第13話:お気に入りの金髪
ついに、
妹――シシィの結婚式の日が来た。
私は、
鏡の前に立っていた。
黒髪の女性が、
そこに映っている。
……私だ。
本当は、
金色の髪が好きだ。
シシィと同じ色だから。
でも今日は、
知られてはいけない。
私は、
平民の花屋・リア。
式場に入ると、
祝福の空気に包まれた。
音は聞こえない。
それでも、
幸せな雰囲気は
はっきり伝わってくる。
私は、
遠縁の親族として
目立たない席についた。
それで、
いいはずだった。
――ざわり。
空気が揺れた。
周囲の視線が、
一斉に入口へ向く。
そこに立っていたのは、
騎士団の正装をした男性。
(……まさか)
フェリシオン家嫡男。
アレクシード様。
胸が、
強く鳴った。
(どうして……)
目を逸らした。
見つかりたくない。
話しかけられたら、困る。
だが。
彼は、
迷わずこちらへ向かってくる。
「久しぶりだな、リア」
はっきりとした口の動き。
周囲が、
ざわついた。
私は、
とぼけた。
「……人違いでは?」
彼は、
小さく笑う。
「恋人の顔を
間違えるほど
俺は鈍くない」
そのまま、
腕を取られた。
抵抗する間もなく、
控え室へ連れていかれる。
扉が閉まり、
二人きりになる。
「どういうつもりですか」
私は、問い詰めた。
「恋人だなんて……」
彼は、
迷いなく答えた。
「嘘じゃない」
「俺は、
最初から
お前しか見ていない」
ゆっくり。
はっきり。
口の動きが、
読める。
「シェリア」
「君が、好きだ」
胸が、
いっぱいになる。
思わず、
呟いた。
「……聞こえる」
彼の目が、
大きく見開かれる。
「……え?」
「聞こえるの」
「あなたの声が」
涙が、
溢れた。
「好き……」
「私も、
あなたが好き」
彼は、
静かに微笑んだ。
「シェリア」
「愛している」
「俺と、
結婚してくれ」
私は、
何度も頷いた。
「……はい」
少し落ち着いてから、
彼が言った。
「……待たせては行けないから、妹君に挨拶へ行こうか」
控え室を出る。
花嫁姿のシシィは、
とても綺麗だった。
彼女は、
私を見るなり
目を見開く。
「……お姉様?」
私は、
小さく頷いた。
もう、
隠す必要はなかった。
アレクシード様が、
はっきり言う。
「彼女は、
俺の婚約者だ」
シシィは、
一瞬驚いたあと、
泣きそうな顔でくしゃっと笑った。
「そう……よかった。お姉様、幸せになれたのね。」
その笑顔を見て、
胸が温かくなった。




