出てきて、金縛りに遭っちゃって、首絞められたり、気が狂う寸前になってしまったそうなの。」


ワカメだと思い込む事も出来ない話に、寅彦ご乱心。

寅彦とは思えない勢いで、わあわあと朱雀の様に叫んで話にならない。


「龍介君、落としちゃって。」


鸞に冷たく言われ、龍介も苦笑しながら頷いて、寅彦を落とし、みんなで居るロビーのソファーに寝かせて言った。


「確かに、この変事が起きたのは、三角にした今年からではあるが…。

でも、なんで三角が駄目なんだろうな。

三角っていうか、三て数字は、神聖な物なんじゃないのか?

三種の神器とか、三位一体とか。

安定の数字って聞いた事あんだけどな。」


「母もよく分からないって。

ただ、神聖なものだけに、場所を間違えると、悪い方に転がるって事は三に限らずあるのかもしれないわ。

母がよく表裏一体、紙一重って言ってるから。」


「前の朱雀達が入り込んじまったのもそうだもんな。

こっちとお化けの世界は、薄いレースのカーテンで仕切られてるだけだから…。」


「そう。多分そういう事ね。」


ずっと2人の話を聞いていた鸞が聞いた。


「では、あの海は、なんか良く無い要素があるって事なのかしら?」


「という事になるかと。」


「瑠璃、ここでなんか事件とか、人が死んでるとか無いか、調べてくれるか?」


「はーい。」


寅彦が寝ているから瑠璃の独壇場である。


嬉々として調べていたが、急に顔色が悪くなった。


「どした?」


心配そうに聞く龍介に、瑠璃は黙ってパソコン画面を見せた。


「うおおお…。夏目さん管轄の事件が起きておったのか…。ていうか、まだ解決されてねえのか、これ…。」


「なんだ?」


亀一と鸞も覗いた。


その事件とは、丁度先生達が作っていた三角形の端っこに位置している岩場の陰で起きていた。

そこは、あの水柱が上がった所でもあった。


もう8年位前の話になるが、そこの岩場の陰の、ちょっと洞窟の様になっている場所に、若い男性の遺体が5体、上がったのだそうだ。

そこは、潮の流れの関係で、よく漂流物が流れ込んで来るそうなのだが、それが偶々人間の死体。

しかも、全員同じ殺され方をしていたらしい。

つまり犯人は同一人物という事になるのだが、犯人は未だ見つかっておらず、解決はされていない。


「うーん、しかし、この人達の恨みだけなら、龍や鸞ちゃんの足触っただけで終わる気がすんだが。

巨大水柱だの、その上、それに引きずり込まれたらしい市曽が吐き出されたのも、ちょっと俺的には納得いかんなぁ。」


亀一が言うと、瑠璃も含めて、皆頷いた。

龍介は頬杖をついて、青い顔で寝ている寅彦を見つめながら言った。


「なんか両方が合わさっての事って気もすんな。

科学的というか、お化け以外の可能性と、お化け的な事と。

2つが相乗効果もたらして、こんな大事になった感じではあるが、水中じゃ、なんの装備も無いんだから調べようも無えな。」


珍しく亀一も頷いた。


「言えてんな。これじゃ中止だろうし、あそこに三角作らなきゃ起きねえだろう。気にはなるから、親父には言っとくよ。」


しかし、そうは行かないのが龍介達で…。


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