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第2話:妹が可愛すぎる

物語の中で、

私を破滅に導く存在は――妹だった。


だからといって、

生まれてもいない命を憎めるほど、私は強くなかった。


「シェリア、あなたに妹ができるのよ」


母がそう言った瞬間、

私の心臓は、ぎゅっと音を立てて縮んだ気がした。


――来た。


原作通りの展開。


私の退場を決定づける、

“あの子”が、生まれてくる。


(この子が生まれたら……)


私は、頭の中で何度も未来をなぞった。


妹が生まれる。

婚約者が妹を好きになる。

私は嫉妬し、壊れていく。

婚約破棄。修道院。


十五ページ。


――終わり。


そんな未来しか、思い浮かばなかった。


最低だと分かっている。

でも、正直に言えば――怖かった。


この子が生まれた瞬間から、

私は死へ向かって歩き出すのではないか、と。


(いっそ……)


お腹の中で、

この子が――消えてしまえばいいのに。


そう思ってしまったことも、ある。


そんなことを考える自分が、どうしようもなく醜くて、夜、ひとりで泣いた。


でも。


父と母は、私を溺愛してくれていた。


「シェリアは、お姉ちゃんになるんだぞ」

「きっと、可愛い妹よ」


その二人が、

悲しむ未来だけは――見たくなかった。


そして。


妹は、生まれてしまった。


「……シシィ」


原作通りの名前。


母の腕の中で、

真っ赤な顔をして、必死に泣いていた。


……小さかった。


壊れてしまいそうなくらい、

小さくて、柔らかくて。


「……」


私は、しばらく声が出なかった。


破滅フラグ。

二番目の悪役令嬢。

未来の転落者。


そう分かっているのに。


「……かわいい……」


気づいたら、そう呟いていた。


どうしようもなく、可愛かった。


泣き声も、

小さな手も、

一生懸命に生きている、その全部が。


(……守りたい)


その瞬間、

私の中で、何かが決まった。


たとえこの子が、

私を破滅へ導く存在だとしても。


それでも。


この子を、守る。


それが――

私がこの世界で生きる理由になった。


それからの私は、

完全に“妹馬鹿”だった。


シシィが泣けば駆けつけ、

笑えば一緒に笑った。


服はおそろい。

お菓子は半分こ。

絵本も、手をつないで読む。


両親は苦笑しながら言った。


「そんなにくっついていたら、離れられなくなるわよ?」


でも、構わなかった。


だって、

いつか――離れる未来を知っているから。


なら、せめて今だけは。


気づけば、十年が経っていた。


私は十三歳。

シシィは十歳。


物語が始まるまで、

あと――一年半。


(やばい……)


さすがに、焦り始めた。


でも。


――おかしい。


原作では、

シシィはもっと奔放で、恋に一直線な子だった。


でも、今のシシィは違う。


私の婚約者、ルーカスを見る視線は、

確かに――恋をしている。


けれど。


隠している。

必死に、隠そうとしている。


見せびらかすこともない。

私を困らせるようなことも、しない。


(……もしかして)


私が転生したことで、

物語は、変わってしまった?


変えてしまった?


怖さと、

ほんの少しの希望が、胸に混じる。


(でも……)


できることなら。


この大好きな世界で、

誰も、破滅しないでほしい。


悪役令嬢でもいい。

私が犠牲になるなら、それでもいい。


だから――。


(どうか……)


女神様。


どうか、

この子を――シシィを。


守ってください。


私は、まだ知らなかった。


この願いが、

いずれ“奇跡”という形で返ってくることを。


そして、その代償が、

私の未来を大きく変えることを――。


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