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悪役令嬢はあなたのために  作者: くきの助


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止まない雨は

沈黙がまた落ちる。

ザンザンと雨の音だけが激しく辺りを包む。


そのせいだろうか……


自分の声に違う声も混ざった気がした。

雨音が激し過ぎて自分の声すらはっきり聞こえない、でもそんな場面でならもう一度言えそうな気がした。


「好きなんです…………アラン様が……」

「好きなんだ。リーネの事が。」


確かめるようにもう一度言うとまた声が混ざり合う。



思わず首を傾けると、アラン様の顔も傾く。

しばし2人で見つめ合う。


「今なんて……」

「今何と……」


2人で同時に口を開き同時に口を噤んだ。


涙はいつの間にやら引っ込んでいた。

もはやただの水滴の様に頬に残っている涙をそっとアラン様が指先で拭いながら私に問うた。


「私の聞き間違いでなければ……自惚れていいのだろうか……?」


自惚れ……?


もう頭の中は真っ白になっていた。


「いや」


アラン様は視線を外しポソリと言うとまた私に向き直った。


「勘違いでも構わない。どう思われようとも、もう一度言わせてほしい。」


じっと見つめてくるアラン様に私はどうしていいのか分からず言葉も出ない。

黙ったままの私の態度を肯定と捉えたのだろう。


アラン様は大きく息を吸うと私を見つめて言った。


「王都で君と過ごした三ヶ月が私の人生のすべてだ。」


じっと私の目を見つめるアラン様から私も目が離せなくなる。


「好きだ。リーネ。」


はっきりと私に告げた。







…………え?




「わわわ私ですか?!」



混乱し頭真っ白になった私の口から出た第一声はこんな言葉だった。



「メッメッメグ様は?!」


アラン様は眉を顰めた。


「……メ?誰だ?」


「ええ!」


誰って!!


「カーティス子爵令嬢メグ様です!あなたの想い人ではないのですか!!」


アラン様はポカンとした顔をしている。

とはいえそんな顔も美しい。

思ったのも束の間。

怪訝な表情に変わる。


「なぜここにカーティス子爵令嬢が出てくるのかわからないが、私の想い人は君だ。」


思いもしなかった言葉に私は何も言えなくなる。


黙り込んだ私をアラン様が寂しげに見つめた。

ダークブルーの瞳を見つめると掴まれたように胸が苦しくなる。


「すまない。困らせてしまったようだ。忘れてくれ。接近禁止を破ったのだから、相応の罰も受けよう。」


フイと顔を背けられた。


「先程より少しは雨がマシになってきたようだ。私が先に戻り、リーネがここにいることをハーフナー領の誰かに伝えよう。」


後ろを向いてしまったアラン様が肩越しに告げる。


「すまなかった、リーネ……いや、ハーフナー伯爵令嬢。困らせるつもりはなかったんだ。」


「……まだ私を……リーネと呼んでくれるのですか……?」


息を呑み私が気になった事はそんなことだった。


アラン様が私を振り返る。


私は俯いた。


恨まれていると思っていた。

私がアラン様を好きになったせいで、何もかもを台無しにしたのだと。


認めたくなかった。

恥ずかしかった。


台無しにしたくせに

あれだけ拒まれたくせに

未だアラン様を忘れられない自分が。


でもリーネと呼んでくれた。

その事で頭がいっぱいになる。


「許されるのなら君をリーネと呼ばせてほしい。」


俯いた私の視界にアラン様の靴が現れる。


「わ……私は、未だ、アラン様を……忘れていなくて……う、薄気味悪い……ですよ……」


「だったら君を思い出さない日なんて無い俺は、おぞましい化け物だな。」


アラン様の靴がゆっくり私に近付く。


「私のことなど忘れてしまっているんだろうと」

「誰が忘れるものか。」


すぐ目の前から声が降ってくる。


「君は俺のすべてだ。叶うならば……また君の琥珀の瞳に映る権利をくれないか。」


まるで夢のように都合のいい場面、都合のいい台詞。



いいえ


夢であろうと現実であろうと


逃げずに自分の想いを伝えたい


「ずっと、ずっと……」


思い切って俯いていた顔を上げる。


「初めてお見かけした時から、ずっとあなたが好きです。」


勇気を出してダークブルーの瞳を見つめた。

けどすぐ私の視界はそっと覆われる。


アラン様の腕が私をあたたかくあつく包む。


ふ、とまつ毛に柔らかいものが触れた。

触れたと思うと離れ、また触れる。


その柔らかいものが何かだなんて、自覚すると頬に熱が走る。


瞬間、息が出来なくなるくらい強く抱き寄せられる。


苦しいくらいに。


思わず顔を上げて苦しいですと言いかけた。

だけどアラン様が声にならないような声を漏らしたので、何も言えなくなってしまった。







「あーーー!!!そこで何をしてるんだ!!何でそうなっているんだ!!!何でお前がいるんだよ!!」



ハッとして顔を上げると、兄2人が向こうに立っている。


気付かないうちに大雨はもう止んでいた。


いつの間にか日まで差している。


顔を洗う様なそよ風が吹く。



「チクショウ!やっぱりリーネを連れて来るべきじゃなかったんだ!!」



ギブ兄さんの声が響き渡った。



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