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極めて下品な短編置き場

最愛の息子

作者: 木津さつき
掲載日:2014/05/13

私は目を覆った。見ていられなかったのだ。

最愛の息子にメスが入れられる瞬間を―


私と妻が出会ったのは10年前だ。 当時、大学生で先輩と後輩の関係にあった私たちは恋をした。 妻は私の2つ上の同じサークルの先輩で、今でも"かわいい後輩"という感じだ。 だからかもしれないが、私はいつまでも子供扱いをされている。 そのうち私たちには溝ができた。 極めて下らない話だ。子供扱いされて馬鹿にされるのに耐えられなくなったのだ。 私が幼稚なだけだ。今、思うと子供扱いされて当然だった。 そんな二人を唯一、繋ぎ止めていたのは息子だった。 私は妻が息子を愛でる姿を見ているのがとても好きだった。 優しく愛撫し、胸に抱きかかえキスをする…

それを見ているだけで幸せだった。


異変が起きたのは昨日の朝だ。 息子が起きなくなったのだ… 私たちは慌てて病院へ行った。

「先生!息子はどうなるんですか!?」

「これは重度ですね… 手術が必要です」

麻酔が効いているのだろうか? 息子の寝顔はとても安らかだった… 私は手術が終わるまでずっと目を閉じていた。 息子が切り刻まれるのを見るのが耐えられなかったからだ…

「終わりましたよ」

先生のその声とともに私はようやく目を開けた。 私の眼前にいたのはグルグルと包帯を巻かれた息子の姿だった。 それから私たちは病院をあとにし、家路についた。 さわると痛いようで、そっと… そうっと息子を家まで運んだのを覚えている。 その後、息子は早く元気になりたいようで必死に暴れ回った… 動けないのに無理をして必死で立ち上がろうとしていた。 そのたびに激痛が走り、苦しんでいた。

血まみれになった包帯を変えるのは私の役目だった…


完全に包帯が取れたのは10日後の事だ。 すっかり元気になった息子の姿に、私たち夫婦は手を取り合って喜んだ。 正直、手術の時は先生を憎んでいた。 大事な息子をメスで切り刻んだ先生を殺してやろうとさえ思ってしまった。 自分勝手な馬鹿な考えだ。 今はとても感謝している。 感謝してもし足りないほどだ。 最後の通院の日…

先生に数えきれないほどの"ありがとう"を言った。 そして私たちは笑顔で病院をあとにした。 手をつないだままの私と妻は、病院の出口で"ピタリ"と足を止め、振り返り、病院に向かって深々と頭を下げて礼をした。

頭を上げると病院の看板が目に飛び込んでくる…






「包茎手術の専門医・上野クリニック」


先生、本当にありがとうございす! おかげでもう子供扱いされなくなりました。 妻もたいへん悦んでおります!



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