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アランは悪魔の囁きを聞く

「セレーナ様、アラン様、お茶をお淹れ致しました。」


俺の侍従がお茶を淹れて出してくれたのが合図のように俺たちは休憩を入れた。

試験前週間に入り焦り出したセレーナが部屋を訪ねてきた。


自分の勉強もあるのだが、まったくわからないと言われれば勉強をみてやるしかない。

そうして一時間ほど自分の勉強もしつつセレーナの勉強も見てやっていた。


そんな休憩時の時だった。

思いがけない事を聞かれる。


「お兄様のキャリーの印象ってどんななの?」


「印象?何故そんなことが気になる?」


「お父様もお母様も学校でのキャリーをあまり知らないようで……悪印象はないようなの。お兄様は?」


「正直いい印象とは言えないな。キンキンと高い声は頭に響くし、知性のない話題。禁じられていないとはいえ、毎日高等部に来るのも品がない。」


リーネとは大違いだ。

そんな言葉を続けそうになり、ぐっと黙る。


「そんなことを聞いてどうする気だ。婚約は決まっている。ハーフナー伯爵令嬢の印象が悪くないからこそ父上も母上も婚約を決めたんだろう。」


「それでも……学園でのキャリーを知らないと言うのは問題だわ。」


「まだ解決していないのか?アクセサリーが返ってこないというのは。」


どうせそんな所だろうとため息をつく。


「わかった。俺から言おうじゃないか。」


「違うわ。お兄様の名前を出せばあっさり返ってきたわ。」


では何だ。


眉を顰めた俺を見て言いにくそうに黙り込んだが、すぐまた口を開いた。


「私たちがアクセサリーを貸すのを渋る様になったからなのかはわからないけど、最近癇癪がひどくて。それどころかお兄様に憧れているメグに嫌がらせをするようになったのよ。」


「嫌がらせ?」


「ええ、メグのテキストを破いたり、カバンを学校の噴水に投げ込んだり。この間なんてメグを階段から突き飛ばしたのよ。幸い大事にはならなかったのだけれどメグは足を怪我したわ。」


俺は呆気にとられていた。


なんて幼稚なことをするんだ。


「私……お父様に言われてキャリーと仲良くしていたけれどもう限界だって言おうかと思っているの。大体モリス侯爵家に相応しいとも思えない。でもお父様はキャリーに悪印象を持っていないから、どこまで信じてもらえるのかわからないわ。」


「その話に証拠はあるのか?あるならそう伝えた上でその話をすれば良いのではないか。メグ嬢は子爵令嬢だったか。彼女も子爵に相談の上抗議してもらえ。」


「私もそう言ったわ。でもキャリーはメグは下位貴族だから抗議文なんてもみ消してやるって言っていたわ……」


「ハーフナー伯爵令嬢の居候先にもおくればいい。身を寄せている令嬢が問題を起こしていたらエイレン侯爵家の名折れだ。」


そもそもトウプチ先生の家だ。

生徒のトラブル。黙ってるわけにはいかないはずだ。


「そうね……でもキャリーが認めてくれたら一番いいのよ。あんな子、侯爵夫人に相応しくない。私、彼女に婚約者の座を辞退して欲しいの。田舎に帰って欲しいのよ。多少のトラブルは我慢してきたけれど、友人を怪我させられたわ。メグは次何されるかとビクビクしてる。お兄様だってこんなトラブルの塊と本気で結婚する気なの?婚約解消したくないの?」



ドキリとする。


ずっと考えないようにしていた事だと言うのに、まさか身内からそう言われるとは思わなかった。


それを望んでいるのは俺だけじゃない。

セレーナもハーフナー伯爵令嬢との婚約を嫌がっている。


そのことは俺の心を甘く占領していく。


「お父様だって実態を知れば賛成するはずよ。だいたいうちの領で水害さえなければキャリーを婚約者になんて言い出さなかったわ。そりゃあハーフナー伯爵家に水害の時に助けてもらったのは感謝すべきかも知れないけれど、それでどうしてうちが問題児を引き取らなきゃならないの?そうでしょう?中等部のみんなは知っているわ。キャリーが碌でもない令嬢だってこと。」


「何が言いたい?」


何か目的があって話をしてる。

それに気付き俺は問うた。


するとセレーナの口角がきゅっと上がる。


「私にいい考えがあるの。」


そう言い出したセレーナの話を聞くべきでは無いのはわかっている。


しかし


婚約解消できるのかも知れない。

それさえできれば俺は……


そう思うと耳を傾けてしまったのだ。


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