第79話 共鳴
「……地震。」
アラン達は、小さな揺れを感じた。
「出して上げて、鍵はどこ?」
ニーナが、叫ぶように見渡す。
「ダメです。」
姫様の声が、広間に響く。
「なぜ……。」
ニーナの声が、悲しみで途切れる。
「わたくし達は、ここで民を守らなければなりません……。」
姫様の声も、悲しみで途切れる。
「アラン、鍵を壊して!」
「なりません。あなたは、今すぐ立ち去りなさい!」
ニーナの叫びに、姫様の声が被り、更に振動が再び起こる。
「あの子が死んでしまうわ、弱っているのよ。」
「止めて!出て行って!」
ニーナと姫様の声が、さらに大きくなる。
ニーナは、目の前にいるパラデニア種に、チルチルを重ねているのかもしれない。
ニーナの助けなければという強い思いが、姫様の操りの魔法を届かせない。
アランは、姫様の腕を掴んだ。
「落ち着いて……。」
アランを遮るように、姫様が声を荒げる。
「あなたに何が分かるの!わたくしには、時間が無いの!先代も、その前の姫様もみんな短命だったと聞いたわ。わたくしの身体を知っているでしょう!どんどん冷たくなって、寒さも感じなくなって、このまま死んでしまうのよ。ソフィーもよ!」
姫様は、檻の中にいるパラデニア種を指さした。
姫様の叫ぶような声に、ソフィーも遠吠えをあげる。
「止めて!泣かないで。許して、出してあげられないの。出れないのよ!」
姫様は、ソフィーに対してと言うより、自分に対して泣き叫んでいるようだ。
アランが口を挟む前に、姫様がまた話しを続ける。
「わたくしは、こんな所に来たくなかった。街で買い物したり、お祭りに行ったり、自由に生きたいの!姫様になんかなりたくなかった!」
姫様は、アランの胸を叩く。
姫様の叫びに、ソフィーの遠吠え。
……共鳴していく。
この共鳴が、また振動を起こす。
「今度は、大きいぞ!」
ポールが、叫ぶ。
「……地震じゃない、城が凍っているんだ。」
アラン達は、白い息を吐き出しながら周りを見る。
「ニーナ!」
ポールが、ニーナを助けに走る。
ニーナは、チルチルを抱きしめると同時に凍りつく。
ポールとアレクサンダーもまた、走る姿のまま凍りつく。
「スタさん!ボッサ!」
2匹もまた、アランに向かって飛びかかるような姿のまま凍りついた。
「自分で出て行けば、いいだけだろう!」
アランは、涙を流す姫様を抱きしめた。
ふたりは、愛し合う恋人のように抱きしめ合いながら凍りついた。




