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悪役令嬢はあなたのために  作者: くきの助


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アランと煙草

来た


丘の上から野原を見下ろしていると、可愛い小リスが走っているのが見える。


俺はゆっくり煙草の火を消した。

しばらくすると後ろからカサカサと音が聞こえ、ひょこと小リスが顔を出す。


「ああ!今日こそ私のほうが早いと思ったのに……!」


少し拗ねたような顔をして不満げにリーネが言うので俺は含み笑いをする。


「たまたまだよ。ここに来るのは休憩も兼ねているからね。」


嘘だ。


本当は木の間からひょっこりと顔を出すリーネが見たくてわざとリーネより早く来ている。


私たちが再会した丘で待ち合わせてランチをする様になって数週間が過ぎた。


「せっかく今日は兄様に邪魔されずランチに向かえると張り切ったのですよ。」


「今日はお二人は遅れてくるのだったね。」


「私まで一緒に遅れて行くように引き止められそうになりましたが、お母様が適当にあしらって私を馬車に乗せてくださいました。」


リーネはそう言って目元をくしゃりとさせて俺の好きな笑顔を見せてくれた。






この丘で気持ちを確かめ合ったあの日。

迎えに来たリーネの兄達に随分詰められた。


それも当然の話だ。

俺にはリーネに接近禁止が言い渡されている。


ギブ殿は怒り狂い、ロビン殿は諦めたような呆れたような顔をしていた。


もう一度リーネの横に立つ権利が欲しいと、近々挨拶に行きたいと申し出ればギブ殿の怒りは凄まじかった。

ロビン殿が何とかその場を治めてくれたが、すぐには受け入れられないとはっきり言われた。


その日はそれで引いたが……そんな位で諦めるくらいなら最初から許可を申し出る事などしない。

ハーフナー伯に手紙を送り、領主邸に行き、接近禁止を破ったことの謝罪と、これからも禁を破る覚悟でいる事を伝えた。


ハーフナー伯爵家は仲の良いあたたかい家族だ。

結局はリーネの気持ちが優先され、とりあえず昼のランチが許されている。


「いつだってこちらから断れるんだぞ?わかったな?俺は反対だと言うことを決っっして忘れるでないぞ?!」


というギブ殿の睨みを受け、リーネは昼にいつもギブ殿に引き伸ばされながら丘に来るためいつも遅刻気味だ。



それでもいい。

会えないわけじゃない。


ギブ殿もロビン殿も、色々言いながらも丘の上では2人にしてくれる。


まだまだ問題は山積みで、ハーフナー伯もランチを一緒に摂る事を許してくれただけに過ぎない。

エイレン次期侯爵に至っては何と言われるのか想像もつかない。


だからと言ってもう二度と手放すなど出来そうにない。

リーネが望んでくれる限り決して諦めるものか。




近くまで来たリーネをそっと抱きしめると、いつものように前髪を撫であげる。

可愛い額に口付けを落とすと、こめかみや瞼や頬にも止まらないかのように落としていく。


そうしてそこでグッと何とか自分を律する。


この間は失敗してしまった。


口付けを降らせる私にリーネは最初こそ恥ずかしそうに俯いていたが、ようやく慣れた様子で顔を赤らめながらも目元をくしゃりとさせ「くすぐったいです」とくすくす笑うようになっていた。

肩をすくめ俺の胸に頬を擦り寄せるリーネは可愛らしかった。


可愛すぎた。


あっと思った時にはもう遅い。

とうとうリーネの愛らしい唇に自分の唇を重ねてしまった。


リーネは顔を真っ赤にし、俯いた後はこちらを全く見てくれなくなった。



この可愛い小リスを怖がらせてはいけない。



ゆっくりゆっくりと進めるはずだったのに、理性なんて脆いものだった。


だから今日も慎重に自分を律するのだ。



と、何故かリーネが立ち向かうように腕の中で俺を見上げた。


「アラン様……私幸せです。」


そう言ったかと思うとリーネの顔が俺に近付いてきた。


ふわりと唇に柔らかいものが触れる。


バチン!と頭の中で何かが弾けた。


頭が真っ白になった次の瞬間噛み付くようにリーネの唇を奪っていた。


ああだから!

学んだはずじゃないか

リーネの前に理性なんて脆いものだと!


小リスを捕食するかのように唇を貪って止まらない。


こんな簡単に理性を飛ばすなどあり得ない。


もう1人の自分は激しく俺を止めると言うのに、何故言う事を聞かないんだ!



「んっ……」


リーネが声を漏らしたのが合図の様に我に返る。

ぱ、と音を立てて唇が離れた。


するとリーネが力が抜けたように俺にもたれかかると、コホコホと咳き込んだ。


やり過ぎを悟り、青褪める。


気遣う言葉を口にしようとして、ああそうかと思い当たる。


「すまない。さっきまで煙草を吸っていたから……」


「アラン様……煙草を……?」


コホ……とまた少し咳き込んでから腕の中からちょっと俺を見て意外そうに眉を上げる。


「いや、でももうやめるよ。」


「私は気には……」

俺がリーネの髪に触れ、指を通すと彼女は言葉を切った。


愛おしい


そっと髪に唇を落とすと、また抱き寄せた。


「もう指を咥える必要はないんだ。」


腕の中でリーネが困惑しているのがわかる。

俺はブルネットの髪に顔を埋める。


いいんだ。わからなくて。


囁くように言うと、確かめるようにギュッと抱きしめた。


君が腕の中にいる奇跡。


それだけでいいんだ。



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