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かしましメイク女子会

「ああ、やっぱりキャリーの顔は愛らしすぎるわ。」

「まったく!ではアイラインを少しキツめに入れてみては。」

「メグ、目頭のシャドウももう少しキツく。」

「ああ、ほら、動かないで。キャリー。」


「ご……ごめんなさい……。」


パタパタ

サッサ


私は今学園のガゼボで顔を優しく撫で回されている。


「鼻筋を通すためにもう少し縦のラインにシャドウをもっと入れて。」


「大丈夫よキャリー。気にしなくてもドレスが似合うスッとした鼻になるわ!」


「大体ドレスには似合わないと言うだけで、鼻が丸い事なんて気にする事ないじゃないの。制服にはあなたのような顔立ちの方があうわ。」


「そうよ。私達はほぼ制服を着ているのだからあなたの丸い鼻が羨ましいくらいよ。」



は、恥ずかしい……!


私がメイクが似合わないと言ったからだろう、皆で存分に慰めてくれている。

でも過剰に褒め過ぎだわ……。



「これでいいわ!きっとこれでお兄様もキャリーに夢中よ!」


フーとセレーナ様達は息をつく。


朝から皆で私にメイクをほどこしてくれていた。

それもこれもアラン様のいる高等部に行くために。





どうしてそんな事になったのかといえば、今朝の事。


いつものように朝セレーナ様が迎えにきてくれ、その馬車の中でアベル様からの手紙を私に手渡しながら言った。


「キャリー、おそらくその手紙に書いてあると思うけれど、来月に予定されていた顔合わせのお茶会が延期になったそうよ。」


「まあ。それはとても残念だわ……。」


楽しみにしていたアラン様と顔を合わせる機会。

王都に来る前からこのお茶会は決まっていた。

だからこそ今は学校で会うことが出来なくても、このお茶会があるからと気にしていなかったけれど……延期。

思わず手渡されたばかりのアラン様からのお手紙をじっと見つめる。


「……そんなに落ち込まないで頂戴。お兄様はどうやらお友達が主催の勉強会に夢中になっていて……日にちが重なってしまうそうよ。今更本当に困ったものだわ!婚約者とのお茶会より優先してしまうなんて。」


愛らしく眉を釣り上げたセレーナ様に慌てて私は言った。


「いえ、いいの。ディテイブ侯爵令息の勉強会は社交会でも話題の勉強会だと聞いているわ。私もそちらを優先してもらって構わないと思っているの。」


本音だった。


ディテイブ侯爵令息の勉強会は学園の教師内でも評価が高く、毎回テーマを決め皆で意見を出し合う集まり、とおば様が言っていた。

毎回テーマも参加者の顔ぶれも違う会では一回一回が貴重だろう。

許されるなら私だって参加したいくらいだ。


とはいえ残念じゃないといえば嘘になる。


それを見透かしたのかセレーナ様が唐突に声を上げた。


「そうよ!だったら会いに行けばいいのよ、キャリー!」



「え?」


「せっかく同じ学校なのよ?この機会を逃すことはないわ!大丈夫!私に任せて頂戴!!お兄様の好みの悪役令嬢のような妖艶な女性に大変身よ!」


そう言い放った。




そしてこの状況なのだ。




「そうして最後はこれ。私のウィッグよ。」


エイミー様が差し出したのはブロンドのウィッグ。

ぽんと頭にかぶせられる。


「私は髪の量が少ないから派手な髪型にしたいときはよく使っているのよ。」


もうアップにセットされたブロンドのウィッグに皆で髪飾りをつけてくれる。


「髪色で随分印象が変わるわね!どこから見ても悪役令嬢よ!」


私を見てセレーナ様が興奮気味に言うと鏡を差し出してくれた。


「さあ!すっかり大人っぽくなってお兄様の好みピッタリだわ!」


そうなのかしら……?


半信半疑になりながら差し出された鏡を覗き込む。

と、絶句した。


ブロンドの髪に、通った鼻筋。目はキツめの印象になりいつもより大きく見える。


「え?これ、本当に私なの?」


思わず口にすると皆ドッと笑った。

やり切った達成感からか、皆やたらテンションが高い。


「そうよ!キャリーよ!」

「似合っているわ、自信持ってよキャリー!」

「ああ、アベル様どんな顔をなさるかしら!楽しみだわ!」


大喜びの皆を尻目に、普段メイクをしない私には違和感でいっぱいだった。

まじまじと鏡を覗き込む。


すると、ポンと肩に手を置かれる。


「ふふふ、まだ驚いてる。でもキャリーがほとんどメイクしていない事は気になっていたのよ。学園であまりメイクのしていない令嬢なんていないもの。そんなのまったくもってお兄様の好みと……悪役令嬢の真逆よ?キャリー。」



言われて初めてはたと気付く。


確かにそうだわ…………


おば様に半強制的にメイクはされていた。

けれどもメイクされた顔に慣れなくて、とにかく薄く薄くと言っていた。

でもそれが学園では異端だったなんて!


言われなければ気付かなかったことが恥ずかしく、顔が赤くなる。


そんな私を気にもせずにセレーナ様はパチンと手を胸の前で合わせた。


「さあ!早くしないと高等部の校舎に行く前に授業のベルがなってしまうわ!話し方は教えた通り、甲高い声は勿論、ちゃんと語尾も伸ばすのよ?!」


「頑張るのよ、キャリー!」


「幸運を祈っているわ!」


そうして別人のようになった私を皆はエールと共に高等部へ送り出したのだった。


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