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悪役令嬢はあなたのために  作者: くきの助


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ニコラスとアラン

「若き彗星達とは!記者も上手いこと言うね!」

「まったくだ!」


皆で新聞を広げて興奮気味に感想を口にする。


勉強会と題した集まりはどんどん大きくなり、学園でも無視できぬ程の規模となっていた。

派閥など関係ないこの勉強会は向上心のあるものだけを厳選していた。

もちろん特定の派閥に偏らない様気を遣ってはいたが……


勉強会でスラム街をテーマにした日は、皆で意見を出し合いかつてないほどに盛り上がった。

特に熱くなったメンバーだけで集まる様になり、学園で発表したところ随分話題になった。

それは学内に留まらず王城からもお声がかかり、提議書が出されることとなった。

国としてもスラム街の問題は重要視していたが現実お金がかかる。

話題性を持って貴族から寄付を募りたいという思惑があったようだったが、とはいえ快挙だ。

新聞にまで載る事となった。


アランにとっては見事な復活劇といえよう。




アランは貴族筆頭侯爵家子息であり、光り輝くような美男子。

この王都において彼ほど華のある男はいないだろう。

それでいて中身は硬派の勤勉な男だった。


最初に勉強会に誘ったのは半分興味、半分打算だった。


それは2つとも大正解。

彼は寡黙であったが実は沢山の事を考えていたのだ。

思った通り面白い男だ、と思った。

そして打算の方も順調。アランが参加したと言うだけで、ただの集まりだった勉強会はあっという間に人数を増やし名を上げた。


すべてにおいて順調に見える男。

そんなアランがやらかした。

よりにもよって俺が所属する生徒会主催のパーティーで。


一体どんな罰が下されるのかと思っていたが、モリス侯爵が下した罰は今まで通り学園に通う事だった。


モリス侯爵は、もう一度自分の価値を見せてみろと、チャンスを与えたのだろう。



長期休暇が明けて登校してきたアランに皆遠巻きだった。

俺も決して話しかけはしなかった。


ここで俺が話しかけに行っては罰にならない。

彼の為にならないのだ。


アランに話しかける価値があると判断すれば話しかけよう。

声をかけようとした勉強会のメンバーにも釘を刺した。

彼の正念場なのだと。

ここで折れるのであればそれまでの男なのだ。


悪い誘いにものらず、ただただ誠実に毎日をこなすアラン。

これまで以上に勤勉さに磨きがかかった様だった。


ハーフナー伯爵令嬢への懺悔もあるのだろうな。


俺はそんな事を思っていた。


それからは積極的に数々の課題をこなすアランの発表の場は唸るものがあった。

俺の静止などなかったかのように、興味を惹かれた者はアランに質問に行く。

教師ですら興奮気味に、どうしてこの課題にしたのか、この点に着目したのは何故か、数々の質問を投げかけていた。


そして我々が高等部三年に上がる頃に俺はアランをまた勉強会に誘ったが、文句を言う奴はひとりもいなかった。

実をいえばアランが来なくなってからというもの、勉強会は人数を減らしていた。

しかしアランが参加し出すとまた人数が増え始めるのだから、こう言うのを人を惹きつける魅力があるというのだろう。


そして紹介された新聞は随分評判が良かったらしい。

それからというもの、事ある毎にアランが取り上げられる様になった。


幾度と新聞に取り上げられようと、氷の貴公子ともてはやされようと、アランの態度は相変わらずクール王子そのものだ。


ただある時から取材されれば必ず言う言葉があった。


『自らの手で壊してしまったもう届かぬ想い人のために、日々。』


そんな見出しはもう見慣れた。


それが、アランなりのやり方なんだろう。

少し切ないが。


見る人が見れば誰の事を言っているのかは一目瞭然。


心無い噂を広めていた令嬢達は付け入る隙は無いと悟ったらしい。

そんな事を言い続けている内に学園に蔓延っていたハーフナー伯爵令嬢への噂は消えていった。

どこまでも不器用で本当に馬鹿な男だと、俺は見守ることしかできなかった。


俺たちが学園を卒業し、アランも俺も城に勤める様になってからも、アランへの注目は凄まじく、些細なことでも新聞に取り上げられる。


そしてやはり言うのだ。


すべてはもう届かぬ想い人のためにと。




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