第76話 風の中の悲鳴
アランは、夜遅くにバルコニーに立っていた。
部屋は、姫様に初めて会った日から、4階へと移っていた。
部屋は、城の側面辺りで、右側に街が見え、左側には、氷の山?のような雪山が遠くに見えている。
魔法使い以外は、飛び降りて逃げるのは不可能な高さだ。
雪山から吹く風が城に当たり、巻き上げるように風が上がってくる。
今年は、秋が短い上に、もう雪が降っていて、毎日、冷たい風が吹き荒れている。
うわっ、寒っ。
アランは、自分の体を抱きしめた。
風が、凄まじい勢いで上がって来るのと同時に、ニーナの言う悲鳴のような叫び声が聞こえた。
これだよなー、悲鳴って。
悲鳴ねー。
ニーナの話しから、3日間、アランはバルコニーで、この悲鳴のような叫び声を聞いている。
ふと、隣のバルコニーを見た。
ニーナが、耳を塞いで座り込んでいる。
アランは、魔法で隣りのバルコニーに移るとニーナの前に立ち、驚かせないように、優しくニーナと呼びかけた。
ニーナは、ただ、虚ろな目で前を見つめて、アランが居ることにまるで気づいていないようだ。
寝ていた時と同じ格好なのだろう薄着で、震えながら耳を両手で塞いでいる。
小さな声で、何かを呟いている。
アランは、顔を寄せた。
「助けてあげなきゃ……。」
ニーナは、何度も同じ言葉を呟き続ける。
アランは、ニーナを抱き上げる。
魔法で、部屋へと通じる扉を開けると中から暖かい空気がアランとニーナを包む。
ニーナをベッドに寝かせると、ベッドに腰掛け、優しくニーナの両手を耳から外してあげる。
アランは、ニーナの頬に手をあて、体を温める魔法かける。
ニーナの顔にゆっくりと赤みがさしていく。
アランは、耳元に顔を寄せる。
「大丈夫。…もう大丈夫だよ。」
ニーナは、ゆっくりと目を閉じると寝息を立て始めた。
アランは、部屋にいるチルチルを見た。
「……助けるよ。大丈夫。」
アランが立ち上がると、チルチルは、ニーナのベッドに上がり添い寝をする。
アランは、バルコニーへ出ると険しい顔を空に向けた。
どうなるか分からない。でも、どっちにしても滅びるなら……、賭けてみよう姫様に。




