第三十九話:アメリカ国家統一への建設と破壊
あらすじ
一八六一年。建設柱はエイブラハム・リンカーンとして活動し、連邦という「一つの国家」を維持するという建設の使命を帯び、南部の分離という破壊と対峙する。対するロバート・E・リー将軍(破壊柱)は、その卓越した軍才で北軍を打ち破り、国家の既存秩序を破壊する役割を担う。この内戦は、新しい形の国家建設の代償であった。
本編
一八六一年、冬のワシントンD.C.は、冷たい湿気に満ちていた。第十六代アメリカ大統領に就任したエイブラハム・リンカーン(建設柱)は、ホワイトハウスの執務室で、暖炉の火の前に立っていた。煤の匂いと、部屋の冷たい空気が混ざり合う。彼の面長な顔には、南部諸州の離脱という、国家の基盤が音を立てて崩れるような重さが刻まれていた。
リンカーンは、机の上の、星条旗の絵が描かれた書類を見つめた。旗に描かれた星が次々と消えていく現実は、彼の建設の青図を脅かしていた。彼は、大統領就任演説の原稿を両手で広げ、自ら太い線を引いた。
「この結合は、一時のものではない。この連邦を維持することこそが、この地における人民の意志の建設だ。何人たりとも、星を消すことは許さぬ」
彼の長い指が、ネクタイをきつく締めた。建設者として、リンカーンは、泥と血を避けることはできないが、この戦争が、より永続的な「連邦」という建設に必要な試練であることを静かに受け入れていた。
同時期、南バージニアの静かな家では、ロバート・E・リー将軍(破壊柱)が、静かに制服に袖を通していた。彼の手には、北軍の総司令官の地位を提示する召喚状が握られていたが、彼はその紙を音もなく折り畳んだ。彼の破壊は、理念や政治的な野心からではなく、生まれ育った州、バージニアへの深い「忠誠」から生じていた。
リーは、窓の外の故郷の土を見つめ、静かに語りかけた。
「連邦への忠誠も重い。だが、わしの故郷が自らの道を選ぶというのに、わしが剣を向けるわけにはいかぬ。わしの役割は、古き秩序の名の下に、新しい力に抗うことだ」
彼は、卓越した軍事的な才能をもって、北軍の体制を容赦なく粉砕した。ゲティスバーグを除く、多くの戦いで、彼は北軍を敗北の泥の中へと叩き込み、リンカーンの建設を何度も頓挫させた。リーの馬は、戦場の硝煙の匂いを嫌がり、激しくいなないたが、リーは、手綱を握りしめて、ただ、前を見据えた。彼の存在は、古い価値観、州の権利という秩序が、新しい中央集権的な国家の建設に強く抵抗するという、時代の反対勢力を背負って負けるという破壊を成し遂げた。
南北戦争の四年間は、リンカーンの建設の試練であった。敗北の報が届く度に、彼は、暖炉の前で、顎を引き、唇を固く結んだ。彼は、決して「統一」という建設の青図を手放さなかった。
一八六三年、ゲティスバーグの戦場跡で、リンカーンは、冷ややかな風の中、短い演説を行った。土と血の匂いが微かに残る広大な墓地に、彼の声は、風に乗って響き渡った。
「ここに眠る犠牲は、この国が、神の下で、新しい自由をもって生まれ変わるために捧げられた。人民の人民による人民のための政治が、この地上から消滅しないよう、我々は決意しなければならない」
彼の言葉は、全ての犠牲が、より強固な「連邦」という建設に捧げられたものであることを静かに宣言した。
一八六五年四月、リー将軍が降伏を決断した時、彼の軍は、飢餓と疲労で痩せ細っていた。アポマトックスの静かな家で、リーは、北軍のグラント将軍に向かって、静かに剣を置いた。革の擦れる音だけが、部屋に響いた。
リーは、グラントに目礼をし、降伏文書に署名した。インクの匂いが乾いた時、彼の破壊の役割は終わった。その降伏の行為こそが、リンカーンの「国家の統一」という建設の完成を、武力で証明したのであった。
リンカーンは、勝利の報を受けた時、静かに椅子に座り、深く息を吐いた。四年間の重圧が、一時的に肩から降ろされた瞬間である。彼は、この建設が完了したことを確認したが、この勝利は、彼の人生に最後の代償を払わせることとなる。数日後、リンカーンは暗殺され、建設の完了を見届けると同時に、その役割を終えたのである。




