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第7話:私の夢
町の朝は、
静かだった。
……いや、正確には分からない。
私には、
音がない。
平民として暮らし始めて、
三か月が経った。
小さな部屋。
最低限の家具。
窓から差し込む光。
貴族だった頃の生活とは、
何もかもが違う。
でも、不思議と――
苦しくはなかった。
(……静か)
この世界は、
私を責めない。
誰も、
悪役令嬢だと囁かない。
誰も、
妹の名前を出さない。
ただ、
今日を生きるだけ。
私は、
花屋を開くつもりだった。
それだけは、
最初から決めている。
会話がなくても、
花は育てられる。
値段は、
紙に書けばいい。
注文も、
文字で受ければいい。
(……できる)
そう、
何度も自分に言い聞かせた。
市場を歩き、
土と鉢を見て回る。
道端に咲く花を、
無意識に目で追う。
どの花を、
どの季節に並べるか。
どんな店にするか。
頭の中で、
何度も思い描く。
植物園にも、
足を運んだ。
背の高い木々。
整えられた花壇。
静かに咲く花たちは、
それぞれ違う表情をしている。
日差し。
水分。
風の通り。
花の状態が、
一目で分かる。
私は、
花壇の前で立ち止まり、
しばらく眺めていた。
この町で、
花屋を開く。
そのために、
私はここにいる。
過去も、
名前も、
立場も関係ない。
新しい人生を歩むと、そう決めたのだから。




