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セレーナの計画は順調

「あのメイク!!私だったら人前を歩けないわ!」


「丸い鼻が羨ましいわって言っていたのは誰よ!吹き出しそうになったわ!」


「エイミーよ!嘘でもよく言うわね、あんな団子鼻!」


「照れていたキャリーの顔ったら!あれって本気にしていたのかしら?!」


「あそこまで言えばいくらキャリーといえど馬鹿にされていると気付くかと思ったのに、大喜びだったわ!」


皆揃ってドッと大笑いする。


「ああ、本当におかしいわ。どうしてあんな滑稽なのかしら。何を言ってもヘラヘラ笑って。こちらが苛立つ時もあるくらいよ。」


「家でも家族に鈍臭いと馬鹿にされると手紙に書いてあったわ。」


「そりゃあそうよ!私だって自分の家族にキャリーみたいな子がいたらきっと無視してしまうわ!情けなくって。」


「邪険にされているのね。きっと身を寄せているエイレン侯爵家でもそうなのでは?」


「きっとそうよ。田舎貴族なんて中央貴族が相手にするわけないもの。」


くすくすと笑いながら語り合う。


「さあ、ウォルターにまた手紙を書いてもらうわ。悪役令嬢のようなキャリーにグッときた、なんてね。後は……お兄様の塩対応を誤魔化さなくては。」


「それは、高位貴族が悪役令嬢が好きだなんて言えば馬鹿にされるから大っぴらには歓迎できないって言えばいいのよ。実際そうじゃないの!」


「でも本当は嬉しいから毎日そうしてほしい、なんてね。」


「そうね!それはいいわね!」


そこでまた堪え切れず笑い合う。


計画は着実に進んでいるわ。

なんだかごめんなさいねえ、キャリー。

でもいつまでもお兄様の婚約者に居座る厚顔無恥なあなたが悪いのよ?




それからも毎朝キャリーは下品なメイクに馬鹿な喋り方でお兄様のもとに通い続け、その姿はすっかり学園でも有名になり、順調に評判を落としていた。




そんなある日、いつもの様にメグの家でエイミーと3人でお茶をしていると遠慮がちにメグが聞いてきた。


「ねえ。実際のところアラン様の方はキャリーに対してどうお思いなのかしら?」


問いかけに私は顎を上げる。


「それも上々よ。借りたアクセサリーを返さないって話はまあまあの反応ってところかしら。それより授業に出ていないって話の方が嫌悪感がある様だったわ。」


「アクセサリーは作り話だけれども、授業に出ていないのは本当だものね。それで嫌悪感を持たれるのなら本当にお二人は合わないと言うことよね。」


呆れたような声を出しながらも、嬉しさが滲み出ているメグ。


「それにしても、キャリーはずっと授業に出ていないわよね。学園はモリス侯爵家のご好意で通わせてもらっているのでしょう?不義理を堂々とやってのけるなんて、あんな真面目そうな顔をしてやる事は大胆よねえ。」


エイミーが感心したように言う。


それは確かにそうなのよ。


化粧を落としていると一時間目は必ず遅刻する。

どんな顔をして授業に遅れてくるのか楽しみだった私達は結局戻ってこなかったキャリーに拍子抜けだった。


キャリーは驚くほど授業に出ていない。

珍しく出てきた時なんかは先生に当てられ、でも問題の意味がわからなかったのか、

訳のわからない答えを言って、先生に詰められていた。


ま、それはそれでお兄様に告げ口をしたけれど。

案の定嫌悪感たっぷりの顔でその話を聞いていたわ。


まあ、こちらとしては良い状況だから放置で良しとするわ。

本当の事だから噂も回りやすくていいのよ。

お兄様に憧れているご令嬢達の妬みがいい燃料になって、少しきっかけを作っただけでキャリーの不真面目さは知れ渡った。


「先生に詰められた時もケロッとしていたわね。」


呆れたようにメグが言う。


「鈍いと言っても程があるわ。」


その言葉を聞いて私はニヤリと笑う。


「では、そろそろだらしない笑い顔以外の顔も見てみたいと思わない?」



「どういうこと?」


意味あり気に言えば、期待を込めた目がこちらを向く。


「ウフフ、お兄様には好き合っている恋人がいた……。面白いと思わない?」


2人は目を輝かせた。


「まあ!それは!ようやく面白い顔が見る事ができそうね!何か良い案でもあるのかしら!」


「前にお兄様がキャリーに誕生日の贈り物をしているの。でも全てウォルターに任せていたから、ね。領収書を回さなければ送っていないことを勘付かれてしまうし、私が選んで購入したのよ。お兄様の瞳の色、ブルーサファイアの髪飾りをね。もちろん私の手元にあるのよ。それをあなたがつけなさい。メグ。」


「私?!」


お兄様に憧れているメグは信じられないという風に目を見開くも、喜びが隠しきれない様子。


「そんなっ私がアラン様の色を身につけるなんて……ッ!」


そう言いながら赤らめた頬を隠すように両手で抑える。


「そうそう。その恥じらいがいいのよ!真実味があるわ。良い時期にさりげなく匂わせましょう。ふたりはキャリーのせいで引き裂かれた恋人同士だとね!」


「フフどんな顔をするのかしら。その時は頼んだわよ、メグ!」


私とエイミーが微笑むと、はにかみながらメグは頷いた。










ああ可笑しいったらないわ!


笑いが止まらない。


メグがお兄様の恋人だと教えた時のキャリーの顔ったら!!

名演技をした後の私達はしばらく笑い続けた。


ようやくヘラヘラした顔以外を拝めたわ!

予想以上に傷ついてくれたようで、それでも微笑もうとして凄い顔になっちゃって!

ああ、本当に可笑しい。

どうしてあんなにも惨めな姿が似合うのかしら!!



でもそろそろお遊びもお仕舞いね。

学期末のパーティーが近付いてきた。


さて計画はとても単純。


公衆の面前でキャリーに婚約破棄を突きつけるというもの。

でもそれだとこちらにリスクがある。


だから主催の生徒会に婚約破棄の断罪劇として催し物の申請をだす。


これで周りには『断罪劇の催し』として言い訳が立つ。

もしお父様やキャリー側から咎められてもあくまで学園非公式パーティーでの催しだと言い張ればいい。


それでもメグをお兄様に寄り添わせると、鈍臭いキャリーでも気付くだろう。

催しではなく本気だと。


モリス侯爵の好意で学園に通いながら授業に出ていないことや、

ブロンドのウィッグをかぶり、奇想天外な格好で高等部に足を運んでいること。

人のアクセサリーを欲しがる事やメグへの嫌がらせなんかを罪として言い渡せば、あの間抜けなキャリーは何も言えずに泣き出すだろう。


「そんな事していない。」

「あなた達の言う通りにしただけ」


もしそんな風に言われてもと私達は否定すればいい。

田舎貴族ひとりが喚いたところで証拠なんてないのだから。


キャリーにはお兄様からの偽の手紙は処分するようにあらかじめ言ってある。

悪役令嬢のような女性を好ましいと言っている手紙など残さないでほしい、なんて尤もらしい事言ってね。


お兄様も私の話を信じ込んでいる。

メグとエイミーとの口裏合わせも完璧。


『パーティーの催し』という名のもと、キャリーが侯爵夫人に相応しくないという事を学園中に知らしめることができたら、婚約を破棄しても皆納得といえる。

私たちに瑕疵などつかないはず。


そしてその事を両家が知れば、きっとキャリー有責で婚約破棄できるわ。


ああ、最高の気分よ!

下地は完璧。

パーティーで断罪劇、必ず上手くいくわ!


さあ、その時。

どんな顔を見せてくれるのかしら?

悔しがる顔をみせてくれるの?

それとも泣いちゃう?


どれでもいいわ!


長期休暇前にはもうさようなら。

とっとと王都からいなくなって頂戴ね!!


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