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第1話:15ページの悪役令嬢


――私が死ぬまで、あと何ページ?


そう思ったのは、三歳のときだった。


高熱を出し、十日ほど生死をさまよったあと、

私は前世の記憶を思い出した。

自分が、別の世界で生きていたこと。

そして――ここが、私の大好きだった小説の世界だということを。


『本物のヒロインはだれ?』


通称、『本ヒロ』


前世で夢中になって読んでいた、“悪役令嬢が次々と破滅していく”物語。


(……うそ……でしょ……)


最初は、ただただ興奮した。


大好きな物語の世界。

剣と魔法、貴族と王族、陰謀と恋。

そんな世界に生まれ変わったのだと思ったから。


でも、その喜びは――

たった一つの事実を思い出した瞬間、音を立てて崩れ落ちた。


私は、この物語の()()()()()()()最初の悪役令嬢だった。




『本ヒロ』は、伯爵令嬢シェリア・ヒルレールの破滅から始まる。


――つまり、私。


物語冒頭。

ヒルレール伯爵家の令嬢シェリアは、

侯爵令息ルーカスの婚約者として登場する。


彼女は婚約者を心から愛していた。

だからこそ、気づいてしまう。


婚約者の視線が、

自分ではなく――妹のシシィに向けられていることに。


最初は、偶然だと思おうとした。

ただの気のせいだと。


でも、やがて二人は惹かれ合い、

それに気づいたシェリアは――激怒する。


妹に意地悪をし、周囲に当たり散らし、

“悪役令嬢”のように振る舞うようになる。


結果。


婚約破棄。

そして、修道院送り。


登場から――十五ページ。


それが、シェリア・ヒルレールの最期だった。


(短すぎない?)


前世の私は、そこで一度ページを閉じたのを覚えている。


だが、『本ヒロ』はそこで終わらない。


次に“悪役令嬢”になるのは、

――妹のシシィだ。


姉の婚約者と結ばれたシシィは、

その後、第一王子に一目惚れしたと言い出す。


だが、第一王子は国を第一に考える人物で、

恋愛にうつつを抜かすような人ではなかった。


そこでシシィは、

「実は王子と想い合っている」

「秘密で付き合っている」

そんな噂を流し始める。


噂好きの貴族たちは食いついた。


――女に興味がないと言われていた第一王子が!?


だが、噂はやがて問題となり、

王子の正式な婚約者である公爵令嬢を陥れようとしたとして断罪される。


爵位剥奪。

領地没収。

平民落ち。


これで、二人目の悪役令嬢は退場。


3人目の悪役令嬢は隣国の侯爵令嬢。


今度は、第一王子の婚約者が、

隣国の侯爵令嬢を断罪する。


その侯爵令嬢は、婚約者のいる男性たちと関係を持つ

“毒婦”として描かれていた。


だが――

物語は、そこで終わらなかった。


数年後。

第一王子の婚約者である公爵令嬢の家が、

長年にわたる横領を行っていたことが発覚する。


本人も、積極的に悪事に関わっていた。


王家を欺いた罪は重く、

公爵家は――一族皆処刑。


彼女が最後になる四人目の悪役令嬢。

そうして、また物語は血で染まる。



(いや……ヒロイン、どこ?)


前世の私は、続編を待たずして死んだ。


続きは分からない。

予告には、女の人の後ろ姿だけが描かれていた。


彼女こそが、

“本物のヒロイン”なのだろうか。



――そして今。


私は、その物語の中で、

最初に破滅する役として生まれてしまった。


シェリア・ヒルレール伯爵令嬢

これが今の私の名前。


三歳の私は、震えながら思った。


(この世界……間違えたら、死ぬ)


物語は、もう始まっている。


そして、私の退場は――

もう、すぐそこだ。


後ろ姿っていいよね(?)

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