付与魔術師としての日常へ
なんのかんので3話目です。どうしてこんな世界になっていったかという説明みたいな感じですかね。たぶん。
-日本のとある地方に1人の天才がいました。
-彼は幼いころから自分がどこか他の人たちと違うことに気づいていました。
-周囲の人達も、そんな彼の様子に気付き、何時しか距離をとるようになっていきました。
-それでも彼は必死に周りの人に合わせようと努力します。
-しかし、そんな彼に周囲の人達が示した反応は拒絶でした。
-そして彼は、だんだん1人でいる事が多くなり、やがて部屋に閉じこもる時間が多くなっていきました。
-そんな彼を心配した両親は、彼に1つの世界の入り口を用意しました。
-それが、彼と『仮想現実の世界』との出会いでした。
-その頃は既に、一般家庭にもインターネットの普及が進み、その特性を生かした新しいゲームの分野ができていました。
-多人数同時参加型 RPGゲーム(MassivelyMultiplayer Online RolePlayingGame)通称 MMORPG という分野です。
-彼はこの分野のゲームに夢中になります。
-ゲームの中には彼と似たような境遇の存在が多くいました。だから彼はゲームの中では普通の存在になれたのです。
-ゲームの中でできた仲間達と、数多くの仮想の冒険を繰り返すうちに、多くの絆を手に入れました。
-やがてその絆は、ゲーム内にとどまらず現実の世界でも彼に影響を与えました。
-更に数年が経過すると、彼は周辺の人達とも普通に接することができるようになってきました。
-やがて彼はこう考えました。『いつか自分で最高のMMORPGを造ってみたい』
-そして彼は同じような考えを持った12人の仲間と共に行動を開始します。
-彼は仲間たちと共に資金を集め会社を立ち上げ、数年で当時としては珍しいモーションキャプチャー機能に対応したゲームを作り上げました。
-そのゲームは運にも恵まれ世界中で流行しました。
-そして彼らは、そのゲームを次の段階に進めるべく、日夜研究と開発に励みました。
-次の段階それはバーチャルリアリティ(Virtual Reality)機能を採用したより実体験に近づけることができるMMORPGの開発。
-開発は順調に進んでいきました。
-が…
-その途中で偶然にも彼、そう。天才と呼ばれた彼は見つけてしまいました。
-それは世界を滅ぼしかねない『禁断の扉』と『禁断の鍵』。
-彼は苦悩しました。
-そんな彼の様子に気付き興味をもった1人の男がいました。
-その男は、彼を調べ始めます。
-そして遂に彼の苦悩の原因を突き止めたのです。
-男はその原因の内容を知ると、狂喜乱舞しました。そしてこう考えました。
-『上手くいけば、自分は【世界の主】にも慣れる』と…。
-男は他の仲間たちに隠しながら、着々と準備を進めていきました。
-約1年が経過した時には、彼が気付いた時には既に手遅れな状態になっていました。
-彼は男のその愚行を止めようとしますが、もう少しとのところで取り逃がし、最後のスイッチをもたれたまま、姿を隠されてしまいます。
-それから彼はそれこそ寝食を忘れ、打開策を考え実行しようとします。
-その彼の鬼気迫る様子を心配した他の仲間たちは彼を問い詰めます。
-彼は耐え切れなくなりとうとう彼らに、禁断の存在とそれと関連した消えた男の事を話しました。
-そして最後にこう言いました。『残された時間はおそらくあと半年だ』
-その話を聞いた仲間たちは、彼に協力を申し出、彼もそれを感謝しながら受けました。
-が、調べれば調べるほど、逃げた男の計画は完璧に思え、半年という短期間ではどうすることもできそうにありません。
-それならば…。と彼はこう切り出しました。
-『奴が、自分で世界を自分に都合が良いように変えようとしている時に、自分たちが『禁断の存在』を使って横やりを入れて、できる事ならその権限を奪い取り、最悪失敗しても、奴の世界で生きていける術を持ったモノを、奴の世界に存在させればいい』
-仲間の誰かが問いました。『奴の世界で生きていける術を持ったモノとは何だ』と。
-すると彼は申し訳なさそうに、近くにあったゲームのサーバーに手を置きながら答えました。
-『もしかして、ここに存在する彼らなら或いは…』と。
-彼と付き合いの長い他の仲間たちは、彼の考えを理解し、同時に苦悩しました。自分たちが負わなければならない罪を、何の関係もない世界中のプレイヤー達にまで負わせることになるのかと。
-それでも彼らは決心します。世界をあの男の好きにさせないために、世界中のプレイヤーを巻き込もう。そしてその罪も自分たちで償おうと。そして、どうせなら最高の遊びの場を用意してやろうと。
-それからの彼らの行動は迅速でした。これまで溜め込んだ会社の資金や、個人の資金のほとんどをつぎ込み、既に一部のゲームで使われていた高額VRの接続機器の簡易版の開発と販売を行い、同時に自分たちの運営するMMORPGのVRMMORPG版の開発とデーターの移行作業等々。
-仲間の誰かが言いました。人間死ぬ気になれば大概の事はできるんだなと。
-しかし、それでも結局時間が足らず、自分たちの世界の命運をかけたVRMMORPGは、クローズドテスト等の動作確認ができずに、異例の最初からの正式サービス開始となってしまいました。
-そして、ついに命運を分ける日を迎えます…
◇ ◇ ◇
日本中の学生が、夏休みを迎え早10日。ついでに本日は日曜日。つまり、学生だけでなく、いつもは仕事に精を出している日本全国のお父さん・お母さん方の殆どもお休みの日である。
そんな今日は、世界中のゲームマニア達が待ちに待った日でもある。それは何故かというと、近年稀にみる位のヒットになった、某MMORPGが正式にVR機能に対応し新たに生まれ変わり、しかも元となったMMORPGのデーターも引き継がれての正式サービスの開始の日だからだ。
現在AM8時半。日本のどこにでもありそうな平均的な一軒家の一室。約12畳ほどの部屋の人口密度は今非常に高かった。
「…もう、毎度の事で言っても無駄だと思うけど。なんでここに集まるのさ?しかも今日に限って1人多いし…。」
部屋内にいる4人の内、この部屋の主で、唯一の男である 佐々木一樹(ささきかずき)が自分の部屋で好き勝手に過ごしている、隣家に住む幼馴染の双子の姉妹、水原春・夏(みずはらはる・なつ)とその友人(一樹の友人?でもある)アメリカからの留学生でこよなく日本を愛しているソフィア・エリスに問いかける。
「ん~?うちのお母さんが、『今日はお父さんと出かけてくるから、お隣で遊んでらっしゃい』ってぇ~。」
「家のパパとママ仲がいいし、それにパパ久しぶりのお休みだったから…。」
「ワタシは、記念すべき日を仲のイイ友人とムカエたくてミズハラさんの家にコレもってアソビに来ましタ。」
はぁ~。と溜息をつきつつ、いつもの事とはいえ、年頃の娘達を幼馴染でも一応、男である自分の部屋に遊びに行けという、隣の万年色ボケ夫婦に呆れてしまう。
その友人にしても、流石『発祥の地でゲームがしたくて留学してきた』と公言する美人なんだが残念な…ほんとーに残念なところが幾つか持ち合わせている人物である。
仕方ないなぁと、最早諦めの境地で、トレーに乗せてきたよく冷えた飲み物と、人数分のコップと氷が入った器を部屋のテーブルに置く。
「ほら、ハル。人のベットでゴロゴロしてないで、飲み物持ってきたから起きて…って、ぉぃ。ぱんつ見えてるっつーの。だらしない。あ、なっちゃん悪いんだけど、コップに氷入れてジュース注いでくれる?ソフィーは…お願いだから、そういう濃ゆいモノは自分の部屋で1人で読んでね…。」
男友達がこの場面見てたらどう思うんだろうなぁ。と、それぞれが好きな飲み物を手に、自分たちが持ち込んだスナック菓子を食べながら雑談している様子を眺める。
「ところでさぁ~。そふぃーってキャラの調整・登録はすませてるよね~?」
バリンと固焼き醤油せんべいを音を出しながら食べているハルがソフィーに尋ねる。
「ハイ。もちろんデス。トコロで、ミナサンその後タイチョウがオカシクなりませんでしたカ?」
ポリポリと、リスのように棒状のスナック菓子にチョコレートが纏わりついた日本人の国民的お菓子を食べながらソフィーが答えた。
「体調ですか?…そう言えば、登録してログアウトした後、ハル姉さんも私も2・3日少し熱が出ましたね。カズ君はどうでしたか?」
水羊羹を付属のスプーンで食べていた夏が自分に訊いてきた。
「そういえば自分も、一寸頭が痛かったかな。流石に体温は計らなかったけど、熱もあったかもね。あー、後、なんでか分かんないけど、少し体中が筋肉痛になったね。今はもう治ったけどさ。」
と、飲み物と一緒に持ってきた手製のプリンの出来に満足しながら答える。…うむ、プリン分は正義である。
今から丁度1週間前から、今日この部屋に集まる原因にもなった、某VRMMORPGのキャラクターの事前登録及び調整登録があった。
自分とハルとナツは、元になったMMORPGのクローズドテストから参加していて、更にゲームの世界では特殊な環境に身を置いていた為、他のユーザーよりも1日早く登録作業は終わらせていた。この事は、ソフィーは知らない。
知っているのは、全部で10人のプレイヤーと運営事務局の担当者だけである。登録した後、動作確認や所持スキル・アイテムの確認作業等で、約半日を費やした。
動作テスト中の仮想的へのスキルによる攻撃映像なんかは、多少アニメっぽいかなぁとも感じたが十分に満足できる出来たった。
まぁ、不満があるといえば、キャラクターの外見がほとんど現実の自分のままで、あまりいじれなかったってところくらいである。…自分、見た目普通なので。せめてゲームの中でくらいねぇ…。結局いじったのは、目をパッチリさせて髪色を白銀色っぽくした位だった。
そんな事を考えていると、
「全員が体調不良を感じたんですか…。ところでカズ君。それってカズ君が作ったんですよね?」
キランと目を光らせながら、夏が自分の手にあるプリンを見る。
「ん~。あぁ。みんなの分も作ってあるから…って、早いなオィ。」
ずだだだだだだだだ・・・・・・
自分の答えも最後まで聞かずに、キッチンにある冷蔵庫に向かってダッシュするハル。
ちなみに、自分の周辺にいる親しい同年代の女性たちは殆ど、料理は全滅に近い。
その後、自分手製のプリンを食べながら、ゲーム内の事について雑談していると、サービス開始時間であるAM10時15分前になった。
「そろそろ時間だね。準備しようか。」
そう一樹が告げると、とりあえず、全員が順番にトイレに行き用を済ませ、接続機器である「ヘッドギア」を頭に装着する。
電源を入れてしばらくすると、眼前のゴーグル型モニタにサービス開始3分前の表示が。
これから訪れるであろう、未知の体験にドキドキしながら静かにその時を待つ。
「(きっと世界中で同じようにドキドキしてる人が沢山いるんだろうな…。)」
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ズドン
その瞬間、何かが世界に重くのしかかり、全てが変わった。
ちょっと文面が変かなと。後ほど修正入れます。読んだいただいてる優しい方がいればですがけど…。