巨人(ゴーレム)との戦い
時間が無くて書き上げて即投稿です。推敲不足&誤字脱字多いと思います><
日緋色金巨人の拳が、目の前に迫る。僕が拳を避けきれないと思った瞬間、久々に自動回避プログラムが起動した。
《自動回避プログラム:起動...》
炎を噴いて飛んでくる二つの拳がスローモーションの様に見え始める。僕は二つの拳の間に頭を入れることで回避することに成功した。
(危なかった。本当にロケッ○パンチ装備とか、小人達よもう少し自重しろよ)
『くぅ、あそこから避けるか…だがまだ終わらんよ』
噴進拳を避けられ小人Aは悔しそうに叫ぶと、ガチャガチャとレバー操作している。背後で二つの拳がUターンして戻ってくるのを動態センサーが探知して視界にAR表示してくれた。
(自動追尾じゃなくて、ラジコンなのか)
日緋色金巨人から別の飛び道具が飛び出すかもしれない為僕は後を振り向けない。Uターンのために噴進拳はかなり速度を落としており、動態センサーのAR表示を頼りにギリギリまで引きつけると、僕はしゃがみこんで拳を避けた。
『なんですと~』
小人Aとしては噴進拳が戻って来ないと油断しているはずの僕が背後からの攻撃を避けた事に驚いていた。噴進拳はそのまま真っすぐ進んで黒鋼鎧巨人の側をかすめて壁際でUターンして日緋色金巨人の上空でグルグルと回り出した。
(壁には衝突しないように細工してあるようだけど、他の物にはどうなんだろう? それに拳を操作している間、巨人は何もできないようだな)
小人Aは再び噴進拳を操作して僕に飛ばしてきた。僕はそれをワザと紙一重の状態でかわし続ける。
『ええ、何故当たらん』
回避に余裕が無いように見せかけることで、僕の思惑通り小人Aは噴進拳の操作に熱くなっていく。
僕はギリギリの回避の演技を続けながら、ソフィア達の方を見ていた。
見ると、アーノルド達は黒鋼鎧巨人となんとか渡り合っているが、攻撃が通じておらず防戦一方で苦戦していた。エミリー達を呼び寄せたソフィアは、アーノルド達に何か命じていた。どちらも僕の方に注意は向いていなかった。
(こいつを使ってソフィア達の意表を突いてみるか)
再び前から飛んでくる噴進拳を避けると、フィア達の方めがけ走りだした。当然、噴進拳はそんな僕を追いかけて来た。
◇
「まさか巨人が二体も居るなんて想定外ですわ」
ソフィアは部屋に二体の巨人がいた事で、事態が彼女の思いもよらない方向に進んでいることに戸惑っていた。サハシは見たこともない巨人と戦っており、ソフィアとアーノルド達は黒鋼鎧巨人の攻撃を凌ぐのに精一杯だった。
背後から黒鋼鎧巨人に襲われた為、傀儡であるエミリー達を操る事もできずソフィアは逃げまわることに専念するしか無かった。
その後、アーノルド達が黒鋼鎧巨人の注意を引き付けてくれたおかげで、ソフィアはなんとかその攻撃範囲から逃れることができた。
サハシの方を見てみると、彼は謎の巨人相手に苦戦していた。小型の巨人は、動きは素早く、魔法も使い、サハシの剣を弾き返すだけの身体の硬さを持っているようだった。
(いくらサハシでもあの巨人を倒すのは容易では無いでしょう。…アーノルドには悪いのですが、黒鋼鎧巨人の相手は彼にしてもらい、私だけであそこにたどり着いて魔力を得ましょう)
「お前たち、こっちに来なさい」
ソフィアはそう決心すると、エミリー達を自分の元に呼び寄せた。ソフィアに命じれられ、エミリー達は彼女の元に集まる。
「エミリーとリリーは、黒鋼鎧巨人と戦っているアーノルド達を魔法で援護しなさい。エステルとミリアムは私に付いてきなさい」
四人はソフィアの命令に無言で頷く。
「アーノルド、魔法使いの二人をお前たちの援護に回します。私が目的を果たすまで黒鋼鎧巨人を引き付けておきなさい」
ソフィアは黒鋼鎧巨人と戦っているアーノルドにそう命じる。
「…判りましたソフィアさま。全て"不死の蛇"様の復活の為に…」
親指を立てて独特のポーズでアーノルドはソフィアにそう答えた。
「必ずや"不死の蛇"様を復活させてみせましょう」
ソフィアはそう呟くと、エステルとミシェルを引き連れ部屋の奥を目指して歩き始める。ミシェルに罠を警戒させ、部屋の中央に陣取る謎の巨人を避けて壁際の方に進んでいった。
残されたエミリーとリリーは、ソフィアからの命令に従い、アーノルド達を援護するために回復の奇跡や攻撃魔法を唱えていた。
◇
噴進拳を引き連れて黒鋼鎧巨人の方向に向かっていたが、ソフィアはそんな僕を避けるかのようにエステルとミシェルを連れて壁際に向かっていた。
(ソフィアは…何処へ向かうつもりなんだ?)
ソフィアを追いかけるかそれとも黒鋼鎧巨人に向かうか、僕は一瞬迷ってしまった。
(先に黒鋼鎧巨人を倒さないと、エミリーとリリーが危ないな…)
黒鋼鎧巨人を倒すことを選択した僕は、このまま進むとエミリー達が噴進拳に当たってしまうため、ソフィアと反対側の壁際に進んでいった。そしてそのまま噴進拳を黒鋼鎧巨人に誘導していった。
「サハシ殿、危ない」
噴進拳を引き連れて黒鋼鎧巨人に向かった僕にアーノルドが叫ぶ。その時丁度リリーの放った氷結弾が黒鋼鎧巨人の足元を凍らせてその動きを止めた。
(今だ!)
ガゴーン、ガコン
お約束通り黒鋼鎧巨人の直前で90度転進した僕を追尾しきれず、噴進拳は黒鋼鎧巨人の胴体に命中してしまった。どれだけの威力があったのか、噴進拳は黒鋼鎧巨人の胴体に突き刺さってしまった。
『何をやってるんだこの馬鹿』
『お前こそ、そんな所で立ち止まるな』
噴進拳が黒鋼鎧巨人に当たってしまった事で、最初唖然としてた小人AとBは、どちらが悪かったかと口喧嘩を始めてしまった。
噴進拳が突き刺さった為、黒鋼鎧巨人の胴体がひび割れてしまった。生物であれば死んでしまうか、動けなくなるところだが、巨人はその状態で僕に殴りかかって来た。
胴体が大きくひび割れてしまったので黒鋼鎧巨人のパンチには力もスピードもない。そんな攻撃など僕に当たるはずもなく、大太刀を振るうとその手足を文字通り粉砕してしまった。
これで黒鋼鎧巨人は無力化でき、ついでに日緋色金巨人の拳も胴体に突き刺さったまま動けなくなった。
「馬鹿な、あの硬い身体をあんなにたやすく粉砕するとは…」
アーノルド達は、自分達がかすり傷すら負わせられなかった黒鋼鎧巨人を僕が簡単に無力化してしまったことに驚いていた。
そんな彼等に対して僕は大太刀を腰に収めると、七節棍を持って近づいていった。
「サハシ殿助かった。さあ、ソフィア様の後を…グハッ…何をする…」
僕が彼らの救援に来たと思ったのだろう、アーノルドは僕にお礼を述べる。そして部屋の奥に向かったソフィアの後を追いかけようと言いかけたが、そんな油断しきったアーノルドに僕は七節棍をお見舞いした。不意打ちの七節棍を鳩尾に喰らったアーノルドはそのまま悶絶してしまった。
「貴様、アーノルド様に何をする」
「サハシ、血迷ったか」
アーノルドを倒した僕に部下のイケメン軍団が慌てる。
「いや、僕は血迷ってなんかいないよ。このまま君達を自由にしておくと、エミリー達を人質に取りそうだからね。しばらく寝ていてもらうよ」
「まさか既に我らのことに気が付いていたのか」
「ならばここで倒すまで」
「我らで一斉にかかれば倒せない者は無い」
「いくぞ」
自分達の正体に僕が気付いてた事を知ったイケメン軍団は、慌てて武器を構えて襲いかかってきた。彼等は取り囲んで四方から攻撃を仕掛けてきたが、僕は七節棍の一振りで全員を殴り飛ばしてしまった。彼等は特撮映画のように空を飛び、床に叩き付けられる。ダメージが少なかった一人が起き上がろうとしたのを僕は踏みつけて悶絶させた。
所で、僕がアーノルドの部下と戦っている間エミリーとリリーはどうしていたかと言うと…アーノルド達に加勢することもなくただ立ち竦んでいるだけだった。彼女達はソフィアから黒鋼鎧巨人との戦いでアーノルド達を援護しろという命令しか受けていない。そのため僕とアーノルド達の戦いでは何もできなかったのだ。
僕はロープを取り出すと気絶しているアーノルド達を縛り上げてしまった。前に盗賊にやったみたいに手足を叩き折ったほうが楽なのだが、彼等は神聖魔法を使えので、手足を骨折させたぐらいでは復活してくるかも知れないので縛り上げたのだ。
黒鋼鎧巨人を倒してからアーノルド達を拘束するまで三分とかからずにやり遂げた僕は、その後無抵抗のエミリーとリリーを入ってきた通路に運びだした。
(通路の中は部屋とは別な空間だからソフィアの命令も届かない。これでこっちは大丈夫だな。後はソフィアを何とかすれば…)
ソフィアの方を見ると、部屋の奥のメーターが並ぶ壁の所まで辿り着いて何か魔法陣の前で呪文を唱えていた。小人達はまだどちらが悪いか口論しており、ソフィアがしていることに気付いてはいなかった。
(日緋色金巨人とソフィアどちらを先に無力化するか…考えるまでもないか)
両の拳を無力化したが、日緋色金巨人は胸の熱戦砲も健在である。おそらく他にも武器を持っているだろう。日緋色金巨人を無力化せずにソフィア達の方に向かうのは危険すぎる。
(さっさと倒してしまおう)
《主動力:賢者の石 30.0%で稼働させます》
出力を更に上げて再び大太刀を抜くと、僕は日緋色金巨人に向かって走りだした。
◇
ソフィア達は壁際に沿って慎重に部屋の奥に進んで行った。この状況で巨人がソフィアの方に向かって来た場合、彼女達はたやすく倒されて仕舞っただろうが、幸運な事に日緋色金巨人は全く動く気配が無かった。
小人達が見えないソフィアには何故巨人が動かないのか判らなかったが、彼女はその好機を逃すつもりはなかった。
部屋の奥、メーターが並ぶ壁の手前に辿り着くと、ソフィアはとある魔法陣の前で立ち止まった。この魔法陣こそ五年前に彼女が見つけた、この地下迷宮の魔力を操るための魔法陣であった。
「良かった五年前と同じ状態ね。…あなた達は誰も私に近づけないように見張っていなさい」
魔法陣の状態が五年前と変わっていないことをソフィアは確認した。そしてエステルとミシェルにソフィアに自分の護衛を命じる。
ソフィアは"無限のバッグ"からソフトボール位の大きさの漆黒の玉を取り出した。彼女が取り出した漆黒の玉は、ドラゴンの核を元に作られた魔力を蓄えることが出来る魔道具である。もちろん普通に入手できるものではなく、"天陽神"の教会の力を使って入手したものである。
ソフィアは玉を魔法陣の中心にそっと置くと、静かに呪文を唱え始めた。
「…全てを司る魔力よ、我がもとに集いて彼の物に宿り給え…」
ソフィアの呪文の詠唱とともに魔法陣が輝き、壁のメーターが激しく振れる。そして魔法陣の輝きが漆黒の玉に集まっていった。漆黒の玉に集まっていく輝きは魔力である。膨大な量の魔力が玉に吸収され、黒かった玉はだんだん透明になっていった。
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