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第11話:約束を破るまで

それから、

私は毎日植物園に通った。


アレクシード様も、

本当に毎日来た。


最初は、

ただ花を見ているだけ。


言葉も、

ほとんどない。


でも、

少しずつ変わった。


彼は、

私が指さした花を

じっと見るようになった。


私が説明すると、

真剣に聞く。


(……聞こえなくても、

ちゃんと向き合ってくれる)


それが、

嬉しかった。


ある日。


花壇の端で、

子どもが転びそうになった。


私は、

反射的に手を伸ばす。


――同時に、

アレクシード様も。


二人の手が、

同じ子どもを支えた。


子どもは、

にこっと笑って去っていく。


残ったのは、

少し近すぎる距離。


私は、

慌てて手を引っ込めた。


彼は、

気まずそうに視線を逸らす。


(……女嫌い、なのよね)


それでも。


彼は、

私に冷たい視線を向けなかった。


別の日。


私は、

紙に書いて見せた。


【耳が聞こえません】


彼は、

一瞬だけ驚いたあと、

何も言わずに頷いた。


それだけ。


同情も、

哀れみもない。


その日から。


彼は、

はっきり口を動かすようになった。


ゆっくり。

読みやすく


(……優しい)


気づいてしまった。


私は、

彼の隣にいる時間が――

好きだ。


でも。


同時に、

分かっていた。


(……私は、平民)


(もう、貴族には戻れない)


そんなある日。


私は、

紙に書いた。


【もうすぐ、

妹の結婚式があります】


彼の表情が、

少しだけ和らぐ。


「……そうか」


「お前が、

ブーケを作るのか?」


私は、

頷いた。


「はい」


「世界一、

幸せな花を」


そのとき、

胸が少しだけ痛んだ。


(……結婚式が終わったら)


(私は、

ここを離れる)


彼を、

好きになりすぎる前に。

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