プロローグ1 付与魔術師は思い出す
間違った方を掲載してしまいました…。
窓際の席から何気なく既に見慣れた外の風景に目を向ける。『始まりの日』と呼ばれる日から約1年半。よくもまぁ、あの混沌とした状況からここまで立ち直ったものだと、自分も含めた日本人の国民性に改めて感心する。
『始まりの日』は、世界中で流行した、あるMMORPGが、VRMMORPGに移行される日だった。
元のMMORPGにしても当時としても画期的だったモーションキャプチャ(Motion Capture)機能を搭載し、又、必要な機器も家庭でも購入できる価格帯とあって、話題を呼び爆発的な勢いで世界中に流行していった。
それに合わせて、実際の言葉を含めた動作や知識がゲームに大きな影響を与えたため、このゲームの為だけに熱心に習い事をする人が年代に関係なく増え、特に子供を持つ親達は「これは良い」とばかりに、熱心に自分の子供達にすすめていた事も流行した要因の一つにもなった。
そして始まった当初から、その頃ようやく医療目的で利用され始めたバーチャルリアリティ(Virtual Reality)システムを将来的に導入するだろうと噂されていたので、ある意味、世界中のプレイヤー達が待ちに待った日とも言えた。
そんな人達の中に自分と、隣に住む双子の姉妹もいた訳だ。
姉妹がクローズドテストに当選し、ついでとばかりに彼女たちが(勝手に)応募していた自分の分も当選していたようで…。やるつもりは全く無かったが、彼女たちの両親に『娘たちが心配だから』と泣きつかれ、意外なことに自分の両親までもが『やれ』との御命令。
やらなければ小遣いの減額との理不尽なお言葉付で。
仕方ないなぁと、実際に始めてみたら思いのほか面白く、どんどんハマってしまい、クローズドテストが終わった時点で、3人ともテストプレーヤーの成績のトップ10入りという結果。テスト終了後、運営事務局から『TOP10に入ったプレイヤー様へ』というメールが届き、中身を見てみれば、TOP10に入ったプレイヤーにはオープンテストと正式サービス開始時に、ある特典がつくとの連絡メールだった。
そしてオープンテストが始まり、ゲームにINしてみたら、特典というのが『ゲーム内唯一の職業』で、自分だけが就ける職業が用意されていた訳だ。
自分に用意されていたのは、後々、色々と…本当に色々と面倒(?)な事に巻き込まれる事になる『付与魔術者』と呼ばれる魔法職の1つだった。
この職業が持つ特殊技能である『付与魔術』だが、説明によると物体に魔力を付与することでそれらを生み出す術に長けた技能とのこと。
ようするに、物体に好きな魔法効果をつけることができるという、位置づけとしては、火力がメインの魔法職というよりも、どちらかいうと、同じ一般向けの魔法職の1つである『支援魔術師』が持つ『支援魔法』という、サポート向けの技能に近いものだった。
近接戦闘が大好きな自分としては一寸残念だったのだが、まぁ折角もらった職業だし魔法職も面白そうだと、いつも如く幼馴染達とテスト時に知り合った友人達(後のギルドメンバー)とパーティーを組んでフィールドで狩りをする事になった。
そして色々試しながら次々と戦闘をこなしていく。
2時間もすると、戦闘の流れに従って付与魔術『エンチャンテッド・ウェポン』(武器強化)を近接戦闘担当者に掛ける事にも慣れてきて、支援魔法もなかなか楽しいなぁと感じ始めていた。
何度目かの戦闘が終了した時、その異変に気付いたのは姉妹の姉だった。その時言った言葉が、後の自分の進むべき道をある意味決定した言葉だった。
『あれぇ?戦闘終わったのに、武器強化の効果消えてないよ?』
その戦闘までは戦闘が終わると同時に武器強化の効果も切れていたので、そんな仕様だとばかり思っていたが、その時は戦闘が終わったにもかかわらず、武器強化のエフェクトが切れていない。
その後色々と検証した結果、どうやら特定の条件を満たすと、付与魔術師の掛けた支援魔法は永続する事がある事が判明。
当然色々特殊な条件と制限発生するが、これが『付与魔術師』が他の職業と違う、唯一無二のある意味最強の特徴だった。
プロローグですので短めです。自分=一樹に改名です。