表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら僕の心臓は賢者の石らしい  作者: (や)
ルーフェン伯爵編
77/192

ダンジョン・アタック(1)

 11階層に転移した僕達を待ち構えていたのは巨大な石像だった。


岩石巨人(ストーン・ゴーレム)!」


「ケイ、大丈夫だよ。あれはただの石像さ」


 攻撃を仕掛けようとした僕をミシェルが制止する。僕はまだ槍を構えていたが、石像は動く様子もなく壁際に立っているだけだった。


岩石巨人(ストーン・ゴーレム)だと最初は誰もが思うけど、此奴は何をしても動かない。もう少し下の階層にもあるけど地下迷宮(ダンジョン)の単なる置物なのさ」


「そうですね。私も最初見た時はびっくりしました」


 ソフィアもそう言って懐かしそうに石像を見つめる。

 壁際に立っている石像は、体高4メートル、岩から削りだされた巨大な体は威圧感たっぷりである。11階層の地図を見ると石像と書いてあったが、これだけ大きなものとは想像していなかった。


 ミシェルとソフィアは石像の横にある扉に近づいていく。その扉は11階層の最初の部屋へと続いているのだ。



 僕とエミリー達も二人に続いて扉に近づいたのだが、その時異変が起こった。今までピクリとも動かなかった石像が突然動き始めたのだ。


「えっ、動いた?」「動きましたわ」


 石像は動かないと思っていたミシェルとソフィアは、突然動き出した石像に対し驚きのあまり立ちすくんでいた。

 エミリー達はまだ警戒心が残っていたこともあり、動き出した石像に対して身構えていた。僕は扉の前で立ちすくんでいるミシェルとソフィアを抱きかかえ、石像と距離を取るように後退した。


(やっぱり岩石巨人(ストーン・ゴーレム)だったのか)


《未確認オブジェクト…以後岩石巨人(ストーン・ゴーレム)と呼称:スキャン開始.....終了。脅威度:4.0%》


 ログでは岩石巨人(ストーン・ゴーレム)はオーガの二倍程度の強さと表示されている。


(この巨体で殴られたら…軽自動車に跳ねられるぐらいの衝撃かな?)


 岩石巨人(ストーン・ゴーレム)の攻撃力を分析しつつ、ミシェルとソフィアを安全な場所に下ろす。そして注意を引きつけるために槍を構えて前に飛び出した。


「あれ、止まった?」


 突然動き出した岩石巨人(ストーン・ゴーレム)は、数歩前に動くとそのまま動かなくなった。


「これはどういうことなの?」


 しばらく待っても動かない岩石巨人(ストーン・ゴーレム)にエステルが近づく。彼女が剣で突いてもピクリともしなかった。


「判りませんね。ミリアム(・・・・)さん、動かないって仰ってましたよね」


 リリーがジト目でミシェルを睨む。


「ああ、こんな事初めてだよ。あんた(ソフィア)これ(石像)が動くって聞いたこと無いよね」


「ええ、私もこの石像が動いたという話は聞いたことがありません」


 二人は何故岩石巨人(ストーン・ゴーレム)が動いたのか判らず首をひねっていた。


(僕達の前に冒険者パーティが通りすぎたはずだよな。その人達には反応しなかったということは、僕達に反応したのか…何がキーなんだろう)


 動かないと思っていたミシェルやソフィアが何かキーとなるアイテムを持っているはずがない。後は僕やエミリー、エステル、リリーだが…その中でキーとなりそうなのは、僕の心臓の賢者の石ぐらいなものだろう。


 賢者の石のことは誰にも話せないことなので、とりあえずこの場は何もわからない振りをしておこうと考えた。


「襲ってこないなら…無視して先に進もうか」


「そ、そうですわね。早く下の階層に行かないと。ミリアム(・・・・)さん先に進みましょう」


 ソフィアは目的を思い出し、まだ首を捻っているミシェルに先に進むように促した。


「ちょっと待って…石像の後ろに扉があるよ」


「本当ですわ。…こ、これは大発見ですわ」


ミシェルとソフィアは初めて発見された扉に興奮していた。


 岩石巨人(ストーン・ゴーレム)が動いたため、その後ろに隠されていた壁に扉が見つかった。11階層の地図を見直すが、石像の後ろに扉やその先に続く部屋や通路などは書かれていかった。


(石像が動かなければ見つからない扉か。確かに大発見だが…できれば開けるのは後にしたいな。)


 ゲームであれば喜んで開けてしまっただろうが、僕達のパーティは地下迷宮(ダンジョン)に入ってから魔獣と戦ってすらいないのだ。まずはパーティの連携を確かめる方が重要だと僕は思ったのだ。


「ミシェル、ソフィア、新しい扉が見つかったようだけど、まずは普通に11階層を探索しないか? その扉の先がどうなっているか判らいないし、もし下の階層に飛ばされでもしたら大変だよ」


「でも…この扉は今まで誰も入ったことのない所に続いているのかもしれません。これを調査すれば…」


「ソフィアさん、僕達の目的は地下迷宮(ダンジョン)の探索じゃないでしょう」


「…そうでした」


 ソフィアは目的を思い出したのか、一気に興奮から冷めていた。冒険者としての血が騒いだのだろうが、"死者蘇生アイテム"の獲得の方が彼女にとって重要なのだ。


「でもこのままじゃ別の冒険者に先を越されちゃうよ」


 ミシェルはうらめしそうに僕を見つめる。


「多分、僕達が立ち去ったら石像は元に戻るんじゃないかな」


「そんな都合のいい話があるかな?」


 ミシェルは疑ったが、試しに僕達全員(・・・・)で転移陣の方に下がると、石像は再び動き出して元の位置に戻った。


(誰の仕掛けかしらないけど、僕が近づくとこの手の物が動き出すかもしれないのか…気をつけないと不味いな)


 皆が驚く中、僕はこの手の石像に迂闊に近づかないほうが良いと考えた。他の冒険者に見つかると話題になってしまい、結果賢者の石のことがバレてしまうかもしれないからだ。


「ほらね、とりあえず11階層を探査してからでも大丈夫だよ」


「…そうみたいだね。ああ、さっさとこの階層を回ってここに戻ってくるよ」


 ミシェルは気を取り直したのか、もう一方の扉を開けて進み出す。僕達も慌ててその後を追いかけた。





 11階層は天井の高さが5メートルと高く部屋や通路も広かった。そこから出現する魔獣も巨大な奴かと思ったのだが、遭遇したのは巨大な蝙蝠だった。

 体長一メートルほどの巨大蝙蝠は、名前を洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)といい、10匹ほどの群れで僕達を襲ってきた。


「空を飛ぶ魔獣がいるから天井が高いのか」


「彼奴等、動きが素早くて狙いが定まらないよ」


 エステルはクロスボウで狙い撃とうとしたが、パタパタと複雑に飛び回る洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)に当てることができないでいた。洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)は隙を見てリリーやエミリーに襲い掛かってくるが、それは僕が槍を振るって追い払っている。


洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)は動きが素早くて攻撃が当たりづらい。魔法で攻撃したほうが被害が少ないよ」


 ミシェルは魔法で倒せば良いと言ってきた。確かに範囲魔法なら動きが早くても巻き込んで命中させることが出来るだろう。リリーも頷いて魔法を唱えようとしていた。


(魔法なら楽に倒せそうだけど…確か、蝙蝠って超音波で距離を計っているんだっけ。ならそれを乱してやれば…)


《音響解析:計測開始....終了。100kHzの音波を検出しました》


 僕は洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)の出す超音波を解析し、その周波数帯で撹乱超音波を発信した。エコロケーションに使用していた超音波を乱された洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)達は、距離が掴めなくなったため天井や部屋の壁に衝突して地面に落ちてしまった。


「どうして?」


 リリーは落ちてくる蝙蝠を見て魔法の詠唱を中断した。


「どうしたんだろう、突然落ちてきたよ」


「耳でもやられたんじゃないかな? 細かいことは良いから、倒してしまおう」


 この世界の人達は蝙蝠が超音波でエコロケーションをしていることを知らない。エステルが不思議そうな顔をして尋ねてきたが、僕は適当に説明して、落ちてきた洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)にとどめを刺していった。

 地面に落ちた洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)の始末など簡単である。ミシェルやエステルと手分けして三分とかからずに全て始末した。


洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)の動きが可怪しくなったのは、ケイさんのせいですか?」


 洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)から素材である皮膜を取っていると、リリーが僕の顔を覗きこんで尋ねてきた。


「ああ、蝙蝠って目じゃなくて音と耳で距離を調べているんだ。だから邪魔するような音を出してやったのさ」


「音ですか? 私には何も聞こえませんでしたが」


「普通の人には聞こえない音だからね。要は洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)は魔法を使わなくても簡単に退治できるってことだよ」


「そうですか。さすがケイさんです。でも次は私の魔法で倒して見たいのですが良いでしょうか?」


 リリーはここで空を飛ぶ魔獣に対して魔法を使う練習をしたいようである。別な階層で蝙蝠以外の空を飛ぶ魔獣が出てくるかもしれないのだから、ここで練習しておいたほうが良い。


「判った。次はリリーにお願いするよ」


 探索を続けていると、再び洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)と遭遇した。数は5匹と少ないので、今度はリリーの魔法を試して見ることにした。


「マナよ燃え盛る火の玉となりて我が手に集え…そして彼の者を焼き払え」


 リリーは火炎弾(ファイアボール)を唱える。リリーは水・氷属性魔法のほうが得意なのだが、空を飛ぶ魔獣には火属性魔法の方が効果がある。


「ファイアボール!」


 リリーが放った火の玉は、狙い通り洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)の群れの真ん中で炸裂した。洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)は一撃で黒焦げとなって落ちてしまった。


「一撃で全滅か…上手にやるもんだ」


 ミシェルはリリーの魔法の威力に感心していた。下手な魔法使いだと威力が足りずに一撃で倒せなかったり、群れを一度に魔法の効果範囲に入れることを失敗したりする。その点リリーは一撃で全ての洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)を倒したのだから合格点を貰えるレベルである。


 11階層は洞穴蝙蝠(ケーブ・バット)としか遭遇しなかったため、リリーの魔法と僕の超音波撹乱で簡単に倒すことができた。そのため11階層は一時間ほどで探索し尽くしてしまった。




 12階層に降りる前、ミシェルとソフィアが石像の所にあった隠し扉にチャレンジするかどうかで少しもめた。ミシェルは隠し扉にチャレンジしたかったみたいだが、結局依頼主のソフィアの意見を尊重して普通に下の階層を目指すことになった。


 12階層に降りると、今までの石の壁と打って変わって、土の中に掘られた穴のような迷宮が広がっていた。


 地図を見ると、この壁はもろく崩れやすいため爆発系の魔法の使用が制限されると注意書きがあった。

 壁に触ると確かにパラパラと崩れやすく、簡単に指で崩すことができた。火炎弾(ファイアボール)一発で崩れるほどではないかもしれないが、何発も同じ箇所に打てば崩れそうであった。


 後で聞いたのだが、例え通路が崩落してもしばらくすると元に戻り、通路が永遠に閉ざされるということは無い。崩れた通路を誰が元に戻しているのかは謎だそうである。


「ここはあんまり長いしたくない階層だよ」


「そうです。私もあれは苦手です。最短距離で13階層を目指しましょう」


 ソフィアはミシェルの言葉に頷いていた。二人はこの階層で遭遇する魔獣が苦手らしい。


(どんな奴が出てくるんだ? 土ということはやっぱり…)


 土のトンネルを歩きながら12階層に出現する魔獣の名前を調べる。地図には洞窟ミミズ(ケーブ・ワーム)と書かれていた。


(巨大なミミズなのかな? 確かに巨大なあれは気持ち悪いかも)


 そんなことを考えながら歩いていると


《地面の振動を検出。地下を何かが近づいて来ます》


 僕の視界に地下から何かが襲ってくる事が表示された。


「下からなにか来る」


「本当かい」


 僕とミシェルが跳ぶように後退すると、地面を突き破って巨大なミミズが出現した。

 ミミズと言っても普通に地面にいる物ではなく、円筒形の口に多数の牙を持ったものや十字に開く巨大な口を持っているなどどう見ても凶悪かつ醜悪な魔獣であった。


《未確認オブジェクト…以後洞窟ミミズ(ケーブ・ワーム)と呼称:スキャン開始.....終了。脅威度:0.1%》


 十数匹の洞窟ミミズ(ケーブ・ワーム)がうごめく様は夢でうなされそうなレベルの気持ち悪さであった。ただ、ログを見る限り醜悪なだけであまり強くないことが判ったので、簡単に倒せるだろう。


「うう、近寄りたくないね~」


 ミシェルは嫌そうにしているし、ソフィアは見るのも嫌だという感じでそっぽを向いていた。


(僕がやるしか無いのかな)


 僕が槍を構えて前に出ると、エステルがその横に並んで来た。


「あたしはミミズなんて怖くないからね。手伝うよ」


 エステルは幅広の剣(ブロードソード)を構えて飛び出した。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

お気に召しましたら、ご感想・お気に入りご登録・ご評価をいただけると幸いです。誤字脱字などのご指摘も随時受付中です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ