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第二十七話:織田信長、戦国時代への創造の志

あらすじ


 一五三四年頃。室町幕府の権威が地に落ちたとき、日本は戦国時代という群雄割拠の創造の激流に呑み込まれた。尾張の小大名の子として生まれた織田信長(創造柱)は、既成の秩序や常識を打ち破る発想と行動力で、天下布武という前代未聞の巨大な創造を志す。彼の父、織田信秀(創造の斥候)は、泥臭い戦いで尾張を統一し、信長が天下統一の創造を実行するための「土壌」を整える役割を担った。信長は、父の残した不安定だが自由な基盤の上で、中世の全てを破壊し、次の時代の骨格を創り出す旅へと出ていく。


本編


 西暦一五三四年頃、尾張の那古野なごや城は、戦国の湿った土と火薬の匂いが混じり合う、小競り合いの絶えない地方の要塞であった。城下の土煙の中で、織田信長(創造柱)は、当時の武士には珍しい洋装をまとい、大声で馬を駆り立てた。馬の蹄が土を蹴り、砂利が跳ねる。その姿は、家臣たちが眉をひそめるほどに常識外れであった。

 彼は、馬を急に止め、周囲の古参の武士たちが身につける甲冑の鈍い光を一瞥した。彼の瞳は、今ここにある尾張の境界線や、古い武家の習わしを見ているのではない。遥かに広大な武家による「天下統一」という未だ存在しない国家システムの創造を見通していた。

 信長は、手に持った奇抜な瓢箪を一気に呷り、口を拭った。

「古い常識に囚われている暇はない。この国の全ての壁を、打ち砕かねばならぬ」

 彼の中にある創造の意識は、既成の価値観を一瞬で無に帰す激しい熱を帯びていた。


 父である織田信秀(創造の斥候)は、熱心な戦いの実行者であった。過去には平清盛(創造柱)と源義朝(創造の斥候)としてライバルのような関係性だったものが、今回は親子としての間柄になった。

 信秀は、周辺の今川や斎藤と絶え間なく戦い、泥にまみれた血の匂いと共に生きていた。信秀は、息子の「うつけ」ぶりに、苛立ちと理解できない戸惑いを示した。彼は、顔に深く皺を刻みながら、長大な槍を手入れしていた。

 信秀は、信長の洋装を見て、低く唸るように言った。

「家を継ぐ者が、なんという見た目だ。この尾張の土を守ることが先だ。京の公家の真似では、生き残れぬ」

 信長は、父の鋭い目をまっすぐに見つめた。

「父上が守っているのは、小さな領地だ。私が見ているのは、この国の新しい骨格だ。そのために、古い形は壊す」

 しかし、信秀の役割は、正にその「土壌」を提供することであった。彼が泥臭い戦いで尾張を統一し、周囲の大名と緊張関係を保ったことで、信長は、武士の世の基本的な力の構造と戦の現実を学び、自らの創造を実行するための基盤を得た。信秀が死に際して、信長に対して残した財産は、不安定だが自由な尾張という「創造の実験場」であった。


 信秀の葬儀の日、場は線香の煙と静寂に包まれていた。信長は、普段の奇抜な装いとは異なり、粗末な服を着て現れた。彼は祭壇へと歩み、静かに香をつまんだ。

 彼は、香炉の前で立ち止まり、作法を一切無視した。香を焚く代わりに、一握りの灰を香炉へと投げつけた。灰が舞い上がり、一瞬、線香の煙をかき消した。周囲の家臣たちから、息を呑む音が漏れた。

 信長は、振り向かず、低い声で言った。

「父は、この尾張の土を私に遺した。もはや、古いしきたりに従う時ではない。この尾張を踏み台とし、全てを変える」

 これは、旧世代の形式と権威への拒絶であり、同時に、父が敷いた土壌の上で、新しい創造へと踏み出す決意を示していた。

 信長は、父の死後、尾張の統一を進め、本格的に天下布武の創造へと向かい始めた。熱田神宮で戦勝を祈願した信長は、社の裏で、自らの手を握りしめた。その手のひらには、「天下布武」という、未だ世界に存在しない巨大な創造の文字が、熱を持って刻まれているかのようであった。

 彼の創造は、単なる領土の拡大ではない。それは、身分、経済、戦術、宗教といった、中世以来の全てのシステムを破壊し、次の建設者である家康(建設柱)のために、資本主義と中央集権化を見据えた新しい国家の骨格を創り出す試みであった。時代は、ついに、本格的な創造者の手に委ねられた。

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