第1話 - ゴーストマーケットへの入り口
このエピソードは途中で終わらず、ちゃんと完結していますので、最後までお楽しみください。拙い部分があるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです ありがとうございます!
夜明けは溶けた黄金のように街に滴り落ち、ひび割れた狭く崩れかけたアパートの窓から差し込んでいた。埃の粒がゆらゆらと日差しの中で舞い、空気には古い木の匂いと昨日の雨の残り香がほのかに混ざっていた。
俺は床板の上に体を伸ばして横たわり、朝の光に顔の半分が照らされていた。鋭い顎、高い頬骨、繊細な顔立ちはあまりにも完璧で、老女の大家が戸口から覗き込み、ひそひそと呟く。
「…なんて勿体ない少年だろう…」
まつげがふわりと開き、日光を銀糸のように受け止める。肩を鳴らしながら伸びをすると、近くで聞こえる握り飯のモグモグという音に思わず笑みをこぼした。
俺:「おい…まさか俺のも食べたのか?」
イツキ(口いっぱいに頬張りながら):「んー…かもね。」
俺はうめき声を上げ、夜の湿り気で濡れた黒髪をかき上げた。
「盗み上手に育てちまったな。それに底なしだ。」
イツキは袖にしがみつき、半分だけ残した握り飯を差し出す。その無垢な瞳に、俺の笑みが柔らかくなる。
「よし…欲張り小狐め。」
◇ ◇ ◇
学校には行かなかった。十二歳で孤児となって以来、俺は小さな仕事を転々としながら生きてきた――木箱を運び、大工を手伝い、時には裏路地で数枚の小銭を守るために自衛することもあった。貧しさは俺の肌の一部のようにまとわりついた。それでも街中では、この神々しい美貌が目を引き、どこに行っても人々はささやいた。 「この世には美しすぎる」と。
夕方、俺は地元の店主のために、雨に濡れた路地を瓶の箱を運びながら走っていた。その時、低く荒々しい声で二人の男の会話が耳に入った。
男1:「今夜だ。市場が開く。」
男2:「バカ言うな。お前にはまだ早い。幽霊市場は愚か者を食い殺すぞ。」
俺は凍りついた。心臓が早鐘を打つ。幽霊市場…?
帰宅し、小さな油灯に火を灯すと、イツキが警戒する狐のようにそばに座った。
俺(冗談めかして):「どうやら幽霊が人間の頭を小銭で売る怪しい市場があるらしい。行くか?」
イツキの目が異様に輝いた。
イツキ:「…行こう。」
俺は瞬きをした。「冗談だってば、悪魔っ子。」
しかしイツキは袖を放さなかった。
外の路地は雨で濡れ、提灯が幽霊のように揺れている。俺は濡れた髪の束を払いのける。
『もしこの幽霊市場が本当にあるなら…浴室の幽霊追いかけるより面白いものがやっと見られるかもな。』
稲妻が空を裂いた。そして――囁きが始まった。何千もの声が重なり合い、壁や水たまり、空気そのものから響く。
『市場を求めるか…?』
俺の笑みが揺らぐ。イツキを見た。
俺(小声で):「う…こりゃ、新種の不気味な合唱団だな。」
影が異常に伸び、淡く脈打つ光の門を形作った。
俺は一歩近づく。門はまるで呼吸するかのように脈打っていた。
イツキ:「ちょ、ちょっと…本気で入るの?」
俺(にやりと笑い):「ここに行くか、家に帰って家賃がまた酒瓶になった言い訳を大家にするかだな。」
手を光る門に置くと、触れた瞬間、世界が内側に崩れた。
地面が傾き、雨と影がねじれる。俺は叫んだ。イツキが袖を掴むが、引力は強すぎた。二人は落ち、空気が裂け、光が千の破片に砕ける。
俺は衝撃に備えた。
黒い石の上に着地。頭をさすり、うめく。
俺:「次回は…別の次元に顔から落ちないことを心に刻もう。」
顔を上げると、息をのむ。
目の前には幽霊が漂う空の下に広がる市場。淡い光に浮かぶ幽霊たちは、何もない空間に結ばれた提灯のように漂う。鎖がかすかに音を立て、屋台は果てしなく続き、あらゆる姿の商人が店を構えていた――人間もいれば、恐ろしい姿も。売られるのはありえない品々――叫びを瓶に詰めたもの、呪われた剣、光る眼球、輝く記憶の欠片。
イツキは俺のコートを握りしめる。
イツキ:「…ここ、いるべきじゃない。」
俺(目を見開き、笑みを浮かべて):「間違いなくここにいるべきじゃない。つまり…楽しくなるってことだ。」
口を縫われた幽霊の商人が近づく。その声は直接心に響いた。
『ようこそ、新鮮な魂よ。何を売る?名前?呼吸?それとも…命か?』
俺は身を引く。「うーん…スレッドリップ氏からは何も買わないぜ。」
青白い女性が近づく。美しくも壊れた印象、黒い血管に縁取られた空洞の目。
市場の案内人:「新参者よ。よく聞け。幽霊市場には三つのルールがある。」
骸骨のような指を立てる。
1. すべては売れる。
2. すべてに代価がある。
3. 市場は決して忘れない。
イツキ:「ルールを破ったら…どうなるの…?」
彼女の笑みが不気味に割れる。背後で、男が叫び、見えない爪に引き裂かれ、魂が影の檻へと引き込まれる。
俺は唇を真一文字に結ぶ。
俺(小声で):「…そうだろうな、軽く叱られる程度じゃない。」
二人は中央広場に押し込まれた。空気は香と原始的な恐怖で重い。
高台には幽霊の子供が鎖で繋がれ、震えながら目を見開く。仮面をつけた競売人が手を上げた。
競売人:「ロット13:純粋な無垢の魂。開始価格:三世紀の命。」
手が挙がる。恐ろしい取引――叫ぶ炎の瓶、神の心臓。
俺は拳を握った。
俺:「ここ…狂ってるな。」
イツキ:「レンジ、やめて…関わらないで…」
俺の視線は子供に固定された。ユーモアは消え、珍しいほど真剣な表情が顔に浮かんでいた。
俺:「市場なんて嫌いだ。特に子供を売るところはな。」
競売人の視線が俺に注がれる。
競売人:「おお。新鮮な血、美しい…汚れなき魂。まずは君の魂から始めようか?」
鎖が飛び出す――幽霊の、鋭く生きた鎖。
俺(かわして叫ぶ):「おい!パーソナルスペース守れ!初日から売り物にされるなんて冗談じゃない!」
イツキは叫んだ。群衆は笑った。幽霊たちは詠唱する。
俺の笑みが戻った。今度は鋭く。何か暗く、制御されたものが内側で蠢いていた。
指先がうずく。前腕に微かな影がちらつき、すぐに消える――内に秘められた、目覚めを待つ秘密。
俺(ささやく、ほとんど自分に向かって):「よし…俺をステージに上げたいなら――」
袖に隠した護符を握る。血管から微かな光が脈打つ。
俺:「――最高のショーを見せる覚悟はできてるな?」
幽霊市場が轟いた。ゲームは始まった。
[エピソード1 終]
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