表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊市場は祭りのように賑わっていたが、私たちを待つのは死だけだった。  作者: Ryo Nova


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

第12話 – あなたは誰?

これは最終話、第12話です。

すべてが変わる重要な回となりますので、ぜひしっかりとご覧ください。

今回は少し長めのエピソードのため、二部構成でお届けします。

シーズン2は予定されていますが、少し時間がかかります。

どうか楽しみにお待ちください。

かすかな反響。

石の上に、一滴の雨が落ちる。

もう一滴。

視線を上げると――崩れた柱の間から青い幽光が漏れている。


俺は廃墟の中心に膝をつき、静かに涙をこぼす。

空気が悲嘆で震えている。


「……どうして……どうしてあの人たちが……?」


拳を地面に叩きつける。

閃光のように脳裏をよぎる――イツキの冷たい身体、モモの消えゆく微笑み。


背後にリンが立っている。

その蒼白な瞳に幽光がちらつく。

声は静かだが、重い。


「彼らは死んでいない。」


俺は動きを止め、ゆっくり振り向く。声が掠れる。


「……え……? 今……なんて……?」


リンは動かない。ただ、瞳だけが静かに燃えている。


「彼らは――“エイドロン”に囚われている。」


「エイドロン……?」


リンは静かに言う。

「世界と世界の狭間。失われた魂のプリズム。怒り、後悔、罪悪感――何かに縛られた霊たちが、そこに閉じ込められる。彼らを解放するには……“鍵”が必要。」


「鍵……じゃあ――行けるのか? 助けに行けるんだよな?!」


リンは目を閉じた。


「ただの鍵じゃない。“ヴェイリン・キー”。それぞれが断片の世界に隠され……そこを守るものは、君の命を狙う。」


俺は一歩踏み出す。必死に。


「じゃあ全部集める。どんな時間がかかってもいい――奪ってでも、戦ってでも――!」


「もう時間がない。」


リンのオーラが激しく揺らめく。


「“マーケット”は青い糸で縫われて閉じる。その時を逃せば――一年は戻れない。」


「お前は? 一緒に来ないのか――?」


「私はもうここに縛られてる。幽霊だから。」


瞳が一瞬優しくなるが、すぐ鋭さを取り戻す。


「残り五分。行け。今すぐ。」


言葉を発するより早く、手が上がる。幽光が渦を巻き、俺の体を包む。


「リン――待っ……!」


珍しく微笑むリン。


「行け、バカ。」


――幽気の奔流が俺を門の向こうへ吹き飛ばす。


地面に叩きつけられ、息を切らす。

顔を上げると――ゴーストマーケットの巨大な門が揺らめき、青い粉となって消えた。


呆然と見つめる。――足音が近づく。


ヒールの音が止まる。

顔を上げる。赤い髪、溶けた金の瞳。

洗練されたストリートスタイルの女――衣装の縫い目にはかすかに光が走る。


シンダー。


彼女は首を傾げる。


「迷子みたいね、坊や。」


サングラスに映る――怯えた俺の瞳。


◇ ◇ ◇


五か月後


街は色で息づいている。

ネオンが唸り、煙が幽霊のように路地を這う。


俺はその中を歩く。

黄色く擦れたパーカーのフードを深く被り、手はポケットの中。


誰もいないはずの場所から囁き声が聞こえる。

笑い声、悲鳴――耳の奥で響く。


視界が歪む――通りの人々が一瞬、白衣の科学者に変わる。

伸びた笑顔、冷たい目。

次の瞬間には元通りに笑っている。


全ての音が間違って聞こえる。息さえ重い。


頭を抱える。光が瞬き、子供の笑い声が悲鳴に変わる。


「やめろ……やめろ……彼女が守ってくれる……」


声がかかる。「おい、坊主――迷子か?」


反射的に逃げ出す。


無我夢中で走る。車の音がノイズに変わる。


――幽光が瞬く。


リンが横断歩道に現れる。

静かに、霧の中で光を帯びて。


「レンジ……?」


俺は反応せず、通り過ぎる。


リンの目が見開かれる。何かがおかしい。


低く落ち着いた女の声。

「脅かしてるわよ。離れなさい。」


リンが振り返る。

路地の奥から、金の瞳が光る。

シンダーが歩み出て、俺を抱きしめた。


息を吐き、震えながら彼女の胸に顔を埋める。

子供のように、救いを求めるように。


「何をしたの?」

リンが冷たく言う。


「何も。彼を“安全”にしているだけ。」

シンダーは穏やかに答える。


リンの手に青白い鎌が現れ、刃が唸る。


「彼は私の――」

シンダーが遮る。

「今は違うわ。あなたの番はまた来る。でも今日は――退いて。」


リンの幽気が爆ぜる。

シンダーは動かない。


俺の瞳がネオンの下で揺れる。

リンを見ても、知らない人のようだ。


「……記憶が……ないのね。」

リンの声が震える。

彼女は一歩下がり、光に溶けて消えた。


シンダーが俺を抱きしめ直す。街の雑音が戻る。



小さなアパート


俺は眠っている。

シンダーは隣で静かに見守る。


寝汗に濡れた額。うなされる身体。


囁く声。

「忘れさせるつもりじゃなかった……でも、その方がいいの。」


机の上の時計仕掛けの小鳥が「カチ」と鳴る。静寂。


――金属を削る音。

眩しい白光が部屋を覆う。


手首は椅子に縛られる。

機械の唸り。腕に這うチューブ。


科学者1

「標本09-B、意識ありのまま抽出を開始。」


ノコギリの音。

俺は叫び、暴れる。


注射針が首に突き刺さる。


左目は開かれたまま固定される。


管から流れ込む光る液体。


子供のような悲鳴。

喉が裂ける。


音が歪む。声が重なり、ノイズになる。


「大脳皮質を再構築できる。」

「共感を削除しろ。」

「痛覚が残ってる――いい兆候だ。」


――赤い髪の女、シンダーが現れる。

白光の中、銃声。血が壁に飛ぶ。

手袋の手が俺に伸びる。


「もう大丈夫よ、坊や。」


声だけが残る。痛みが消える。

手が俺の目を覆う――白い閃光。



飛び起きる。汗びっしょり。息が荒い。


シンダーは隣に座り、穏やかに微笑む。

朝の柔らかな光が差す。


頬を撫でながら言う。

「また悪夢を見たの?」


掠れた声で答える。

「切られてた……また見た……光と……手が……」


微笑むシンダー。

「静かに……私が救ったの、覚えてる?」



呆然とつぶやく。

「……救ってくれた……」


囁く声。

「そう。これからも、ずっと。」


震える肩で息を吐き、理解できない温もりを求めて寄り添う。


窓の外、雨がトントンと叩く。

壊れたブラインドから淡い光。


窓際でしゃがみ、小さな声で尋ねる。

「……守ってくれるんだよね?」


シンダーは隣に座り、頬に触れる。

「誰にも触らせない。約束よ。」


小さく笑い、机の上の小鳥を手に取って遊ぶ。

「カチ、カチ」と音を立て、口ずさむ。


彼女は優しく言う――まるで子供でもあり、兵器でもある“創造物”に。


「行くわよ、レンジ。準備して。」


顔を上げる。

「どこへ……?」

もし少しでも楽しんでいただけたなら、ぜひレビューやコメント、評価などをしていただけると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。


読んでいただき、ありがとうございました!。次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ