ネイルド村再び
設定多くてすいません。
でも設定垂れ流し回は筆が進みます。
夜の街道を僕は100km/hの速度で走り抜けた。闇の中この速度で移動する僕を視認できる人はいないだろう。見ても多分魔獣か獣だと思うに違いない。
(王都から離れたらもっとスピードを上げよう。)
王都から50キロほど離れたところで、僕は速度を200km/hに上げた。これならネイルド村まで三時間ほどで辿り着くはずだ。
時々魔獣や獣が前に飛び出してきたりするが、レーダで先に感知して衝突すること無く避けていく。また街道には河や谷なども有るのだが、最大幅でも百メートル程度のものばかりなので全て飛び越えてしまった。
エミリー達と何日もかけて歩いた道程をたった三時間で踏破して僕はネイルド村に辿り着いた。
(一ヶ月ぶりかな?)
大暴走から一月しか過ぎていないのだが、アルシュヌの街に向かってから色々な事があった為、僕としては半年ぐらい前の事のように感じる。
(時刻は0時か、調子に乗ってスピードを出し過ぎたな。)
辺境の村の夜は早い。太陽が暗くなり月が輝き始める頃には門を閉めてしまう。ましてや今は深夜である。魔獣の森側の城壁で見張りをしている冒険者以外は寝ているだろう。
(朝まで待って門を通るか…飛び越えちゃっても良いけど、後々面倒だよな。でも外で野宿は嫌だな~。)
少し考えて、僕はネイルド村の三メートルの石造りの壁を飛び越えて中に入った。大暴走の時に街の中を走り回ったので何処に降りれば良いかは判っている。
(村が動き出すまで仮眠を取っておこう。)
僕は"大地の女神"の教会の軒先を借りて、壁にもたれ掛かってしばらく寝ることにした。
《警告:人間(男)が接近してきます。》
警告によって僕は急速に覚醒させられた。どうやら僕に近づいてくる人がいるようだ。時刻は2時、普通の人が起きている時間ではない。
(もしかして泥棒? 商店なら判るけど"大地の女神"の教会に盗みに入るのか?)
"大地の女神"の教会は平民に信者が多く施しなどの無料奉仕も多いため、此処に泥棒に入るというのはかなり勇気がいるだろう。ネイルド村でそんなことをしたらあっという間に吊るしあげられてしまう。
僕は眠ったフリをして近づいてくる男の様子を伺った。
「サハシ様?」
「えっ…ローダン神父? 何故此処に?」
ランタンを持って現れたのは、ディルック村の教会で神父をしているはずのローダン神父だった。
◇
深夜の屋外で立ち話も何なのでということで、ローダン神父は僕を教会の自分の部屋に招き入れてくれた。
「外で何やら物音がするので様子を見に行ったのですが…まさかサハシ様がおられるとは。」
「申し訳ありません、事情が有って宿に泊まれなくて教会の軒先を借りようとしていました。ところで、ローダン神父は、いつこの村に?」
「二週間前ですか、この村の神父が大暴走の後開拓村へ行きたいと…そこで彼がディルック村の教会に来ることになり、代わりに私がこの村の教会に来ることになったのです。」
「なるほど、そうだったのですか。」
「しかしサハシ様も何故ネイルド村に戻って来られたのですか? エミリーからの手紙では、今アルシュヌの街にいるとあったのですが。それにエミリーは…」
「エミリー達は現在王都にいます。僕はこの村に用があったので、一人でやって来たのです。」
「そうですか。あの娘は元気にしていますでしょうか。サハシ様に迷惑をおかけしていないか心配だったのですが、どうでしょうか?」
「いえ、僕もエミリーがいて助かっています。ただ、僕に付いてきたことで危険な目に遭ってばかりで…申し訳なく思っています。」
「…それも、エミリーの選んだ道です。あの娘の好きなようにさせてやって下さい。」
「そうですか。そう言っていただけると少し楽になりました。…ところで、ローダン神父は神聖魔法の死者蘇生の奇跡ってご存知でしょうか?」
「…サハシ様はそれを何処で?」
「やはり知っておられましたか。僕は王都でエミリーが調べていたので知ったのです。…実は今その奇跡を使える人を探しているのですが、ご存知ありませんか?」
「エミリーがですか? 残念ながら死者蘇生の奇跡を唱えられるほどの方を存じ上げておりません。」
「そうですか。いえ、お気になさらずに。もしかして知っておられたらと思っただけですので。」
「申し訳ありません。…そういえば…昔私が東のリアモル連邦を放浪していた頃、更に東にあるラオの国に唱えられる人がいると話に聞いたとこがあります。ただそれも数十年前の話ですから…今はどうなっているか。」
リアモル連邦は、今いるバイストル王国の東に位置する小さな国が集まってできた連邦国家である。山に囲まれた領土のため農作物の生産量は少ないが、豊富な鉱物資源を産出する鉱山と地下迷宮がいくつか存在している。鉱山が有るため住民の半数がドワーフによって構成されている国もあり、連邦全体でも人口の1/8がドワーフであると言われている。
地下迷宮とドワーフが作る良質な武器を求め冒険者が多数集まって来ており活気にあふれた国である。
そしてリアモル連邦の更に東に位置するのがラオの国である。かなり特殊な宗教国家で、現在は鎖国政策を取っているらしく、周辺国家との行き来はほとんど無い。国教として"天陽神"を崇めており、巫女が国のトップを務めるという邪馬台国のような国らしい。
宗教国家の頂点に立つ巫女であれば死者蘇生の奇跡を唱えることができるかもしれない。
「ローダン神父は昔冒険者だったのですか?」
「はい。若い頃はあちこち旅したものです。まあ、若気の至りと言うものでしょうか。」
ローダン神父は恥ずかしい過去だと笑っていた。
その後、僕はローダン神父にこの一ヶ月程の間に僕とエミリーがやって来たことを話した。ローダン神父は無茶しやがってという顔をしながらその話を聞いてくれた。
◇
月が暗くなり、外が薄明かりに包まれる。僕はローダン神父にお礼を言って教会を出た。人気のない場所で壁を飛び越え村の外に飛び出した。
村の外に出てしばらく待っていると村の門が開く。今度は門を通り普通に村に入りドワーフの鍛冶師ヴォイルの元に向かった。
「ヴォイルさん、お久しぶりです。」
「おお、お前か久しぶりだな。どうした、剣の修理か?」
久しぶりに会ったヴォイルは元気に剣を打っていた。朝早いこともありまだ客は来ていないようだ。
「はい、申し訳ないのですが剣が壊れてしまって…これなんですが。」
僕は恐る恐る歪んでしまい色も灰色に変化してしまった剣をヴォイルに見せた。それをみたヴォイルは目を丸くして驚いていた。
「…オメェ、どうやったらここまで剣を酷使できるんだ。此奴の素材は黒鋼甲虫の角だぞ。折れたり曲がったりはしても色まで変わるなんて普通はありえないぞ。」
僕の手からひったくるようにして剣をヴォイルは奪い取り、その重さでひっくり返りそうになりながら剣の状態を調べていた。
「少し…魔力を流しすぎたようです。」
「少しって…まあいい。これを修理しろってことか?」
「はい、お願いしたいのですが。」
「…無理だな。」
「…無理ですか?」
「ああ、直してやりてえがここまで芯が歪んじまったんじゃ打ちなおしても駄目だ。」
「芯ですか?」
「そう、芯が歪んじまってる。」
ヴォイルによると魔獣素材で武器を作るときにはその素材の芯を生かして作る必要があるらしい。芯があるため武器は魔力を流して強度を上げたり切れ味をあげることができるとの事だった。
僕が魔力を過剰に流してしまったため剣はその芯が歪んでしまった。そのため単に重い剣として打ち直すことはできても以前のような事はできなくなるとヴォイルは言った。
「修理不可能ですか…困りました。剣が使えないとなると…どうすれば…」
「普通の魔獣ならそこらの剣でも十分戦えるだろ? この剣で戦うなんて…またワイバーンとでも戦うつもりか?」
「いえ今度は黒鋼鎧巨人と戦うつもりなんです。」
「はぁ? 黒鋼鎧巨人だあ? ゴーレムなんて、普通剣で戦う魔獣じゃないぞ?」
ヴォイルは驚くより呆れた声で叫んでいた。
僕はヴォイルに黒鋼鎧巨人と戦う事になった経緯を…"死者蘇生アイテム"の件は秘密で…話した。あとこの剣で大水晶陸亀の甲羅を斬り裂いた話もした。
「大水晶陸亀の死体が見つかったと聞いたが、おめえがやったのか?」
「ええ、この剣のお陰ですがなんとか倒せました。…ヴォイルさん、僕が大水晶陸亀を倒したことは秘密にして下さい。」
「ああ、そりゃいいが。まあ話しても誰も信じないだろうけどな。…うむむ、この剣で大水晶陸亀を切り裂けたということなら黒鋼鎧巨人も斬れないことも無いか。」
「普通は斬れないのですか?」
「そりゃ当たり前だろ。同じ素材で作った剣で同じ素材の盾…いや塊かな、それを切れると思うか? 黒鋼鎧巨人なんて黒鋼の塊だ、それを切り裂くなんて普通は考えねえ。そういう時は戦鎚を使うもんだ。」
確かにゲームなどではゴーレムにはハンマー系の武器の相性が良いという扱いであった。しかしハンマーとしても全高三メートルの黒鋼鎧巨人を叩いてダメージを出すとなると、かなり大きい物が必要である。
「しかし、戦鎚なんて魔獣相手にゃ使わないからな、俺も手持ちにはねえ。」
「そうですか…困りました、武器が無いとさすがに僕も戦えません。」
剣が修理できず代わりの武器もないとなると、黒鋼鎧巨人を倒すのは難しい。
ヴォイルは剣を見ながら何か考え込んでいたが、顔を両手でパシンと叩くと「少し待っていろ」と言って店の奥に入っていった。
しばらくして彼が持ってきたのは日本刀、いや150センチメートル程の長さの大太刀だった。
「これを貸してやる。」
ヴォイルはそう言って大太刀を僕に差し出した。
「これは?」
「昔、獣人の小僧…いや俺もあの時は小僧だったな。その獣人から貰ったもんだ。俺が鍛冶師になろうと思ったキッカケを作ってくれた物だ。宝として大事にしまっておいたんだが…これを貸してやる。」
「そんな大事な物を僕に貸してくれるのですか?」
「武器ってのはな使ってなんぼなんだ、飾っておいてもしょうがない。お前に剣を譲った時に俺はそれを思い出したんだ。これも大事に取って置いても宝の持ち腐れだ。お前みたいな奴に使って貰えるならそいつも本望だろう。」
僕はヴォイルから大太刀を受け取る。大太刀は長さの割に軽く、鞘から抜いた刀は水晶ででもできているかのように半透明であった。
《対象オブジェクトのスキャン:開始....終了 構成素材不明、長さ150cm、重量1000グラム》
分析の結果では素材は不明で、重さも鉄に比べ軽い。
「脆そうな感じがしますが、何で出来ているのですか?」
「あいつは金剛甲虫の角って言ってたな。この辺りじゃ見ない魔獣だ。黒鋼甲虫より更に硬い魔獣らしい。こんな素材どうやって加工したか俺には見当もつかない。俺はこの刀を見て、いつかこれを越える剣を作りたいと思って鍛冶師になったんだ。それがあいつとの約束だしな。」
ヴォイルは昔を思い出すかのように遠い目をして言う。
「切れ味は俺が保証する。魔力を通さなくても俺の作った剣より良く切れるし頑丈だ。」
「見かけといい重さといいとてもそんな風に思えないのですが…。」
「ほれ、試しにこれを斬ってみろ。」
ヴォイルが黒鋼甲虫の剣を斬ってみろと地面に突き刺した。
「そんな…折れてしまいませんか?」
「大丈夫だ。俺は黒鋼甲虫の角を切るときにそれを使ったんだ。魔力を通さずに斬ってみろ・」
「では、斬りますよ。」
僕は大太刀で黒鋼甲虫の剣を水平に切り払った。大太刀はするりと抵抗感なく振り切ることが出来た。
チン
澄んだ音が鳴ると黒鋼甲虫の剣の先端が綺麗に切り落とされ床に落ちる。
(凄い。まるで五右衛門の斬○剣のようだな。)
「どうだ。これならいけるだろう。でもお前はやっぱり凄いな。俺じゃそんなに綺麗に切れなかったんだが。」
「僕は太刀の振り方を知っていますから。これは普通の剣のように振るったんじゃ駄目なんです。」
「なるほど、振るうにも何かコツがあったのか。…ついでに魔力を通してみろ。」
僕は言われるままに魔力を通してみる。
「おお、ヒー○サーベルだ。」
大太刀は、青い○星のザ○とは違うモ○ルスーツの剣の様に赤く光り始めた。振り回すと残像が残って面白い。
「おいおい、あんまり振り回すなよ。」
ヴォイルに言われて僕は恥ずかしくなって大大刀を振り回すのを止めた。
(夜店で買ったおもちゃを振り回す子供か僕は。)
「それでもう一度斬ってみろ。」
僕はもう一度黒鋼甲虫の剣を斬ってみた。
ヴォン
今度はジェ○イの騎士が振るう光線剣の様な音と共に剣が粉々に砕け散ってしまった。
「えっ。何これ?」
あまりの破壊力に僕は驚いてしまった。
「…ここまで変わるんだな。あいつもこれに魔力を込めるなら気をつけてくれと言っていたが、ようやく意味が判ったよ。」
ヴォイルは飛び散った剣の破片を拾って断面を見ていた。あれだけ固かった剣がバラバラになり、拾った破片には全て細かくヒビが入っていた。
(生き物を魔力を込めて斬ったら…爆散しちゃうな。)
あまりの威力に少しビビって、僕は魔力を通すのを止めて大大刀を鞘に収めた。
「これを本当に貸してくれるのですか?」
「ああ、並みの武器じゃ黒鋼鎧巨人には効きそうに無いしな。せっかく来たお前を空手で帰らせる理由には行かないからな。」
「判りました。ありがたく借りて行きます。黒鋼鎧巨人を倒したら返しに来ます。」
「その時は黒鋼鎧巨人の素材でも持ってきてくれよ。」
「ええ、期待していて下さい。」
新しい武器大太刀を入手した僕は、ネイルド村を後にした。
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