番外編:シシィ視点 大好きな黒髪
結婚式の日。
私は、
花嫁衣装を着ながら、
心の奥で叫んでいた。
(お姉様がブーケを作ってくれたと聞いたけれど……)
(もしかしたら…もしかしたら来てくれているかも……)
そして――
式場で、
私はお姉さまを見つけた。
黒髪の女性。
平民の姿。
でも、
間違えようがなかった。
その隣にいた、
この国で知らない人はいないだろう、騎士団長。
二人が並んだ瞬間、
胸が、すとんと落ち着いた。
(……ああ)
(お姉さまは、
独りじゃなかった)
「幸せになれたのね」
そう言ったとき、
私は本心で笑っていた。
お姉さまの結婚が、
一週間後に決まったと聞いたとき。
正直、
驚いた。
「早すぎない……?」
でも、
不思議と不安はなかった。
あの人なら。
アレクシード義兄様なら。
お姉さまを、
守ってくれる。
「シェリア様って冷たいイメージがあったけど、とっても可憐で可愛らしい方なのね。お話ししてみたいわ。」
私は、
静かに笑った。
(……知ってる)
だって。
私は、
ずっと見てきた。
自分の幸せを削って、
誰かを守る背中。
涙を隠して、
前に立つ姿。
ただ、誰にも見えないように隠してきただけ。
もし、
物語があるのなら。
その主人公は、
間違いなく――
自分を犠牲にしてでも周りを幸せにしようとするお姉様だろう。
そしてきっとお姉様が無理しないように助けてくれるヒーローはアレクシード義兄様だ。
私は、
お姉さまの妹でいられて、
誇りに思う。
そして、
こう願う。
これからは、
お姉さまが
誰よりも愛される物語でありますように。




