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第三十話:本能寺の炎、創造の終幕

あらすじ


 一五八ニ年六月。天下統一の目前にあった織田信長(創造柱)は、京都の本能寺にて、家臣・明智光秀(信頼の破綻者)の裏切りに遭う。常識と伝統を破壊し、新しい世界の骨格を創造し続けた信長は、その頂点で、自らの手によって創造の幕を降ろすという道を選んだ。彼が寵愛した小姓、森蘭丸(悲劇の輝き)は、最期の時まで信長への絶対的な忠誠を体現し、信長の自己破壊という運命を見届ける役割を担う。この悲劇的な終焉こそが、次の建設者・徳川家康(建設柱)の乱世終結への土壌の引き渡しを促す。信長と蘭丸は、曹操と曹沖、義満と義嗣としても共にした創造柱と悲劇の輝きの活動歴の一つだった。


本編


 西暦一五八二年六月二日未明、京都の本能寺は、静寂の中に、わずかな香の匂いを漂わせていた。織田信長(創造柱)は、単衣ひとえ姿で床に就いていたが、その心は、既に「天下統一」という創造の青図で満たされていた。

 しかし闇を突き破る「敵は本能寺にあり!」という叫びと攻めてくるどよめきが、信長を青図から現実へと引き戻した。明智光秀(信頼の破綻者)の謀反の報である。

 信長は、寝ていた場所から素早く起き上がり、その顔には、驚きや動揺よりも、むしろ、冷ややかな「納得」の色が浮かんでいた。彼の創造は、あまりに急進的で、あまりに巨大であったため、それを受け止める器が、天下にも、そして彼の家臣たちの心にも育っていないことを、彼は悟っていた。

 信長は、腰にあった愛用の短刀の柄を一度握りしめ、すぐに緩めた。

「光秀か。わしの使命はここまでということか」

 その声は、裏切りを嘆くのではなく、自身の創造の終わりを静かに受け入れる響きを持っていた。


 混乱の中、森蘭丸(悲劇の輝き)は、襲いかかる明智勢へと刀を振るい、信長の傍を離れなかった。彼の顔は、すでに血の飛沫に濡れていたが、その瞳は、常に信長の姿を捉えていた。彼の忠誠は、創造柱への純粋な信仰であった。

 蘭丸は、火の手が上がり、熱が顔を焼くのを感じながら、信長の二歩後ろに控えた。

「殿、いかがなされます。もはや、脱出は難しいかと…」

 蘭丸の声は、焦りを含んでいたが、最後の命令を待つ静かな響きでもあった。

 信長は、もはや抵抗する意志を示さず、ただ、燃え盛る炎を見つめた。炎の熱が肌に突き刺さる。彼が破壊した全ての旧秩序の残骸が、この炎に凝縮されているかのようであった。

 信長は、ゆっくりと首を振った。

「是非に及ばず」

 信長の活動は、この瞬間、終わりを告げた。彼の創造が、この世に定着するためには、自分の「死」という壮絶な破壊が必要だという運命を、信長は受け入れたのである。


 蘭丸は、信長の言葉を聞いた後、自分の役割を理解した。彼は、刀を鞘に納め、静かに信長の短刀を抜き、柄を信長の方へ向けて、両手で差し出した。

「承知いたしました。この蘭丸が、殿の最期を、誰にも見せませぬ」

 彼の声は、静かでありながら、決死の覚悟が籠もっていた。この短刀は、蘭丸が信長の創造の終幕を補助する「道具」となった。

 信長は、短刀を受け取り、蘭丸の肩を一度、強く叩いた。その手の平の感触は、蘭丸の生涯に残る、最後の温もりとなった。

 本能寺の炎は、夜空を赤く照らし、その光は、信長が創造した「統一の骨格」を、遥か東の建設者・徳川家康(建設柱)の地へと送り届けるかのようであった。火の中で、蘭丸の最期の叫びはかき消され、京都の空には、新たな権力へと向かう、戦国の大きな風が吹き荒れ始めた。

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