第67話 北へ
アラン達は、北へ向けての馬車に乗っていた。
「スゲー、寒いんだけど。」
ポールは、馬車の上で身震いした。
「痩せ我慢せず、1枚羽織れよ。」
アランは、ポールがまだ袖なしを着ていることに呆れていた。
しかし、まだ北に入ったばかりだというのに、北風の強さといったら。
まだ、コートは着てないが、刺すような冷たさに、アランも驚いていた。
チルチルは、大したことないと言わんばかりに、ニーナの側にいる。
スタさんとボッサは、図々しくも横座りするアレクサンダーのお腹あたりに入り込んでいる。
アレクサンダーは、やっぱり困った顔しているが、これはこれで暖かいので問題視してないが、相棒のポールを度々見ていた。
「寒いよ。」
一緒に馬車に乗る男の子が、母親にしがみついている。
かなり薄手だ。カバンも小さくコートを持っていないのかもしれない。
なるほど、それでポールの奴、着れないでいるのか。
アランは、カバンから毛布を出すと親子に貸してあげた。
「久しぶりに帰るのだけど、こんなに寒くなっているなんて思わなくて。姫様のお身体が心配だわ。」
母親は、お礼を言いながら子供と一緒に毛布にくるまり、国の心配をしている。
姫様ねー。
会うことは無いだろうけど、医者じゃ解決しないのかねー。
ミーティア州の姫様の話しは、師匠から聞いていた。
師匠の知る姫様はすでに亡くなっていて、今は新しい姫様だ。
亡くなった後で、後継者が現れるらしい。ミーティア州にはひとりしか存在しない。
ミーティア州生まれの魔法使いが。




